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少し安くなってきたガソリン 暫定税率廃止後も安くなる?【Watch+】

11月29日撮影

ガソリンの暫定税率がいよいよ12月31日をもって廃止されることが決まりました。ガソリンの暫定税率は1リットルあたり25.1円で、これが廃止されればガソリンの価格は今よりも下がる傾向が強くなります。物価高騰の昨今、効果が期待されている政策の一つではないでしょうか。

といっても「すでにガソリンは安くなっているよね?」という人も多いでしょう。実際そのとおりで、筆者の身近にあるガソリンスタンドでも、レギュラーガソリン価格が150円台前半になっていることが多く、10月頃にくらべると10円以上は安い印象です。こうなると、「実際に廃止される1月1日からさらに安くなるの?」と期待してしまうところですが、残念ながらそう単純ではなさそうです。

現在ガソリンが安くなっている大きな要因の一つは、政府がガソリン市場の安定を目的として導入している補助金です。もともと価格高騰対策として5月から補助が始まり、11月からは暫定税率廃止に伴う混乱を抑える狙いも込めて段階的に拡充されました。

もし、ガソリン暫定税率廃止後の1月1日に突然ガソリンが安くなると、それまでガソリンを買い控えたり、廃止当日に人が殺到してガソリンの在庫がなくなってしまうなど混乱が予想されます。

補助金はこうした状況への対策として、段階的に値段を下げることで極端な反応を抑制する目的で導入されました。5月の段階では1リットルあたり10円が支給されていましたが、これが11月から段階的に拡充。11月13日から1リットルあたり15円、11月27日には同20円へと増額されています。最近ガソリンが目に見えて安くなったのは補助金の拡大が大きな要因と言えます。

そしていよいよ、ガソリンへの補助金は12月11日に25.1円と、暫定税率と同額になります。これ以降は事実上、暫定税率が廃止されたのと同じ条件といえるでしょう。ただし、ガソリン価格には即座に反映されるわけではなく、店頭の在庫などの循環もあるため、価格の変動には1~2週間のブランクがあります。体感できるのは12月下旬以降になりそうです。となると、結果としては暫定税率廃止と重なるタイミングでガソリンが最も安くなると言えるかもしれませんが、1月1日から突然値段が下がる、ということにもならなさそうです。

暫定税率廃止によってガソリンの基本価格は下がることになりますが、ガソリンの価格は原油価格や為替変動、精製や輸送コストなどの影響を大きく受けやすいものです。実際、5月から導入されていた10円の補助金も、円安などの影響で相殺されてしまい、それほど市場価格へのインパクトはありませんでした。実際に安いと感じられるようになったのは11月中旬の補助金拡大以降です。

また、ガソリン価格は地域によっても変動が大きいため、必ずしも暫定税率が無くなった分がそのまま安くなるわけではない点は注意が必要です。

日本はガソリンの原料となる原油の大部分を輸入に頼っており、最近の円安が価格上昇の要因になっています。一方で、足元の原油価格は下落〜安定方向という見方もあり、暫定税率の廃止と合わせて徐々に価格が落ち着く展開も期待できそうです。

清宮信志