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落語を“サブスク”で楽しむ。音楽サービスやParavi、Huluも落語の宝庫

話芸にあこがれる。

話すことだけで世界を表現できる人は本当に素晴らしい。

筆者も月に1、2度はしゃべる仕事(講演やラジオでのコメントが主だ)があるし、そういう仕事が回ってくるということは「そこそこしゃべれるから」だとは思っているのだが、シンプルかつ、相手を引き込むような話術は持ち合わせていない。ぶっちゃけ毎回綱渡り。話芸を磨いた方のテクニックには本当に憧れる。

というわけで、映画は吹き替えが好きだし、お笑いでは「落語」が好きだ。どちらも、本物のプロの仕事はほれぼれするほどすごい。

このうち、今日は落語の話をしたい。好きな人は日常的に聴いているものだが、そうでない人は意外と縁遠いのが落語の世界。

実は、サブスクリプションの普及によって、落語への敷居はかなり下がっているのである。連休で旅行に行く方は、ぜひ移動時間などに楽しんでいただければ、と思う。

落語は「歌謡曲」扱い? 音楽サービスには落語がたくさん

まず最初に探すべきは「サブスクリプション・ミュージック」だ。音楽サービスに落語? と思うかも知れないが、実はそこそこな数の作品があり、サービス提供側もプレイリストなどを作って対応している。

要は「落語」で楽曲検索してみればいいのだが、画像のように、けっこうな数の作品がひっかかるのがわかるだろう。ジャンルを軸にしたプレイリストもある。YouTube MusicやSpotifyではユーザーが作ったプレイリストも公開されているが、一番性質がわかりやすいのはApple Musicだろう。「落語がある」ことをちゃんと理解した上で、古典落語のベストと「はじめての桂歌丸」がある。まあ、ジャンルが「歌謡曲」扱いなのはどうかと思うが。

Apple Musicのプレイリスト。古典落語を集めた入門編
Apple Musicの代表的なプレイリストである「はじめての」シリーズに、なんと「はじめての桂歌丸」も。
Spotifyにある落語のプレイリスト

カタログは、Apple MusicもSpotifyもYouTube Musicも、あまり大差ないようだ。Apple Musicは作り込んだプレイリストがあるものの「2つ」しかなく、Spotifyはユーザーが作ったものが出てくるため、プレイリストベースだと、Spotifyの方が魅力的、といえそうだ。

ただ、YouTube Musicの場合、大量にプレイリストは出てくるのだが、削除されていたり権利的に視聴不可能だったりして、思ったように機能していない。この点はあえて後で解説する。

音楽サービスに落語があるのは、過去からテープやCDの形になって「音楽流通の中で」落語が売られていた経緯があり、その流れで権利が提供されているためだ。最近は書店ルートで落語のCDが多く販売されており、特に過去の名跡は、パートワークの形で全集が売られていることも多い。しかし、それらは「音楽流通」ではないので、残念ながら、一部だけがサブスクリプション・ミュージックにある……という状況のようである。

とはいえ、手軽に聞く方法であるのは間違いなく、とりあえず一度聞いてみてほしい。

映像で見るなら「Paravi」と「Hulu」を

落語は話芸だけれど、映像で見るのに向いた芸でもある。じっと見るのもいいが、「ながら」で気軽に楽しんで、いつのまにか噺家の動きに見惚れている……なんていうのが一番いい楽しみ方かもしれない。

特に噺家を評価する言葉として「あの人には“フラ”がある」といういい方をすることがある。先日、大河ドラマ「いだてん」でも出てきて、落語に詳しくない人がずいぶん「落語 フラ」で検索をしたようだ。フラというのは「生まれ持った、にじみ出るおかしみ、魅力」みたいなもの。声でも十分フラは出るのだが、やっぱり、仕草を見ると一発で感じられる。

