トピック

開始半年のメルカリモバイル、新プランで「使わない理由がない」を狙う

メルカリは28日、通信サービス「メルカリモバイル」の新料金プランと特典プログラムを発表した。新プランは9月1日から提供を開始し、特典プログラムは10月1日より適用される。メルカリモバイルは3月ローンチから半年を迎え、これまでの改善と見直しを経て新しいフェーズに移行する。

新プランでは4GB(990円)、10GB(1,730円)、40GB(3,700円)の3種類を追加。サービス開始時は2GBと20GBの2種類であったが、2GBは4GBに変更、合計4種類プランが提供されることとなる。

まずはミニマムスタート、半年の検証

メルカリモバイルは3月に、eSIMと通信量(ギガ)の売買機能に絞ったミニマム・バイアブル・プロダクト(MVP)として提供を開始した。「まずは最低限のサービスを市場に出し、ユーザーの反応や価格感度を検証しながら改修を重ねてきた」とメルカリ執行役員でMVNO事業責任者の永沢岳志氏は語る。さらに「Move Fast」を掲げ、短期間でサービスの基盤づくりを進めてきたという。

執行役員CEO Fintech 兼 MVNO事業責任者 兼 メルペイ代表取締役 CEO 永沢 岳志氏

この半年で準備・実施したことは「プロダクトの拡充」「料金の再設計」「メルカリらしい特典」の3つだという。

プロダクト面では、これまでeSIMのみだったが、利用者層の拡大を目指し、物理SIMの提供を9月から開始する。支払い方法もメルペイ/メルカードのみの制約を解き、他社クレジット・デビットカード対応を加えるなど、導入時の“詰まり”を減らす整備を実施した。

さらに料金面では、「料金を増やすことは簡単だが減らすことは難しい」ということから最初は2GBと20GBの2プランで開始。実利用の傾向を見極めたうえで再設計した結果、今回のプラン拡充に至った。

特典はメルカリのサービス特性と連動させ、「買う」「売る」行動と回線契約を結びつけた利便性を実現した。例えば「買う特典」では、メルカードやメルペイスマート払いを利用すると、料金プランとカード種別に応じて最大14%のポイント還元が受けられる。「現行の特典はメルカリをよく利用するユーザーに響く設計のため、今後はモバイル契約だけでも、お得を実感できるベネフィットを拡張し、ライト層への間口を広げたい」と永沢氏。

eSIM初期設定に課題

一方で、eSIMの初期設定は課題が顕在化。eSIMはまだ普及が進んでいなかったため、APN設定を含む初期導入で想定以上のサポート工数が発生したという。これを受けて、人員体制の増強やAIチャットの導入など、リアルタイム性を重視したサポート強化に取り組んだ。また、今回の物理SIM対応や、特典プログラムの導入などで、より幅広いユーザー層へアピールしていく。

端末施策については、メルカリモバイル自身での販売は行なわず、メルカリ内のC2C取引やメルカリShopsにおけるリファービッシュ端末取扱事業者との連携を含め、幅広い検討を進めているという。

永沢氏は「直販をやる前に、すでにメルカリ内で端末を売っている人やリファービッシュ業者との関係をどうするかを考える必要がある」と話す。9月1日からはMNPによる転入者に、メルカリでの買い物に使える最大1万円分の90%オフクーポンを配布するなど、端末購入を後押しするとしている。

早期黒字化とエコシステム戦略

通信のコモディティ化が進むなかで、同社が狙うのは回線をメルカリに替えるだけで生活を変えずにお得を感じられるようにすること。

永沢氏は「通信そのものは差別化が難しいが、メルカリを普段から使う人にとっては、回線を切り替えるだけで料金が下がりポイントも得られる。生活を変えずにお得になるのが強み」と語る。回線料金の競争力に、アプリ内の特典やポイント循環を重ねることで、エコシステム(経済圏)全体のエンゲージメントを押し上げたい狙いがある。

まずは、メルカリをよく使うユーザーほど「使わない理由がない」状態へ磨き込み、事業単体としての早期黒字化を目標に据える。その先はロイヤリティの中核としてライト層への橋渡しを強化する。永沢氏は「まずはメイン利用者にとって不可欠なサービスへと進化させ、その上で通信やカードをロイヤリティ施策の一部として広げていきたい」と語り、「価値の循環」 をキーワードに、エコシステム全体の強化をはかる。

佐々木 翼