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iPhone 16 Proを使う 変化は少ないが5倍ズームは最高

iPhone 16 Pro

9月、iPhone 16シリーズが発売されました。最大の特徴は「Apple Intelligence」によるAI機能になる予定ですが、iOS 18.1以降での対応で、米国(英語)でもこれから、日本(日本語)は2025年の対応開始予定となっています。

iPhone 16系と上位機のiPhone 16 Pro系で、画面サイズの違いでiPhone 16/16 PlusとiPhone 16 Pro/16 Pro MAXと合計4モデル展開ですが、ざっくりとiPhone 16シリーズの特徴をまとめると以下のようになります。

  • Apple Intelligenceに対応(後日)
  • 新しい「カメラコントロール」の搭載
  • カメラ系の機能強化
  • 16 Proは光学5倍ズームに(Pro MAXと同等に。従来は3倍)
  • Proは若干重く、MAXはやや画面サイズを拡大
  • 無印にも「アクションボタン」を追加
  • 搭載チップはPro系が「A18 Pro」、無印が「A18」に

といったところです。昨年のiPhone 15シリーズも、Apple Intelligenceに対応予定ですし、15世代でUSB Type-Cに対応済みですので、スペック上は、ものすごく大きな変更があるようには見えません。

筆者はiPhone 15 Proユーザーですが、今回iPhone 16 ProとiPhone 16をレビュー用に借り、主にiPhone 16 Proを約1カ月間併用してみました。結論をから言うと、「普段使いでは95%ぐらい違いは感じない」のですが、「カメラ」については新製品ならではの価値が間違いなく体感できます。ざっくりいうと「5倍ズームは便利なので、カメラ機能を求める人はProに注目しよう」ということなのですが、それ以外にも注意したいポイントなどがいくつかありました。

スペック面では地味な変化にみえるiPhone 16シリーズ

簡単にiPhone 16シリーズの仕様を振り返ると、ディスプレイサイズはiPhone 16 Proが6.3型/2,622×1,206ドット、iPhone 16が6.1型/2,556×1,179ドット。ちなみに、iPhone 16 Pro Maxは6.9型/2,868×1,320ドットで、iPhone 16 Plusが6.7型/2,796×1,290ドッです。

重量はiPhone 16 Proが199g、iPhone 16が170g。ちなみに15 Proは187gで、16 Proと15 Proを比べてみると確かに15 Proのほうがやや軽くなっています。ただし、気になるような差でもなく、装着するケースに依存する部分も大きいと言えます。

iPhone 16 Pro

iPhone 16 ProとiPhone 16の違いは、画面サイズやカラーや仕上げなど。個人的には、質感と仕上げ、カラーバリエーションは、iPhone 16のほうが好みです。

普段はiPhone 15 Proを使っているため、今回はiPhone 16 Proを試用していますが、WebやX、Spotifyや、YouTubeを見る、Googe マップを使うといった筆者の“普段使い”では、16 Proと15 Proの違いはほとんどありません。一点を除いては。

iPhone 16 Pro(左)とiPhone 15 Pro
iPhone 16 Proの「カメラコントロール」がハードウェア面での大きな違い

また、iPhone 16シリーズでは、発熱・放熱の改善があったとのこと。ざっくりいうと、(15 Proの)A17 Proと比べて、A18 ProはCPUが最大15%、GPUは最大20%高速化したとのことですが、今回の試用では体感レベルでは大きな違いは感じていません。「いつものiPhone」という感じです。高負荷環境等での変化については、別記事を確認してください。

【参考】iPhone 16 ProとPixel 9 Pro

カメラコントロールという新提案。使いやすさとわかりにくさ

一点、iPhone 16シリーズで一点大きく変わる部分があります。それが「カメラ」です。ハードウェア的に新たな機能「カメラコントロール」が追加されています。

iPhone 16シリーズに新たに追加された「カメラコントロール」。本体右側面に配置

カメラコントロールは、iPhone 16シリーズ共通で、iPhoneの右側面に搭載した新たなボタン的な「スイッチ」。シャッターボタンとして使えるほか、タッチセンサーを使ったカメラ関連機能の操作や設定変更が行なえます。

便利なのは、一発でカメラを起動でき、シャッターを切れること。特に横位置で保つ場合は、ストレス無く直ぐに使えるはずです。さらに「長押し」で、すぐに動画撮影が開始されるので、動画を積極的に撮る人にも便利かと思います。

