いつモノコト

狭い卓上で便利。マルチ接続も便利なエルゴ・トラックボール

ロジクール「MX Ergo」

私は元々20年来のトラックボール使い、“トラックボーラー”なのですが、超軽量ゲーミングマウスを使ってみたところとても快適で、特に持ち運びに負担が少なく、デスクワークがオフィス以外にも広がった昨今のスタイルにも合っていると感じました。

しかしこのマウス、自宅でも気に入って使っていたものの、これまで腰を据えてマウスを使ってこなかったせいなのか、はたまた姿勢のせいなのか、手首の外側の、机やマウスパッドがあたる部分に時々痛みを感じるようになりました。マウスのせいではなく、まったくもって使う側のせいなのですが、仕事で長時間使うことになりますし、痛みがひどくなって作業に支障をきたしても困るので、持ち運び可能という点も意識しながら、新しいトラックボールを探してみることにしました。

トラックボールの利点は、マウスのように本体を動かさないので、占有スペースが圧倒的に少ない点です。音楽アーティストで使う人が多いのは、機材やキーボードが所狭しと並ぶ卓上で場所をとらずにすむからですね。

外出先での利用イメージ。卓上にスペースがなくてもトラックボールなら問題なし。隣はマウスコンピューターの14型ノートPC「mouse X4-R5」
自宅で使い慣れているデバイスならストレスゼロ。MX Ergoは少し重いですが、ワイヤレスタイプなら持ち運びもスマートです。

反面、ボールの回転で動かすポインターは、直線的な動きや、回転の慣性に任せた高速/長距離の動きは得意ですが、軌跡そのものが重視されるような動作、例えばフリーハンドで線を描いたりゲームで照準を動かしたりする用途にはあまり向いていません。

そんなこともあって、PCでJava版マインクラフトをするといった場合には、やはりゲーミングマウスの出番になると思いますが、仕事ではトラックボールに戻すことにしました。

マウスっぽいデザインは選択肢が豊富

トラックボールには大別すると、直径3cm程度の小型のボールを使うタイプと、4~5cm程度の大型のボールを使うタイプに分かれます。さらに、「ボールを中央に配置し、クリックボタンは親指で操作するタイプ」と、「ボールを左に配置し、クリックボタンは人差し指で操作するタイプ」があります。

私が20年来使ってきたのはいずれもケンジントンの大型ボールのモデルで、ボールは人差し指や中指で転がし、クリックは親指で操作するタイプです。しかし今回は、あえて小型ボールを親指で操作するタイプから選んでみました。

その理由はいくつかあるのですが、使ったことのない形を試してみたいということのほかにも、小型ボールの製品はトラックボールの中では比較的選択肢が多く、選ぶ楽しさがあること(大玉はそもそも選択肢が少ない)、ボールをサードパーティ製に交換するとかのマウスにはない独特のカスタマイズもやはり小型ボールには選択肢があること、などが挙げられます。

製品保証のサポート対象外になりますが、サードパーティ製の交換用ボールなどもあり、雰囲気を変えることができます。大玉ではできないカスタイマイズです

程よい傾きのMX Ergo

新たに買ってみたのはロジクールのトラックボール「MX Ergo」です。ヨドバシカメラの店頭で16,940円でした。

ちなみに親指でボールを転がすタイプのトラックボールを今回初めて使ったのですが、1週間程度で慣れることができました。

マウスの親指があたる部分に小型のボールを埋め込んだようなデザインのトラックボールは、各社からさまざまな製品が発売されていますが、高性能なものはエルゴノミクス・デザインとして、手の角度にこだわったものが発売されています。

私が購入前に比較検討していたのは、ケンジントンの「Pro Fit Ergo Vertical ワイヤレストラックボール」で、こちらは60°の角度が付いていて、手を縦にして持つイメージです。一方、ロジクールのMX Ergoは0°と20°の角度を選べる仕様です。店頭のデモ機を触って検討した結果、私には自然な角度だと感じられたロジクールのMX Ergoを選びました。

MX Ergoの底にはスチールプレートがマグネットで取り付けられており、シーソーのように本体を傾けることで2種類の角度を選べます。私は普段は20°の角度で使い、ちょっと作業が続いて手首に負担を感じることがあれば、0°に変える、といった使い分けをしています。

