いつモノコト

初めましてQNAP、さよなら自作PCサーバー

QNAP TS-231K。1GBメモリーに不安は覚えますが、この春に発売された新製品ですしきっとなんとかなるでしょう

今さらながらNAS(Network Attached Storage)を導入しました。NASは、いわばネットワークに接続する外付けハードディスク(HDD)です。ファイルを保存しておけば、繋がっているパソコンからも見れますし、いまどきはインターネットごしに保存してある写真をスマートフォンから見るなんてこともできます。

幾度となく紹介記事を編集者として作ってはいたのですが、自分で購入するのは初めてです。これまでは、自作のパソコンをPCサーバーにしていたのですが、入れ替えを機にNASに置き換えてみることにしました。

なんとなくだけど定番でQNAP

購入したのはQNAPの「TS-231K」です。

実のところ、これを選んだ特別な理由があるわけではありません。困ったときにネットで容易に情報が得られそうということで、QNAPにしようというところまで決めたものの、モデルが多くどれを選んでいいのか悩ましかったのも事実です。QNAPは、一般向けだとOSは基本的に一緒のようで、製品による違いがいまいちピンとこなかったのです。

そんなときに、ちょうどINTERNET Watchの『清水理史の「イニシャルB」』に紹介記事があり、そのお勧めのままに購入してみました。

冗長性を考えれば4ベイタイプのTS-431Kで、RAID 5(3台以上のディスクにパリティを含めて分散書き込み)で運用した方が速度面でも容量面でも有利なのは分かりますが、RAID 1(2台で同じ内容を記録)でも、一人で使うなら十分だろうと判断しました。安価なモデルですが新製品ですし、そう変な失敗にはならないでしょう。

ただ、注文してから同じ家庭用向けのQNAPでも、1万円くらい安いTS-230のほうが64bitのCPUだしメモリーも2GBで、静かで、消費電力も少ないじゃん! とか、あと1万円弱出してIntel CPUでメモリーも増やせPCI Expressスロットもあってテレビにも繋げられるTS-251Dのほうがよかったのか? とか考えなかったわけでもありません。継続して製品を追ってないと、やはり選ぶのは難しいものです。

注文をキャンセルして考え直す手もあったと思いますが、よく分からないときはとりあえず使ってみるのが吉。不満に思ったら、買い替えるなりすればいいだろうと、そのまま購入することにしました。

少なくとも、稼働中の古いPCサーバーよりはマシな性能のはずです。

試験運用のつもりが用途も変更に

ここで、それまで使っていた自作PCサーバーを少し紹介しておきます。CPUはAtom 330で1.6GHz。TDPは8Wという「Q3'08」発売の省電力なものです。性能よりも静音性を重視して組んだものです。マザーボードはチップセットに945GCを使ったSUPER MICROのX7SLA-Hで、メモリーは上限の2GBです。マザーボードの購入が2009年5月だったようなので、少なくとも10年くらいは使っていることになります。OSはWindows Server 2012にしていました。時期を考えると途中でOSのアップデートもしていたはずですが、いまいち記憶にないので、きっとトラブルもなく済ませられたのでしょう。

使っていた自宅サーバーです。Atom 330 1.6GHz、SUPER MICROのX7SLA-H(945GC)、メモリー2GBでした。ケースはAntecのP180で時期的に、ほかに使っていたものの使いまわしだと思います。熱を考えて大型のケースを使った覚えがあります

ディスクは1TB×2台をRAID 1にしていました。容量は少ないのですが、必要なデータは、どちらかといえばメインのパソコンに保存しておくことが多く、日常的に扱うファイルも、クラウドサービスを使えば、複数のパソコンで扱うのも容易な時代ですから、特に困ってはいませんでした。ただ、長く使っていたこともあり、ここ最近リプレースすることを考えていました。

次もPCサーバーにする手もあったのですが、パーツ代やOS代を考えると、NASにしたほうが現実的です。なにより小さくて済みます。無理に高性能にする必要もありません。

もちろん、パソコンであることの便利さはありますが、QNAPに限らず現在のNASはファイルサーバー以外の役割も持たせられます。アプリを追加して、機能も拡張できます。

実際のところ、これまでもPCサーバーといっても、最近はファイルサーバーとして以外の機能はほとんど止めていて、DHCPやFTP、VPN、DDNSの更新くらいしか使っていませんでした。こうした用途もQNAPに十分任せられます。パソコンでサーバーを置き続ける必要性もなくなっていました。そもそもQNAPのOSであるQTSはLinuxをベースにしたものです。

QNAP TS-231Kには、とりあえず3TBのHDDを2台入れセットアップ開始しました。RAID 1で3TBの容量として使います。どこのご家庭にも余っているような使い古しのディスクです。ストレージのボリュームの作成など、最初は戸惑う部分もあり、一度やり直しましたが、基本的に大きなトラブルはなく済んだように思います。

それまで、Cサーバー以外のところ、たとえば外付けHDDなどに保存していたファイルも少なくありませんでした。分散して管理しているつもりだったのですが、一カ所にまとまっていないことに不便を感じていたのも確かです。どこに保存していたか探すのは、ちょっと面倒ですし。この際ある程度まとめてしまうことにしました。元のPCサーバーに入れていたものをコピーするのは当然のこと、ついでにメインで使っているデスクトップパソコンや外付けHDDに保存していたデータも一部コピーしていきます。こうなってくると、色々なファイルをNAS中心に保存したくなってきます。しかし、当然3TBで足りるわけがありません。

