ニュース

三菱スペースジェット開発断念 次期戦闘機へ知見活かす

三菱重工業は、リージョナルジェット旅客機「三菱スペースジェットM90」(MSJ)の開発を中止する。2022年度第3四半期決算で明らかにした。

理由は、開発の長期化により、脱炭素対応等一部仕様に見直しが必要になったほか、海外パートナーから必要な協力の確保が困難になったと判断。また、米国でスクープクローズ(労使協定による機体サイズ等の制限)の緩和が進まず、MSJが市場に適合しないことや、パイロット不足の影響もあり、リージョナルジェットの市場規模が不透明であるという。型式証明の取得にはさらに巨額の資金が必要で、これらを踏まえた環境では事業性が見いだせないことから開発を中止する。

また、高度化した民間航空機の型式認証プロセスへの理解不足や、長期にわたる開発を継続して実施するリソースの不足を反省点として挙げている。

MSJ事業により達成した内容としては、航空機開発への本格的なV&V適用、大口径GTFエンジンのリージョナルジェット主翼への搭載、CFDを用いた空力最適化、VaRTMでの新材料等の適合性証明、世界レベルの飛行試験実施経験、実機レベルの試験設備等を挙げている。

今後は、2019年6月にカナダのボンバルディアと締結したカナダエア・リージョナル・ジェット(CRJ)事業への取り組みを進め、海外OEMとのパートナーシップを深化。完成機を見据えた次世代技術の検討を進める。また、FX(次期戦闘機)へ知見を活かし、愛知県にある施設・設備も活用していく。

三菱重工業は、2008年に三菱航空機を設立し、「三菱リージョナルジェット」の開発を開始。2015年11月に初飛行を行なっている。2019年には名称を「三菱スペースジェット」に改名。2020年に型式証明取得の最終フェーズとなる飛行試験を実施する10号機を初飛行させていたが、型式証明の取得は実現しなかった。