個人的には縦位置での一発起動は少し押しにくさを感じますが、それでもカメラを即座に使えるという点では、魅力的な機能です。

シャッターボタン的に使える「カメラコントロール」

もっとも筆者の場合、iPhone 15 Proではカメラを一発で起動するためにロックを兼ねた「アクションボタン」に機能を割当していました。そのため、以前からカメラの一発起動はできていたのですが、カメラコントロールでは起動だけでなく、シャッターをはじめ、他にも多くの操作に対応する点が特徴と言えます。

カメラコントロールの表面はタッチセンサーになっており、2回“軽く押し込む”ことで、カメラの操作メニューを呼び出せ、各種機能の選択が行なえます。iPhoneの設定や操作ではなく“カメラ”として使うための操作や設定をこのメニューに詰め込んだ形です。

カメラコントロールを“触れながら2度押し”すると、[露出][被写界深度][ズーム][カメラ(0.5X、1X、2X、5X)][スタイル][トーン]の各項目の選択画面が現れます。露出のコントロールだけでなく、ボケ感やズームなどについて、カメラコントロールを“スライド”しながら変えられる仕組みです。

カメラコントロールでは被写界深度や露出、ズーム、カメラなどを選択。スライドして各項目を調整できる

ただ、このメニュー操作は、個人的には慣れるまで時間がかかりました。まず、「触れながら2度押し」の感覚が繊細で、がさつなタイプの人には向かない印象です。指をカメラコントロールに触れながら、押し込むように2回動かすのですが、“押し込む”感覚を理解するのが難しい印象です。すぐに使える人も多いようですが、筆者の場合は慣れるまで数日かかりました。

また、カメラ(0.5X~5X)やズームの切り替えは、慣れもありますが、従来の画面タッチのほうが使いやすいと感じています。露出や被写界深度を少し変える場合、カメラコントロールも使えるかな、という印象です。そもそも、iPhoneで撮影する場合、「カメラ任せ」のケースが多いのですが、そこに少し自分なりの調整や意図を加えやすいという意味では、“使える”機能だとは思います。基本的にはカメラ経験のある人に向けた機能で、その意味では“Pro”向きとも感じました。

ただ「カメラコントロール」という名称、コンセプトを重視しすぎて、全ての機能を入れ込みすぎているようにも感じました。このあたりはアップルも活用を模索中という印象を受けました。

iPhone 16モデルでカメラコントロールを使用する

なお、現在のカメラコントロールでは、「半押し」での「フォーカス・AEの固定」はできないのですが、年内には対応予定とのこと。この機能が追加されると、本格的に“カメラ的”な操作感で使えるようになると思われるので、これはかなり期待されるアップデートと言えそうです。カメラを重視する人にとっては、ここからが本番でしょうか。

さらに、アクションボタンを他に割り当てられるというのも、カメラコントロールのメリットと言えると思います。アクションボタンはカメラの起動以外にも、フラッシュライトやShazam、集中モード、ボイスメモ、翻訳、拡大鏡、コントロール、ショートカットなどに割り当てられます。筆者はショートカットをよく使うので、iPhone 16シリーズでは、ショートカットを割りあてています。

ボリュームの上の「アクションボタン」

また「カメラコントロール」はサードパーティアプリにも開放されます。10月24日には「Blackmagic Camera」アプリが対応を発表。動画撮影時のズームや露出補正、フォーカス、ISOなどをカメラコントロールから操作できるようになりました。ビデオをBlackmagic Cameraで撮る人や、編集ソフトに「DaVinci Resolve」を使っている人には注目かもしれません。Blackmagic Cameraは機能がiOSの標準のカメラよりも多機能なため、こちらのほうがカメラコントロールのUIをうまく活用できているようにも感じられます。

Blackmagic Cameraでもカメラコントロール

なお、後述しますが、カメラコントロールの操作は繊細なため、ケース選びも重要になります。

非破壊でスタイル変更 当たり前だけど「5倍ズーム」最高

iPhone 15 Proにはない、iPhone 16シリーズならではの特徴としては、「フォトグラフスタイル」もあります。

名称としては以前からある機能で、撮影時にモノクロや鮮やかなどのモードを選べる機能でしたが、iPhone 16シリーズでは、例えばモノクロで撮影してもあとでカラーに戻す、あるいはその逆なども可能になります。

撮影時にカメラコントロールから「スタイル」を選択可能

非破壊での編集が可能で、“後から”モードを自由に変えられます。これはiPhone 15/15 Proシリーズには追加されない、iPhone 16シリーズのみの機能になります。

カラーの[標準]で撮影した写真をモノクロの「スタークブラック&ホワイト」に変更
仕上がりも自然に感じられる
モノクロの「スタークブラック&ホワイト」から「アンバー」に変更

