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広島の「路面電車が駅ビル2階にズドーン!」を体験 「駅前大橋ルート」開業
2025年8月1日 08:20
広島の市街地を網羅する「広島電鉄」の「広島駅停留所」が、8月3日から「20階建てビルの2階」に移転する。平地を走っていた路面電車が急にグングン坂を上り始め、そのままビルに突っ込んでいくさまは、広島駅の新しい名物となりそうだ。
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— 広島電鉄【公式】 (@HIRODENofficial)August 2, 2025
2025年8月3日「新線、芽吹く。」🍃
#駅前大橋ルート開業まであと1日!!
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本日は、駅前プロジェクト推進部です!
「明日ついに開業!地域の皆様をはじめ、全ての関係者様に感謝いたします。」
駅前大橋ルートの概要はバナーをクリックしてご確認ください👀https://t.co/TW17itEqQspic.twitter.com/PrdnE113jW
日本初「2階に路面電車のターミナル」広電・駅前大橋ルートが遂に完成
この移転は、従来と比べて経由地がまったく違う新ルート「駅前大橋ルート」(1.1km)の開業によるもので、近辺の路線網は大きく変わる。これまで広島駅南東側の地上にあった「広島駅」停留所は、8月2日をもって役目を終えるとともに、的場町~猿猴橋町~広島駅間(0.4km)は廃止に。また稲荷町~的場町~比治山下間も、2026年春まで休止となる。
広島電鉄としては過去に小規模な経路変更はあったものの、過去半世紀で、ここまで大がかりな路線の改変は初めてのこと。当初の基本計画策定から15年を要し、「広島駅南口広場の再整備」全体で総事業費約155億円をかけた「駅前大橋ルート」は、なぜ必要とされたのか……。
それを考える前に、まずは新ルートに乗車してみよう。今回は広島電鉄様のご厚意で、新ルートを試験運行する車両に乗車させていただいた。果たして路面電車は、ビル2階に繋がる急坂を登れるのか?
直線で速い! 駅前大橋ルート時間短縮、朝なら「4分」以上かも?
「駅前大橋ルート」が経由する「駅前通り」は広い道幅で直線も多く、新しい稲荷町停留所からまっすぐの線路の先に、広島駅ビルが見える。「駅前大橋ルート」は信号も2カ所しかなく、道路中央の広いスペースで車に走行を邪魔されることもない。500mほどの区間で途中停留所はないため、もし信号に掛からなければ、時刻表上の4分どころか、もっと早く到着するのではないか。
一方で、従来の猿猴(えんこう)橋町回りルートは、稲荷町から東側に進んで猿猴川を渡り、荒神橋を渡り切った三叉路で大きく北にカーブを描き、広島駅構内に入るという、激しく迂回したルートをとっており、時刻表上の所要時間は8分程度かかっていた。
新ルートへの切り替えで「稲荷町~広島駅間で4分程度の時間短縮」だというが、実際の猿猴橋町経由ルートは遅延も多く、しびれを切らして猿猴橋町停留所で降りる乗客も多かった。この区間の時間短縮は、おそらく公式発表の「4分短縮」以上の効果があるようにも見えるが、どうだろうか?
なお、今回の試乗ルートは稲荷町停留所から広島駅停留所までの往復(広島駅での乗降はなし)。駅ビル2階に上がる坂は最大40‰(パーミル/1,000m進むごとに40mの高低差)。路面電車としてはやや急こう配ではあるが、宇都宮市・長崎市の路面電車・LRTではさらに急な坂もあり、関係者の方も「(坂道は)まったく問題ないです」と仰っていた。
ここが変わる! 広島駅停留所
新・広島駅停留所の最大の進化は「広さ」だ。乗車ホームが2面しかなかった従来の広島駅停留所から大幅に広い「4線7ホーム」となり、以前のように「広島駅側のホームが狭くて電車が詰まり、猿猴橋町停留所で電車が数珠つなぎ」「目の前に広島駅停留所があるのに、全然到着しない」といった事態も、これで起こらなくなるだろう。
そして、広島駅停留所~JR広島駅改札までの徒歩ルートが、劇的に短縮されるのも有難い。従来のルートはぐねぐねと動線が折れ曲がり、階段やエスカレーターなどをのぼる必要があったのが、新ルートなら2階から降りて同じ2階の広島駅停留所にそのまま移動。2~3分かかっていた乗り換えが、何とたったの70秒になるという。
また、駅ビル2階の停留所を一歩出ると、そこは「ユニクロ」「SHIRO」「ハンズ」など220店が出店する駅ビル「minamoa(ミナモア)」のど真ん中。新・広島駅停留所は、これらの施設にさらに賑わいを生むことになるだろう。
なお、新・広島駅停留所の構内も、これまでとは一新される。案内板が少なく“ぎゅうぎゅう感”が否めなかった従来の停留所と違い、構内も広々。電車の時刻案内だけでなく、遅延状況などがリアルタイムで分かるディスプレイが設置されるという。柱や床などは白基調で、明るくあたたかみのある近代的なデザインが採用される。
試乗の電車はそのまま折り返し、稲荷町停留所に到着。なお稲荷町停留所は、紙屋町方面から広島駅へ向かう「広島電鉄本線」(1号線・2号線など)、宇品方面からの「皆実線」(5号線)の、あらたな接続地点となる。
乗り換えのポイントとなる「乗換指定停留場」も的場町ではなく稲荷町が対象となるため、宇品方面⇔紙屋町方面の乗り継ぎポイントとして、乗り場同士の移動がかなりあるだろう。この近辺は4つ角にコンビニが2軒(セブンイレブン・ファミリーマート)や「やよい軒」があり、こちらも乗り換え客で新たな賑わいが生まれそうだ。
広電、駅前大橋ルートとともに「増便」「快速運行」!
そして、この「駅前大橋ルート」開業により、広島電鉄はいくつか新たな試みを行なうという。
まずは、1号線(広島駅~広島港)の平日朝ラッシュ時間帯を4本増便。さらに、広島駅~紙屋町東間で3つの停留所を通過する快速便の実証運行を始めるという。広島駅側の停留所の狭さから実現できなかった「増便」「快速便」が、さっそく実現した形だ。
また2026年春には、紙屋町東~稲荷町~的場町~皆実町六丁目~紙屋町東という、広島駅に乗り入れない循環便が誕生する。新しいルートの誕生にともなう工事で休止となる「的場町」「段原一丁目」停留所も、循環ルートの誕生とともに利用できるようになる。
もともとの広島市中心部は紙屋町側にあり、循環ルートなら「広島バスセンター」からの高速バスの利用や、「そごう広島店」でのお買い物、「サンフレッチェ広島」が本拠地を置くスタジアム「エディオンピースウィング広島」などに行きやすくなる。特に、これまで宇品方面・広島駅方面にしか直行できなかった皆実線ユーザーにとっては、かなり朗報と言ってもいいだろう。
たった1.1kmの鉄道新線で、グッと所要時間が減るだけでなく、目的地や使い勝手までがガラッと変わりそうだ。他の都市にはない「ビルの2階に路面電車のターミナルがある」という広島電鉄・一世一代の賭けともいえる「駅前大橋ルート」と新しいターミナルがどう賑わいを生むか、注目したい。














