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都内最大級タクシーアプリ「S.RIDE」。ワンスライドで勝負するみんなのタクシー

都内タクシー5社とソニーによる合弁会社「みんなのタクシー」が、タクシーアプリ「S.RIDE」を公開。4月16日からタクシー配車サービスと決済代行サービスを東京都内で開始する。

みんなのタクシーは、グリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブの5社と、ソニー、ソニーペイメントサービスの合弁会社。タクシー5社による保有タクシー車両は1万台を超え、「東京最大級のタクシーネットワーク」としている。4月16日時点のサービス提供地域は東京23区、武蔵野市、三鷹市。

5社のタクシーの配車アプリが「S.RIDE」(エスライド)。名称のS.RIDEは、「Simple、Smart、Speedyな乗車体験」の意味を込めており、スマホ画面をスライドするだけで、5社のタクシーネットワークから一番近いタクシーを呼び出せる。

アプリの特徴は、「スライドするだけでタクシーを呼べる」という点。他のタクシー配車アプリでは、乗車位置や目的地を選択してから配車依頼するなど数回のタップ操作が必要だが、S.RIDEは画面上に到着までの目安時間(3~6分)などを表示し、スライドするだけでタクシーを探し、配車が完了する。

スライドするだけで配車依頼

目的地設定などは、配車中の待ち時間に行なえるため、タクシーを呼ぶまでの時間を短縮。配車依頼時には、最も近くの道路に自動でピンを立て、ピンの場所が問題が無ければそのまま乗車位置として利用する。乗車位置のピンは、アプリ上でも変更できるため、まずはタクシーを呼び、それから修正する、といった使い方ができる。

タップではなく“スライド”というインターフェイスは、「ワンアクションでの配車にこだわった。スライド操作自体は、スマートフォンでよく使われて、多くの人が慣れている操作」(モビリティサービス部 橋本洋平部長)とする。

Japan Taxiでは、配車まで5ステップ、DeNAのMOVでも2ステップでの配車となるが、S.RIDEではワンステップ(ワンスライド)にこだわったという。

配車から迎車、降車までのアプリ表示

迎車車両確定後は、ドライバーとのメッセージのやりとりも可能。迎車場所の説明やペットも乗車などの情報を伝達できる。配車料金はタクシー事業者によって異なるが、310円~410円。タクシー事業者の絞り込みも可能。

ドライバーへのメッセージも送信。ドライバーからの返信は定型文となる

事前にアプリにクレジットカードを登録しておけば、ネット決済が可能。降車後に利用明細が表示される。対応クレジットカードは、VISA、Master、JCB、AMEX、Diners。ネット決済だけでなく、対面でのクレジットカード払いや、現金払いにも対応。配車はアプリを使うが現金払い、といった使い方も可能。利用明細は、降車後にアプリでも確認できる。

アプリからの配車ではなく、「流し」(道路等でタクシーを拾うこと)の場合でも、乗客用の後部座席タブレットを使ったQRコード決済「S.RIDE Wallet」に対応。S.RIDEアプリで、タブレットに表示されるQRコードを読み取ることで、アプリに紐づいたクレジットカードで決済が行なえる。

なお、S.RIDE Walletの決済手段は登録クレジットカードのみ。スマートフォンを使った他のQR/バーコード決済サービスなどには対応しない。

S.RIDE Walletでの支払い

配車サービスの開始にあわせてソニーペイメントサービスとの連携を強化。クレジットカードを使ったネット決済や対面決済による決済代行サービスも開始した。

さらに、2019年度内にAI技術を用いた需給予測サービスも開始予定。天気や昨年の同日のイベント、電車運行状況などからタクシー需給を予測。タクシー運転手向けに、需要が多そうな場所や地域を提案するもので、ソニーのAI技術などが用いられる。これらは、事業者やドライバーの売り上げ拡大のために提供する。

広告を軸に東京から攻めるS.RIDE

大手の「Japan Taxi」やDeNAの「MOV」など、配車アプリ/サービスはすでに存在し、S.RIDEは後発となる。みんなのタクシーの西浦賢治社長は、S.RIDEの強みを、1万台を超える都内最大級のタクシーネットワークと、スマートかつスピーディというアプリの使いやすさを挙げる。

みんなのタクシー西浦賢治社長(左)とモビリティサービス部 橋本洋平部長(右)

都内タクシー5社の1万台に加え、東京都個人タクシー協同組合とも提携。同組合には都内の7,100台の個人タクシーが加盟しており、対応台数はさらに拡大していくという。

S.RIDEは、基本的には「配車のサービスブランド」だが、後部座席タブレットと「S.RIDE Wallet」を搭載したものもS.RIDE対応タクシーとなる。

S.RIDEによる配車は、サービス開始時の対応台数は、5,500~5,600台の見込み。順次拡大し、8~9月に1万台程度となる見込みで、さらに個人タクシーが参加予定。S.RIDEアプリから呼び出せるのは、こちらのタクシーとなる。

もう一つが「S.RIDE Wallet」対応のタブレットを導入したタクシー。タブレット搭載タクシーは、3,000台強でスタートし、6月後半には1万台程度となる。流しで乗車した場合に、S.RIDE Walletによる支払いが行なえるほか、みんなのタクシーとPR会社のベクトルがタブレット向けに広告を表示する。

S.RIDE Walletでの支払イメージ

すでに他社のタブレットが導入されている場合は、S.RIDE配車のみの対応となるタクシーもある。あるいはタブレットのみのS.RIDEタクシーも存在することになる。みんなのタクシーでは、対応タクシーに「S.RIDE」のステッカーやラッピングを施していく予定。スタート時には、全てのタクシーには行きわたらない可能性があるが、順次対応を進めていく。

ビジネスモデルとしては、配車料金の手数料と、タブレットによる広告収益などが想定されるが、「短期的にはタブレットが中心」と西浦社長は語る。つまり、タブレットに表示する広告による収益をビジネスの核に据えている。

「都内で1万台という台数はJapan Taxiさんに伍する数。後部座席は基本的に1台しかタブレットを置けないので、ここは早い者勝ち。広告は、特に『東京』での数が重要です。東京とほかの地域では、広告単価も全然違いますので、『東京で勝ち残れるか』が、配車アプリとしては重要です。まずは東京に集中します」(西浦社長)

なお、タブレットによる広告収益は、みんなのタクシーと、PR会社のベクトル、タクシー事業者でのレベニューシェアとなる。

当初は東京に注力し、地方展開は「急がない」とするものの、「株主にソニーペイメントサービスがいるのは利点。加盟店料率も、競合に対して低くできるのは強みになります。また、改正割賦販売法への対応で、2020年には決済端末のICカード対応が必須になります。2019年中にまとまって導入する機会があるはず。そこで入れていただけるよう、しっかり提案していく」という。