カメラの「画質」については暗所性能は良くなったように思いますが、それほど大きな変化は感じていません。

iPhone 15 Proユーザーとして明らかに違いを感じるのは、iPhone 16 Proの光学5倍ズームです。iPhone 15 Proの3倍ズームは35mm換算で77mm相当ですが、iPhone 16 Proでは120mm相当となります。当たり前ですが、大きな違いです。

iPhone 16 Proのカメラ部

例えば、イベントの登壇者を撮影するときなどは、ズーム倍率が高いほどよいですし、遠くの看板をズームでチェックして確認する、などカメラ以外の用途に使えます。

記者の仕事としても現在取材で主に使っているカメラも70mmで、クロップ(フルサイズからAPS-Cサイズの部分を抽出)しても105mmです。「望遠レンズを使え」という話ですが、重たくレンズ交換も面倒なのでこの形で定着しています。

そこで、120mm相当で使えるiPhone 16 Proは非常に便利です(シャッター音は気になりますが)。比較的暗所にも強く、画質的にもWeb記事で使うのであれば大きな問題はありません。実際、取材時の写真撮影でも、室内の住宅設備やランドマーク施設の外観など、広角が必要な場合、8割はスマホで撮影しています。ミラーレスカメラ+レンズより広角側が強く、それでいて軽く、画質に問題もないからですが、今後は望遠についてもスマホに任せても良いのかもしれません。光学ズームの強化により、本体サイズも大きく変わっておらず、撮影シーンが大きく広がるので非常に魅力的です。

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なお、iPhone 16 Proでは、4K/120fpsでの動画撮影にも対応するなど、機能強化されています。

今回のiPhone 16シリーズは、Apple Intelligence対応などカメラ部分以外は大きなスペック差がないため、「iPhone 16のほうがお得・注目」とも言われています。スペック上は確かにその通りかな、とも思いますが、カメラを重視する人で、サイズを大きくしたくない人(筆者ですが)、「5倍ズーム」のiPhone 16 Proが魅力的になるかと思います。カメラ機能は、「荒削りなところはある(カメラコントロール)が確かな進化が感じられる」ものになっています。

ケースに注意

やや余談ですが、注意したいのが「ケース」について。カメラコントロールが特徴のiPhone 16シリーズですが、ケース選びは慎重に行なったほうが良さそうです。

カメラコントロールをボタンとして捉えると、ケースには「穴」が必要です。そのためか、iPhone 16シリーズ発売にあわせて発売されているサードパーティー製のケースの多くが、カメラコントロール部に穴が開いています。

ただ、カメラコントロールの「触れながら2度押し」の感覚は非常に繊細で、穴の深さによって、明らかに使いにくくなります。シャッターとしては大きな問題はないのですが、穴が深いと指を滑らせにくく、押し込む感覚もつかみにくくなります。

一方、アップル純正のケースには穴がなく、カメラコントロールの部分にサファイアグラスを埋め込み、スライド操作も直接使うときと“ほぼ同感覚”になっています。そのためカメラコントロールの使いやすさ、という点では純正ケースが優れています。

サードパーティ製の対応はまちまちで、“穴”を小さくするあまり、押しにくいものもありました。カメラコントロールを押し込む操作が必要なため、穴が大きめでゆとりがあり、ケース自体が薄いものが使いやすく、筆者が使った中では100均ショップの穴が大きめなケースがカメラコントロールに限っては使いやすく感じます。

大きめの穴で薄いケースのほうがカメラコントロールは使いやすい

一般的にはケースはデザインを軸に、色やMagSafe対応などの機能で選ぶものだと思いますが、そこに「カメラコントロールの使いやすさ」という注意点も加わった形といえそうです。

変わらない良さとカメラの魅力

約1カ月iPhone 16 Proを試用しましたが、「普段使いのiPhone体験」としてはさほど変わらず、カメラについては明らかに進化といった印象です。iPhone 16シリーズが本領を発揮するのは、Apple Intelligenceに対応したあとだとは思いますが、iPhone 14以前のユーザーであれば買い替えを検討する余地は大いにありそうです。

iPhone 15 Proユーザーとしては、Proのカメラの進化が魅力的ですが、カメラを重視しなければ、iPhone 16がお買い得なのかもしれません。iPhone 16が124,800円~、iPhone 16 Proが159,800円からなので約3.5万円の差をカメラやパフォーマンスの違いとしてどう考えるあたりが選択基準となりそうです。

個人的にも5倍ズームの魅力で、前回の買い替えからわずか1年ですがiPhone 16 Proにはかなり心が動かされました。が、ひとまず、これから来るApple Intelligenceの対応を見ながら考えたいと思っています。

臼田勤哉