20°の状態
0°の状態
裏側のプレートは強力なマグネットで本体にくっつきます
プレートの裏には滑り止めが貼られていますが、グリップ力はあまり高くありません。机の傷防止かもしれません

専用レシーバーとBluetoothを簡単切り替え

トラックボールはマウスのように本体を動かさないので、マウスほどワイヤレス化の恩恵はありませんが、持ち運びのしやすさや、デスクトップでも一時的に普通のマウスを使いたいのでどかす、といったシーンを考えて、ワイヤレスタイプを選びました。

無線接続は、付属のUSB接続のレシーバー(Unifying USBレシーバー)に接続する方式と、Bluetoothで接続する2種類に対応し、スクロールホイールの下にあるボタンですぐに切り替えられます。これがなかなか便利で、デスクトップPCにはUSB接続のレシーバーで接続し、ノートPCにはBluetoothで接続するといった運用が簡単にできます。

Unifying USBレシーバー

高品質なプレシジョンスクロールホイールが搭載されているのも嬉しいポイントです。大型のボールを使うトラックボールは、スクロールホイールの搭載場所やその機構に苦労している製品は多いですし、普通のマウスでもホコリなどが詰まりスクロールホイールの動作がおかしくなることがあります。ロジクール製品に期待しているのは、実はこのスクロールホイール部分という面もあります。

コーティング剤でヌルヌルの動作

トラックボールの永遠の課題は、ボールを受ける支持球の部分に汚れが溜まることでボールの動作・ポインターの操作感が徐々に低下するため、マウスよりも短いサイクルでクリーニングする必要があるという点です。もっとも、本製品はそうしたことも考慮して、ボールを取り外しやすい設計になっているので、日常的なメンテナンスは簡単にできるようになっています。

裏からペンを挿せる穴があり、ボールを簡単に外せます。内壁にある小さな白い点が支持球で、3カ所でボールを支えます

なお、マウスにはないトラックボールだけのポイントとして、新品の状態だとボールを転がしてもギシギシした感覚で、細かなポインター操作が難しいほどにぎこちない動作になっていることがあります。使い続けていると皮脂がボール表面に馴染み、ある程度スムーズに動くようになります。ただ、小型のボールは自重が軽いためか、皮脂程度ではあまり滑らかにならないという印象です。

トラックボーラーは昔からボールに何を塗れば快適になるのか試行錯誤してきましたが、最近評判が良く私も気に入って使っているのが呉工業の「スーパークレポリメイト」です。これは車のダッシュボードやプラスチック、メッキパーツなどの保護・ツヤ出し剤で、帯電防止でホコリが付きにくくなる効果もあります。シリコン系でコーティング後はとてもよく滑る状態になりますが、1日程度で滑りすぎる状態は落ち着いて、ちょうど良い塩梅になります(好みの滑り具合は人により異なりますが)。私は、支持球に溜まったゴミの掃除をだいたい1週間に1回ぐらいの頻度で行なっていますが、2週間に1回ぐらいの頻度でスーパークレポリメイトのコーティングもやり直しています。

ソフトウェアは、ロジクールの最新のソフトウェア「Logi Options+」が利用できます。これまではMX Ergoで利用できるのは前世代のソフトウェア「Logicool Options」でしたが、「Logi Options+」がアップデートで対応機種を拡大し、MX Ergoもこの最新ソフトウェアを利用できるようになっています。

最新のソフトウェア「Logi Options+」でMX Ergoがサポートされました

本製品の発売は2017年で、5年以上が経過しています。microUSB端子を搭載しているとかの古い仕様もあり、冷静に考えれば製品サイクルの終盤かもしれません。とはいえ、トラックボールは製品サイクルの長い製品が多く、このMX Ergoも2017年の発売時点で“7年ぶりの新作トラックボール”でした。複数PCを横断できる「Flow」に対応するなどハイエンドマウスと同等の機能がサポートされていますし、USB端子以外で古臭い仕様はありません。ソフトウェアも最新版のOptions+に切り替わっているので、もうしばらくは問題なく使えそうです。

太田 亮三