小寺信良のシティ・カントリー・シティ

第39回

学級閉鎖とPCR。地方で試され始めるコロナリテラシー

東京・大阪などの大都市圏にお住まいの方々は、すでに身近な人のコロナ感染はそれほど珍しくなくなっているのではないだろうか。筆者もさいたま市在住時代に仲良くしてもらった近所の方が一昨年の第3波のときにコロナ感染したということを聞いて、驚いたものだった。ニュースで感染者数を知るより、実際に住んでいた街までもう感染が到達したことのほうが、衝撃が大きかった。

今のオミクロン株の感染者数は、過去の「波」を軽く凌駕しており、ここ宮崎でもオミクロン株の猛威とは無縁ではなくなってきた。

上の娘の通う高校では、冬休みに帰省していた寮生が感染に気づかず寮に戻り、寮内で数人の感染者が確認されたことで、1月末まで臨時休校となった。3年生は1月末の共通テストまで最後の追い込みという段階で学校の授業がなくなり、自力での学習を迫られた。

大変なのは、寮生とその保護者である。感染していなくても、寮が閉鎖されたため、遠方からの通学者はそれぞれの家に戻るしかない。公共交通機関を使わないよう指示があったため、他県から保護者も車で迎えに来る事態となった。

共通テストまで1カ月を切った段階でのドタバタに、受験生のストレスも相当なものになっただろう。3月1日には卒業式を控えているが、県外からの生徒や保護者は各自でホテル等に前泊して出席することになる。

1月28日には、下の子2人が通う中学校で初めて生徒の感染が確認された。当日は午後から休校となり、保健所が濃厚接触者判定を行なうまで子供たちは自宅待機となった。当日は金曜日であったが、その日のうちに判定は出ず、結局待ちに待って判定結果が出たのが30日、日曜日の夕方だった。保健所では土日も通してずっと対応に追われていたのだろうが、それでも濃厚接触者判定に3日を要するほど、仕事が積み上がっていた事になる。

結果、うちの子供たちは濃厚接触者に該当せずということだが、週明けから3年生のみ時差登校、時差下校となった。

実はその前々日、1月26日は、宮崎県内で1日あたりの感染者がもっとも多い500人越を記録した。加えて26日と27日は、市内私立髙校の入試日だった。市内私立高校は例年、入試日を連続する2日間のうちのどちらかに設定している。それが今年は、1月26日と27日だったわけだ。

受験は、普段合わない人たちと長時間同じ部屋で一緒に過ごす事になる。もちろん学校側も距離を取って席を用意するが、子供たちにとっては試験以外の部分でも戦っていかなければならない。

学級閉鎖とPCR検査

2月21日には、子供のクラスでコロナ感染者が確認された。当日の午後の授業は中止となり、県教育委員会および保健所の方針で、学校単位での休校は行なわず、学年および学級単位での自宅待機となった。翌22日は、学級閉鎖と決まった。

再び濃厚接触者判定を待つことになったが、今回はその日の夕方に学校から連絡があり、濃厚接触者ではないがPCR検査対象ということになった。翌日、子供を指定の時刻に検査場に車で行くように指定された。

都市部の方は、車がない家庭はどうするんだと思われるかもしれないが、地方都市では「車がない家庭などない」という前提である。ただ、平日の昼間に車で連れてこいと言われても、保護者は大変だ。筆者は自営業だからなんとでもなるが、前日に急に休みたい、半休を取りたいと言って対応できる会社がどれだけあるだろうか。

そして検査場とはいっても、市の郊外にある体育館地下の駐車場である。そこの入り口でPCR検査キットを受け取り、駐車して車内で唾液を採取し、出口で係員に提出するという方式で、車からは一歩も出ない。検査結果は翌日電話で知らせるということだった。

検査結果は、翌日の23日夜19時過ぎに、保健所職員を名乗る女性から電話連絡があった。天皇誕生日で、祝日である。携帯電話からの連絡で、通話状況が悪く、何度も聞き返す事になった。電話越しに向こうから漏れ聞こえてくる声は他に1名だけで、職員同士距離をとって連絡しているのかもしれない。

結果は陰性ということであったが、他に陽性者が出たため、学校からは明日以降も学級閉鎖と聞いている、と教えてくれた。30分ほど遅れて学校からのメールで、今週いっぱいは学級閉鎖で、リモート授業で対応という事だった。1月28日の感染報告以来、GIGAスクール構想によって配付されたiPadは、リモート授業に備えて毎日持ち帰るようになっている。

少ないリソースをどうカバーするか

宮崎県のコロナ感染者は、ここのところ200人台で推移しており、ピーク時の半分ぐらいまで下がってきている。ただそれでも過去の「波」のピーク時よりも感染者が多い。保健所のひっ迫具合はかなりのものだと思われる。学校からのメールでも、保健所と学校間の連携を優先させるため、個別の問い合わせは控えて欲しいと書かれていた。

これまで身近で感染したという例が周りになかった。それが今回の感染拡大で、急に慌ただしくなった印象がある。それだけ地方では、実際のコロナ感染に慣れていないのである。

今回PCR検査を受ける立場となって分かったのは、感染者が確認されると、まずは濃厚接触者に該当するのは誰かという判断を保健所が行なう事になる。該当者は当然PCR検査を受けることになるが、濃厚接触者でなくても、それに近い者も検査しているようだ。つまり感染者を中心に、二重の枠内にいるものが検査を受けることになる。

これは1人感染が確認されただけで、かなりの人数を検査しているということであり、これにより保健所の業務は相当にひっ迫している。このままの状態が続けば、検査結果だけでなく濃厚接触者判定すらもどんどん遅れる事になる。

結果を待っている間、子供は出席停止だが、保護者も勤め先によっては、結果が出るまでは自宅待機となる。つまり判定および検査結果の通達が遅れると、相当数の子供たちとその保護者・家族全員の行動が制限され、社会的損失は雪だるま式に大きくなる。

現在ボトルネックになっているのは、検査結果も含めた各種通知や判断の遅れだ。結果待ちで家族も道連れになるのならば、家族も別途民間の検査機関を利用して陰性判定が出れば、すぐに日常の活動できるようになる。

宮崎市の場合は、主要ターミナル施設5箇所に検査場があり、3月31日まで無料で検査が受けられるようになっている。皆さんの自治体でも、補助によって民間の検査が無料で受けられる仕組みがあるだろう。宮崎駅の検査場では、30分で結果がわかるエキスプレスPCR検査、クイック検査(抗原定量検査)も受けられる。

宮崎駅隣接ビル内にあるPCR検査センター

また市内に1カ所だけだが、自分で検査できる抗原検査とPCR検査キットの自動販売機も設置されている。ただPCR検査キットのほうはすでに売り切れており、かなり需要が高いことが伺える。

市郊外の山越え道路に設置されている検査キット自動販売機
PCR検査キットのほうは完売

全国ニュースでは、オミクロン株は重篤化するケースが少ないとして、感染症法における「季節性インフルエンザ」同等の5類に分類してはどうかという意見も報じられている。5類あるいは5類相当に分類することで、保健所および行政の負担を幅広く医療機関に分散させる狙いがあるという。

都市部では実際の感染者対応がパンクし始めているため、こうした手段が考えられたようだが、地方はそもそも行政や保健所のリソースが小さいため、検査の段階でひっ迫してしまう。

まずはそこを負荷分散するために、民間の検査機関を自分で調べてどんどん動いていくべきだろう。そして早期に判断待ち状態を抜けて社会基盤を支える側にいち早く復帰していかないと、いろいろなものが回らなくなりはじめている。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。