だから、落語は「映像」で見るのがいい芸、ということになる。

映像で見る、ということになると、サブスクリプション型の映像配信。ここにもけっこうある。

シェアトップのAmazon Prime Videoでも、検索すると、出るわ出るわ。たくさんの落語が出てくる。映像化されていないといけないので、昭和の名跡というより、平成の名人のものが多い、と思っていただいてかまわない。

Amazon Prime Videoでの「落語」検索結果。非常にたくさん出てくるのだが、見放題対象である「Prime」のロゴがあるものは少ない

だが、ここで問題がひとつ。Prime Videoで検索にはひっかかって来るのだが、そのほとんどは「定額の範囲外」。つまり単品レンタル視聴(有料)なのだ。それだと、ちょっとコストがかかりすぎる。

でも、解決方法はある。映像配信サービスとして「Paravi」を選ぶのだ。

ParaviはTBS・テレビ東京・WOWOWなどが集まって運営する映像配信なのだが、「落語のオンデマンド配信」については、TBSが積極的だ。Amazon Prime Videoにある噺も、ほとんどがTBSの落語番組である「落語研究会」で放送されたものになっている。Paraviでは「落語研究会」と、WOWOWの落語番組である「はやおき落語」が見放題コンテンツになっているので、他のサービスより落語が充実している……という形になっている。

Paraviには落語ファンにはお馴染みの「落語研究会」が収録されている。ただし、すべての噺、というわけではない
WOWOWの平日早朝番組「はやおき落語」もParaviに登録されている

もうひとつの巨頭が「Hulu」。これは「笑点」があるからだ。また、立川談志関連コンテンツもHuluに集まっているので、談志師匠の落語を、ということであれば、Huluは魅力的になってくる。

日本で落語、というと「笑点」を思い出す方も多いのでは。笑点はHuluにある。が、「噺を聞く」番組とは言えない面も。
Huluでの「落語」検索リスト。立川談志関連コンテンツや、落語をテーマにしたドラマが目立つのが特徴

いうまでもないのだが、ワールドワイドコンテンツを軸にしているNetflixには、落語はない。(落語を題材にしたドラマ・アニメはある)

TBSと並び、落語に熱心なNHKなのだが、NHKオンデマンドには、落語はさほど収録されていないようである。

もっと落語の「公式配信」を!

ここまで紹介したサービスの欠点は、「ラインナップ」だ。すべての噺家をカバーしているにはほど遠く、「十数人の噺家の作品が例外的にある」状態だ。同じネタ・同じ演者でも時に違う味わいになるのが落語の面白いところなのだが、そういう「多様性」を満足させるには弱い。

特に、昭和(それも1980年以前)の名人・名跡の古典落語を聞きたい場合、有料のサービスは弱い。

ではオンラインで聞けないのか、というと、そうでもない。YouTubeにあるからだ。

だが、ここではあえてお勧めしない。権利的にクリアなのか、疑問が残る部分があるからだ。やはり「芸」に敬意を払う人間としては、ちゃんと権利処理をして、「少ないながらも収益が適切な人に回る」形にして欲しいと思う。ここで紹介したのは、すべて「公式に提供されていて、(額は少ないかも知れないが)権利者に対価が渡る」ものだ。

なにより、過去の名作をストリーミング・サービスなどにどんどん提供して欲しい。CD付き書籍やDVDボックスなどにはなっているのだから、そこからストリーミング・サービスへの提供を進めてほしい。YouTubeを使うなら、Content IDを使っての収益化処理もして欲しいと思う。

落語だけのサービス、というのは、なかなか成立しないかもしれない。だが、すでにあるものを「もっといろんな人に触れるところ」に置いて、落語を楽しんで欲しいと思うのだ。

そうすれば、「いだてん」で北野武が演じる、五代目古今亭志ん生がどんな噺家で、いかに「似てなくて」、でも「あれは五代目志ん生だ」、と笑いながら見られる……なんていう人も増えるんじゃないだろうか。