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JapanTaxi、MOV、DiDi、S.RIDE。タクシー配車アプリの違いはどこに?

4つのタクシー配車サービスを比較してみた

タクシー配車サービスの競争が激しさを増している。スマートフォンのアプリを使ったタクシー配車サービスは、日本国内では「JapanTaxi」が早くから取り組み、その他にも、DeNAが運営する「MOV」、ソニー系みんなのタクシーの「S.RIDE」、ソフトバンクが支援する中国発の「DiDi」など、さまざまなサービスが市場に参入して覇権を争う状況になった。

海外で爆発的な広がりを見せたライドシェアサービス「Uber」の日本上陸が、これらの刺激となったことは確かだろう。その当のUberも日本の法制度に合わせてライドシェアではなく、タクシー会社と共存する道を選んだわけだけれど、こちらは今のところあまり目立った動きは見えない。

新規参入が相次いだ理由に、訪日外国人の増加の影響があることは間違いなく、それがピークを迎えるだろう2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、まさに足場固めに向かっているという状況だ。いずれにしろ、日本の利用者にとっても、以前は電話でしか手配できず、ハードルが高いイメージのあったハイヤーが、スマートフォンアプリからの簡単な操作で呼べるようになったことで、より手軽な移動手段の1つになってきているのではないだろうか。

そこで、それらタクシー配車サービスにどんな特徴があり、どこに違いがあるのか。最初に挙げた4つのサービスを実際に利用して確かめてみた。なお、対応エリアや決済手段など各サービスの内容については5月末時点のものとなっている。

先行者として存在感とサービスの充実度を増す「JapanTaxi」

「JapanTaxi」のアプリ画面

「JapanTaxi」の最大の特徴は、なんといっても配車可能なエリアが日本全国47都道府県をカバーしていること。タクシー会社個別に見ると一部地域のみの対応となっている場合もあるので、エリア全域とまではいかないものの、都市圏に限らず利用できる機会が多いのはうれしいところだ。配車手続きの際にタクシー会社や車種を選ぶことができるのもありがたい。

また、決済手段が豊富に用意されているのもこのサービスのメリット。事前にアプリから指定できる方法にはクレジットカード、Yahoo!ウォレット、d払い、車内決済などがあり、車内決済を指定した場合はタクシー車内に設置されている「JapanTaxiタブレット」上でさまざまな決済手段を選べる。各種交通系ICをはじめとする電子マネーのほか、メルペイ、LINE Pay、Origami PayといったQRコード決済にも対応する(タクシー会社によって対応状況は異なる)。

車内にあるディスプレイ。決済手段は豊富

また、今回紹介するサービスのなかでは唯一「配車予約」が可能となっている。翌朝早くに家を出なければならないときなど、出かける時間がはっきりしている場合に便利だろう。

最初に出発地点と行き先を指定→アプリ上ではクレジットカード、Google Pay、車内決済を選択できる

ただし、利用者が多い時間帯を指定すると「ビジーチケット」として980円が追加でかかることがある。タクシー会社が定めた予約料金や迎車料金も別途必要なので、割高になる可能性がある点については頭に入れておきたい。

配車してほしいタクシー会社やクルマのタイプを指定可能。配車予約もできる。ただし時間帯によっては有料の「ビジーチケット」が必要になることも
今回は通常の配車を申し込んだ→手配された車両の位置と予想到着時刻がわかる

神奈川、東京をカバー。さらには京都でも始まる「MOV」

MOVの利用者用車載ディスプレイ

当初「タクベル」として神奈川県内で展開し、2018年12月に名称変更すると同時に東京都内でのサービス提供も開始した「MOV」。同年末にかけて実施した、特定エリア内での移動なら料金がかからない「0円タクシー」のキャンペーンで話題を集めたことも記憶に新しい。

配車可能なエリアは神奈川県の(一部地域を除く)31市町村に加え、東京の23区と三鷹市、武蔵野市。最近では京都府内のタクシー会社との提携も発表しており、対応エリアは徐々に広がっている。

「MOV」のアプリ画面

決済方法はクレジットカードと車内決済の2パターンに限られるが、配車手続きの際には利用したいタクシー会社を選択できる。なじみのあるタクシー会社を選び、そのタクシー会社が対応している決済手段を熟知しているなら、車内決済にして電子マネーなどで払う、といった使い方もできそうだ。

