レビュー

iPhone 14 Proを買った “あまり変わっていないこと”の良さ

9月は新iPhone発表のシーズン。今年も9月16日からiPhone 14シリーズが発売され、iPhone 12 Proユーザーの筆者も早速iPhone 14 Pro(256GBモデル)に買い替えました。

今年のiPhone 14シリーズは、「マイナーチェンジ」などとも言われ、スペック上はあまり大きな差が見出しづらい(特に無印のiPhone 14)ですが、iPhone 14 Proについては、2年前の12 Proから明らかな進化は感じられます。と同時に、価格も256GBモデルで164,800円とかなり高価になっています。iPhone 12 Pro(256GB)と比較すると、2年で47,000円の値上げとなります。

iPhone 14 Proの感想をざっくりまとめると

  • カメラは良くなった(12 Pro比)。夜と3倍ズームがよい
  • 予想以上にカメラが出っ張っているのでケース必須
  • 常時点灯ディスプレイが最高
  • それ以外はさほど変わらないけど、変わらないのがいい

と言った感じです。iPhone 14 Proについては、すでに多くのレビュー記事や動画などもあがっているので新機能の紹介はそちらに任せ、ここでは個人的な購入理由などを紹介していきます。

iPhone 14 Proに買い替えた理由は「慣れ」

まずは、「なぜiPhone 14 Proを選んだのか? 」

iPhone 14シリーズでは、iPhone 14やiPhone 14 Pro Maxといった選択肢もありますが、すでにiPhone 12 Proを使ってきて、6.1型のディスプレイサイズに慣れていること、またスマホの利用体験を大きく変える必要性もないと考えたからです。「慣れ」というか現状維持でOKと考え、ほかの選択肢を検討することもなく、Apple Storeで購入し、発売当日に店舗で受け取りました。

iPhone 14 Pro

割と消極的な選択理由ですが、そもそもiPhone 12 Proにも大きな不満はありませんでした。ただ、少しバッテリが弱ってきたこと、また14 Proではカメラが進化している、ちょっと興味を惹く新機能がいくつかある、といったあたりが後押しした形です。

16万円超えという価格はなかなか厳しいのですが、本体の「下取り」を考えると、バッテリ交換などで12 Proを延命するよりは、下取りに出して交換したほうが良さそうとも考えました。今回の買い替えでは、「Apple Trade In」で旧機種の下取りを行なっていますが、査定額は63,200円でした。購入価格(164,800円)から査定額を引けばほぼ10万円となります。

高いには高いですが、生活する上でもっともよく触れるデバイスであり、情報の“窓”とも言えるスマートフォン。また、写真でいまを“記憶”“記録”していくという点でも、カメラの画質が上がっているのはプラス要素です。なので、2年ぐらいで更新していくのがちょうどいいのでは、と思っています。

発売初日にApple Store新宿で受け取り。当日は15分ほど並び、待ち時間にStoreの担当者から2-3分のレクチャーを受けてから商品を受け取りという流れでした。当日に店に行くまで欲しいというわけでもなかったのですが、「自宅受取」にすると10月以降の日程が示されたため、店舗受け取りにしてみました。

パッケージには、本体のほかSIMピン、USB Type-C-Lightningケーブルのみというシンプルなもので、移行作業もSIMトレーをあけて、SIMを入れ替える程度。あとはデバイスからのデータ移行になります。

パッケージの同梱品

データの移行は、「クイックスタート」を使ってiCloud経由で行ないましたが、同じWi-Fiネットワーク内でiPhone同士を近づけて、画面に沿って操作するだけでほとんどの作業が終了します。このあたりはこの数年で本当に楽になりました。今回は試していないですが、AndroidからiOSへ移行する「iOSへ移行」アプリなども用意されています。

