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三菱重工、月面探査の拠点整備に挑戦 人類の活動領域拡大へ

三菱重工業は、国内外の宇宙開発プロジェクトへの参画を通じた月面探査への挑戦について公表した。アポロ計画から半世紀を経て再び試みられる人類の月面着陸への挑戦や、人類の活動領域の拡大に向けた取り組みを推進する。

三菱重工業は、NASAが主導する国際宇宙探査プログラム「アルテミス計画」において、月面有人探査の拠点となる月を周回する宇宙ステーション「Gateway」を構成する国際居住棟(I-HAB)の環境制御・生命維持技術の開発を、JAXA主導のもと担当している。月探査へ向かう宇宙飛行士の生活拠点であるI-HABにおける生命維持能力の中核を担うという。

国際宇宙ステーション(ISS)を開発した米国、欧州、カナダ、日本などの宇宙機関が再び結集するアルテミス計画は、「月に人類の活動の拠点を築くこと」を主な目的としている。計画の拠点として位置付けられるGatewayは月を周回する軌道上に建設予定で、宇宙飛行士が月に向かう際の中継基地として活用される。

Gateway(ゲートウェイ)(右)とゲートウェイ補給機(提供:JAXA)

I-HABの環境制御・生命維持技術(ECLSS)の開発では、ISSの日本実験棟「きぼう」と「こうのとり」の開発や長年の運用で獲得した技術力を活用する。ECLSSは、閉ざされた居住空間で人が生活するための環境を造り出すシステムで、空気の供給やCO2・有害ガスの除去などを行なう。将来の月面社会、火星やさらに遠い天体の探査へ繋がる、人類の宇宙空間滞在には欠かせない技術としている。

JAXAとインド宇宙研究機関(ISRO)が協働する月極域探査ミッション「LUPEX」においては、探査ローバの開発を進めている。LUPEXは持続可能な月探査に必要な、水の量と質に関する資源探査としてのデータの取得を行なうミッションで、社内研究を進めていた不整地走行技術の要素技術研究の成果を活用し、水の存在の可能性がある月の極域を調査する。

探査ローバは完成後、ISRO開発の月面着陸機に搭載され、H3ロケットで2020年代半ばに打ち上げられる予定。

探査ローバで得られた走行実証技術や月面のデータは、「有人与圧ローバ」の開発に生かされることが期待されているという。また、現在トヨタ自動車がJAXAのもと、宇宙服を着ることなく搭乗可能な有人与圧ローバの検討を進めており、三菱重工業は宇宙機インテグレーション技術や耐宇宙環境技術、有人宇宙滞在技術を生かして協力する。

LUPEXの探査ローバ
探査ローバの試作車(提供:JAXA)
有人与圧ローバのイメージ(提供:JAXA・トヨタ)

そのほか、2020年までに全9号機によりISSへの物資輸送を成功裏に導いた「こうのとり」、その後継機である「新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)」の開発に参画している。これらの経験を踏まえ、ゲートウェイへの物資補給を担う「ゲートウェイ補給機」のJAXA検討に協力している。

物資補給船HTV-X(提供:JAXA)
HTV-X 1号機の与圧モジュール