出発地点と行き先を指定→支払方法を選ぶ。初回利用者向けの割引クーポンも用意→タクシー会社を選択可能

細かいところでは、領収書をPDFで取得できるのもポイント。多くの場合、タクシー配車サービスでは事前に車内決済を選ばない限り、領収書などの証明書はアプリ経由での発行となる。今回紹介している他のサービスのなかには、アプリから正式な領収書として取得不可能なビジネス利用にあまり向かないものもある。MOVならその点は安心できそうだ。

車両位置、到着予想時刻などが地図上でわかる→アプリ上から領収書を発行。PDFがメール添付で送られてくる

都内なら迎車料金無料の「DiDi」

「DiDi」のアプリ画面

中国発の配車サービス「DiDi」は、ソフトバンクとの合弁となる運営会社を日本に設立し、投資会社ソフトバンク・ビジョン・ファンドからも出資を受けているサービス。2018年9月の大阪府(一部エリア)でのローンチを皮切りに、豊富な資金力を活かしてか、東京23区、三鷹市、武蔵野市、成田空港、京都府(一部エリア)、兵庫県(一部エリア)と配車可能エリアを広げてきた。

決済方法もクレジットカード、デビットカード、車内決済が選べるほか、5月末からは同じソフトバンク系のQRコード決済サービスのPayPayにも対応。東京都内で配車した場合、当面の間は迎車料金が無料になるとあって、最も安価に利用できるサービスでもある。

最初に行き先から指定する。出発地点は基本的に現在地となる
支払方法を選択→手配後、地図で車両位置と出発地点からの距離、予測到着時刻などが表示。車両のルートも表示されるが、機械的に計算されて表示されるもので、ドライバーがこの通りに運転するとは限らない

ただ、1点注意しておきたいのが、今回紹介した他のアプリのどれもが配車(出発)位置から指定できるなか、このDiDiだけがデフォルトの配車位置が現在地に固定され、初めに“行き先”を指定する作りになっていること。

対応エリア外にいると「お客様の地域では現在ご利用いただけません。」と表示。対応エリアから出発しようとしているときは、いったん行き先を指定して移動区間を確定した後、出発地点を変更するという手順になる

細かい使い勝手の部分ではあるが、このUIの影響で、ユーザーが非対応エリアにいる場合、「お客様の地域では現在ご利用いただけません。」という警告が表示され、対応エリアから出発しようと思っていても利用できないと勘違いする恐れがある(例えば非対応エリアから電車に乗り、対応エリア内の降車駅からタクシーを利用したいような場合)。実際には最初に行き先を設定して、その後に配車位置を修正すれば問題ないのだが、初めて使うユーザーは戸惑うこともありそうだ。

領収書の発行画面。何を入力するのかわからない画面があったりと、細かい部分で違和感はある→領収書はHTML。会社によっては経費精算時に経理から渋られることもあるかもしれない

スライド操作UIや独自のQRコード決済の「S.RIDE」

「S.RIDE」の利用者用車載ディスプレイ

ソニーが中心となって発足し、東京エリアに絞って展開しているのが「S.RIDE」。サービス開始は2019年4月で、今回紹介するなかでは最後発。配車可能エリアは東京23区、三鷹市、武蔵野市となっている。

「S.RIDE」のアプリ画面

決済手段は、クレジットカードと車内決済の2種類を選ぶことが可能。車内決済を選んだ場合は、現金やタクシー会社が対応する電子マネーなどの支払方法のほか、独自のQRコード決済「S.RIDE Wallet」を利用できる。

サービス名になぞらえて、配車時にボタンをスライド操作するという独特のインターフェースも見られるが、サービス全体としてはオーソドックスなもので、現在のところこれといって特徴と言える部分は少ない。利用後にアプリから発行できる証明書も「利用明細」と題されたメールだけなので、ビジネス利用においては若干心配かも。

出発地点と行き先を指定→支払方法を選択する
画面内の黄緑のボタンをスライドさせて配車手配を実行→表示されているラインは出発地点から行き先までのルート
利用後は領収書ではなく「利用明細」としてメールで発行する形

簡単・気軽にタクシー利用できるように。各社の違いはそれほどない

いずれのタクシー配車サービスも、アプリ上での基本的な使い方、見え方、機能的な部分はほとんど同じ。「簡単に手配でき、支払いの手間を省いて、ストレスなく利用できる」というユーザー体験に大きな差はない。

サービスごとの主な違いを表にまとめてみたが、結局のところどのサービスを使うかは、自分の居住地域や行動範囲内で利用できるのか、という点に集約されるだろう。各タクシー配車サービスが、一刻も早く日本全国どこででも使えるようになることを期待したい。

タクシー配車サービスの比較表