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ビジネスカードが日本の生産性を改善する? B2Bに注力するVisa

ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は13日、ビジネスカードを使った中小企業におけるキャッシュレス化・デジタル化推進についての説明会を開催した。業務の効率化や与信リスクの低減など、法人決済におけるビジネスカードのメリットを訴求し、中小企業における採用拡大を目指す。

ビジネスカードは、従業員に対してクレジットカードを発行し、法人口座から経費や業務での取引の決済を行なえるようにするもの。現状は、出張やオフィス用品などの会社の経費関連の利用が多いが、Visaでは今後、法人間の取引における利用を強化していく。

中小企業の生産性が低いという日本の課題

Visaが9月に発表したレポート「中小企業の事業間決済におけるキャッシュレス化・デジタル化推進」によると、日本の企業数の99.7%は中小企業(個人事業主を含む)、日本の雇用の約7割は中小企業(約3,200万人)と、日本は世界のなかでも中小企業の割合が高い国となっている。

一方、日本の労働生産性はOECD加盟国36カ国中21位、主要7カ国の中で最下位。さらに平均上昇率も36カ国中35位で、「すでに低位なのに改善もされていない」ことが問題となっている。

Visaでは、この要因の一つが、「中小企業の生産性が向上していないこと」と指摘する。

大企業における労働生産性は、リーマンショック以降向上傾向となっているが、中小企業では改善が見られないまま停滞しており、大企業と中小企業における生産性の“格差”が広がっている。中小企業の労働生産性向上が、日本全体の生産性にあたえる影響は大きい。

そこでVisaができることとして、決済の側面から中小企業の課題解決とキャッシュレス化に取り組む。中小企業では人員不足や販売不振、資金繰り不安などの課題があるが、ビジネスカードの採用により解決できる部分があるという。

例えば新規の取引先への依頼などでも、与信に不安があり、新しい客と取引できないといった場合がある。法人間でカード決済を行なえば未収リスクを軽減できる。

ここ数年で中小企業においても、クラウド会計や請求書管理サービスなど、支払い関連のデジタル化が進んでいる。こうしたシステムを導入している会社では、ビジネスカードの利用履歴などをシステムと自動連携でき、業務効率化や業務量の削減が図れる。カード決済を導入した企業の約8割が効率化を実感しており、ビジネスカードは月平均5時間の業務時間削減に役立っているという。

カード利用の6割は「個人」。法人のカード取引を阻むもの

企業間取引への不満の声を見ると、手数料や営業時間など、銀行取引での不満が多い。また、現金の場合は、毎日締めて突合などの作業が必要になるなど業務効率化のハードルとなっている。カードによるキャッシュレス化・デジタル化が図られると、多くの課題が解決できるほか、オンラインやリモートワークで伝票等の処理や購買業務などができるという点もメリットといえる。

日本の中小企業で、カード決済を業務で使っているのは45%。さらにそのうち6割は「個人カード」を使っており、2割程度に過ぎない。また、支払いの殆どは出張や車両関連、オフィス用品などで、原材料や仕入れといった大きな決済ではカードは使われていない。

カードが使われない理由は、支払先が限定されていること。また、新しいものや変化に対する抵抗意識も見られるという。

ただし、中小企業においても、40代以下の経営者はデジタル化に積極的。ビジネスカードに望まれる機能も会計ソフトとの連動がトップとなるなど、「中小企業でも、若い経営者ほど効率化を求めている」とする。

現状、法人間のカード取引が生きるのは、「数万円~十数万円など比較的少額で多くの取引先がある場合など」で、与信と回収の手間を省けるのが大きなメリットだという。例えば、中小企業の売上1億円のうち7,000万円は5社との取引だが、3,000万円は300社ぐらいの多くの取引といった場合、後者の取引にはカードが役立つとする。

ビジネスカードの普及に向けたVisaの取り組みが「Visa Business Pay」。日本独自のB2B専用の決済プラットフォームで、請求書発行時にカード決済機能をクラウド環境で提供する。紙の請求書と銀行振込を置き換える狙いで、電子的に請求書が送られ、バイヤーはクラウド上で確認して支払いを行ない、ログはすべてクラウド上で残る。同サービスは5年以上国内で運用されている。

法人間でのカード取引が増えない理由に、双方が加盟店になるというハードルがある。この課題を解消するため、バイヤーはカードで払うが、擬似的な中間加盟店を経由して、サプライヤーは従来どおり振り込みで売上回収する「BPSP」という仕組みも準備中。カードで支払いたいけど、相手が受けてくれないといった場合の活用を想定しているという。

また、一回しか使えないバーチャルカード番号をB2B決済に活用する「Visa Commercial Pay」や従業員による法人カード利用に対する保険となる「企業責任免責プログラム」などの日本導入を準備していく。保険については、「パートナーと協力しながら提供を目指す」という。