当初は、この3TB×2のディスクは、あくまでも試用であり、改めていずれ新しいHDDを入れてセットアップしなおすつもりでしたが、再びコピーするのは手間です。予定変更です。このままディスクを入れ替えることにしました。調べてみると、当たり前のように、電源をオフにすることなく1台ずつ交換する方法が用意されています。新しいディスクは、NAS用で定番のWestern DigitalのWD REDドライブ。容量的にはもっと大きいものが良かったのでしょうが、安くなっていた8TBのWD80EFAXを選択。2つセットで37,800円でした。TS-231Kが33,650円だったので、合計7万円ちょっとです。決して安くはありませんが、8TBのNASと考えればそう悪くないように思います。

ディスクは入れ替えました。とりあえず余っていた3TB×2での試用から、WD REDの8TB×2へ変更しました。1台ずつ交換していくのですが、Webブラウザで開くQTS管理画面の「ストレージ&スナップショット」で、指示に従えばいいので、時間はかかるものの簡単にすみます

実際の作業は、画面の指示に従えばいいので、あれこれ考えることなく手軽なものです。もちろん、1台交換するごとにコピーすることになるので、時間はかかりますが、その間も利用できます(あまりしない方がいいとは思いますが)。実はこの原稿を書きながら作業を始めたのですが、残り時間は4~5時間くらいを表示しています。

セキュリティの設定もらくらく簡単

運用していくにあたって、セキュリティ関係の設定は確認しておくべきですが、面倒だなぁ、このまま使っちゃおうかなぁなどと堕落しかけました。

そういうわけにもいかないので、調べてみるとQNAPには「Security Counselor」というアプリを使うといいことが分かります。インストールしてみると、リスクのチェックから、それを改善する提案までしてきます。この推奨される設定アシスタントは、一部は自動で設定がセキュアなほうへ変更されますし、一部は手動になるもののクリックすればその設定画面が開いて容易に設定を変えられます。これは便利で超簡単。むしろQNAPに関する知識がほとんどないまま、ここまで進めてしまえて、ちょっと怖くなっています。

セキュリティ関連をまとめて管理できるSecurity Counselor。自動で設定変更されるほか、当該設定を開けるので、どこで設定するんだろう? など悩まずに済みます

VPNが張れないのはパソコンの設定のせい

ただし、まったく問題がなかったわけではありません。それはVPNです。とはいえQNAP側というよりも、接続側の問題でした。

今までは、自作PCサーバーで動かしていたPacketiX VPN 4.0で接続していました。もちろん、これもQNAPに置き換えです。QVPN ServiceをインストールすればVPNが使えます。いくつかのプロトコルが選べますが、スマートフォンでも対応していますしL2TP/IPsecでいいでしょう。ルーターのポートマッピングを設定し、ドコモのSIMを入れたiPhoneから接続してみます。問題なく接続できてしまい、これまた楽勝だななどと思っていたのですが、楽天モバイルのSIMを入れたPixel 3XLからは1分前後で切断されてしまいます。QNAP側では切断されているけれど、Pixel 3XLからは接続を維持しているように見えるのも厄介です。ググってみると、Pixel 3側に問題がありそうですが、公式に対応している端末でもありません。切り分けに難儀しそうですし、解決できるとも限らなそうなので、とりあえず保留することにしました。ちなみに、今でも保留にしたままです。

さらに、これらスマートフォンのテザリングでWindows 10パソコンからの接続も失敗します。こちらは解決しておく必要があります。

やはりググります。接続したパソコン側のレジストリに HKEY_LOCAL_MACHINESYSTEMCurrentControlSetServicesPolicyAgentにDWORDで、AssumeUDPEncapsulationContextOnSendRuleを作成、値を2にするという情報を見つけます。しかし、これだけでは接続できず、さらに検索していくと、管理者権限でコマンドラインからnetsh advfirewall set global ipsec ipsecthroughnat serverandclientbehindnat
を実行せよというのが出てきました。

これでようやく接続できました。楽天モバイル+Pixel 3XLでのテザリング時の動きは怪しいのですが、とりあえずドコモのiPhoneで繋がっているのでよしとしましょう。外の無線LANでも試してみますが、問題なさそうです。ただ、Packeti XがQNAPで簡単に使えれば……とも思わなくもありませんでした。

NASを使うには、ネットワークに関する知識は必要なものの、かなり楽に使い始められると感じました。アプリを追加していけば、このほかにも色々なことができそうですが、とりあえずすぐ使いそうな機能だけ有効にすることにしました。欲張り過ぎず、困ったりやらせたいことができたりしたら、また考えることにします。

猪狩友則

フリーの編集者、ライター。アサヒパソコン編集部を経て、2006年から休刊までアサヒカメラ編集部で編集者。その他ムック等の編集、ソフトウェアの使い方や各種仕組み解説、スマートフォン関連の執筆もおこなう。趣味はマイル修行。