ニュース

“寄り道”推奨ルートで混雑緩和。日立と西鉄

日立製作所と西日本鉄道は、独自の「ナッジ応用技術」を活用し、公共交通機関の混雑時に個人の好みに合わせた寄り道を推奨するルートを提案して混雑を緩和する「安心快適なおでかけサポート実証実験」を2月1日から3月7日まで、福岡市周辺で実施する。

ナッジは、人々が強制ではなく、自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けや手法を示す用語。今回の実証実験では、独自の「ナッジの連結技術」と「ナッジのパーソナライズ技術」を開発し、適用した。ナッジの語源は「ひじで軽く突く」という意味。

実験では、ナッジ応用技術によるピークシフト、移動総量の増加、商業施設への誘客を検証する。参加者がスマートフォンからWebアプリで移動経路を検索すると、混雑を回避するルートや寄り道先などの移動パターンが個人の特性に応じて表示される。コロナ禍による公共交通機関の利用者減少をうけ、移動ニーズを喚起するのが狙い。

移動パターンは、西鉄電車とバス路線の各区間における天候を加味した統計的な混雑推定、商業施設の混雑情報、目的地への経路、個人の嗜好や特性などに基づいて提案。例えば、検索したルートの一部区間が混雑していた場合、混雑を回避できる代替経路や代替出発時刻に加え、「寄り道先」が提案される。寄り道は、健康志向の高い人や地元への貢献意識が高い人など、利用者の特性にあわせ、対象となる施設などを提案する。ユーザーは実際に寄り道をすることにより、混雑時間帯を回避した移動が可能になる。

ユーザーの好みはアプリ開始時に表示されるアンケートから傾向を判断して提示する。

実証実験が行なわれるのは今回で2回目。第1回目は昨年3月に17日間実施され、福岡市の天神・博多エリアを通る西鉄バスのみを対象としていた。参加人数は561人で、参加店舗は49店舗。今回は対象エリアを福岡市と大橋・久留米地区に拡大。交通機関も西鉄バスと鉄道(天神大牟田線、太宰府線、甘木線)を対象にした。期間は合計35日間に延長されている。参加店舗は飲食店など3,000店舗。うち30店舗はリアルタイムでの混雑状況も提供する。

1回目の実証実験の結果をうけ、ナッジ応用技術が利用者の行動変容促進に有効であることが確認できたとし、ナッジ応用技術によって行動変容を促す情報を生成するプラットフォームを開発し、Webアプリで利用できるようにした。

今回の実証実験は事前に一般から1,000人以上を募集。西鉄電車・バスのLINE公式アカウントと「にしてつバスナビ」アプリで1月18日から募集する。参加者には抽選でデジタルギフトがプレゼントされる。

帰宅時は混雑を気にしない

1回目の実証実験で行なわれたアンケート調査によると、経路検索の結果、混雑状況を参考にしていたのは全体の約67%。実際に出発時間や経路を変更した人のうち15.6%が「混雑していそうだったから」を理由として挙げており、移動需要の平準化に繋がる可能性が得られたという。

朝は特に混雑回避で空いている時間が選ばれる傾向があったとし、逆に夕方には混雑していても乗車する傾向があったという。これは、朝はコロナ禍による時差通勤が根付いており、普段から電車を1本ずらしていたユーザーが多かったからという。夕方に関しては仕事が終わって早く帰るのが最優先とされ、混雑していても乗車するユーザーが多かった。

実際にお勧めされた店舗に行ったのは12.5%。「行きたいところはあった」とする人は38.7%で、合計すると約半数に店舗利用の可能性があった。特に店舗利用者のうち21.1%は「お店に行くために外出した」と回答しており、お店の提案が移動需要増加に結びつく可能性があるとしている。

今後はMaaSアプリとの連携も視野に入れ、2024年度以降に正式サービスを開始する予定。