ただし、LINEのバックアップやSuica、nanacoなどApple Pay関連の再設定などはきちんとやっておきましょう。もうひとつ忘れないようにしたいのが、「2段階認証アプリ」です。2段階認証に使うGoogle、Microsoft、AdobeなどのAuthenticatorアプリのうち、特にGoogleは、移行を忘れると復旧が難しくなる場合もあるようです。元のデバイスがある場合は、忘れずに設定しておきましょう。


    iPhone移行時に注意したいポイント
  • LINE
  • SuicaなどのApple Pay
  • 2段階認証アプリ
Suicaの移行

カメラが予想外に出っ張っている

本体の見た目上はiPhone 12 Proと大きく変わりません。iPhone 14 Proの外形寸法は、147.5×71.5×7.85mm(縦×横×厚み)、重量206g。12 Proは146.7×71.5×7.4mm/187gなので若干厚く、また重くなっているのですが、手に持った印象はほぼ同じです。このあたりは「従来の環境を継承してバージョンアップしたい」という自分の目論見通りです。

iPhone 12 Pro(左)とiPhone 14 Pro(右)。見た目はあまり変わらない

ただし、予想外だったのは「カメラの分厚さ」です。カメラ部が大きくなったことは理解していたものの、その“はみ出し”がかなり大きく、そのままポケットに入れるとひっかります。また、iPhone 14 Proをパソコンの天板上に置くと、擦れる音がして傷つけそうで不安に……。これだけ突出していると、もはやケース無しで使うのは想定されていないという印象です。

iPhone 12 Pro(左)とiPhone 14 Pro(右)のカメラ部比較。14 Proのほうがかなり出っ張っている

当初はしばらくケース無しで使って、いろいろ評判をみてからケースを決めようと思っていたのですが、iPhone 14 Proを触ってすぐにケース無しは無理だなと判断。アマゾンで「Spigen iPhone14Pro」を購入しました

急いで購入した「Spigen iPhone14Pro」。MagSafe非対応ですが、わりとちょうどよかった

本体で少し残念なのは、充電端子が「Lightningのまま」という点でしょうか。Androidスマホを始め、PC、そしてiPadなど多くのデジタルデバイスType-C対応となるなかで、iPhoneがLightningのままだとケーブルをもう一本持ち運ぶ手間が生じます。また、USB Type-Cに対してLightningの優位点も「別段ない」というのも微妙な心境にはなります。

充電等のインターフェイスはLightning

ただし、この1年を振り返って「Lightningケーブルがなくて困った」というシーンは1、2回でした。コロナ禍で外出が減ったこともありますが、iPhone自体がワイヤレス充電にも対応しており、iPhoneのバッテリもそれなりに持つため、ケーブルが無くて焦ったというケースは少なかったと思います。

とはいえ、Type-CであればPCとも充電器やケーブルを共用できるなどメリットは大きいので、そろそろiPhoneでもType-C化を進めてほしいとは思います。

常時表示ディスプレイが最高

iPhone 14 Proでは、カメラの強化のほか、プロセッサが「A16 Bionic」になるなどハードウェア面では進化していますが、普段使っていて(12 Proから)「大きく変わったな」と感じる点はあまり多くありません。

ただし、明らかに進化が感じられる点がディスプレイの「常時表示」です。

常時表示は、iPhoneを使っていない場合でも、ロック画面に時計やウィジェット、ライブアクティビディなどを表示する機能です。通常はロック画面で人が離れていれば、画面は真っ暗ですが、常時表示ディスプレイの場合は、時計などの情報を表示したままになります。

iPhone 12 Pro(左)と「常時表示」のiPhone 14 Pro(右)

つまり、常時表示にしておけば、iPhoneを見るだけで時間や天気などがすぐにわかります。ある意味「それだけ」の機能なのですが、特にデスクワークでワイヤレス充電器にiPhoneを置いているような場合、すぐに天気や時間などが確認できるのが便利です。

もちろんロック画面を解除すればもっと詳細な情報が確認できますが、「なにもせずに情報が表示されている」というのがとても使いやすく感じます。個人的には、これだけでもiPhone 14 Proにする価値はあると感じました。

この「常時表示ディスプレイ」は、最小1Hzまでリフレッシュレートを抑え、画面の書き換え頻度を少なくするほか、動的に輝度や表示内容を変えることで、壁紙を含めて画面全体の常時表示を実現しています。そのため、若干ですがバッテリ消費は伴います。

素晴らしいのが、Appleの「マップ」や「ボイスメモ」などのアプリ利用中も、常時表示に対応すること。

例えば、ボイスメモで会議などを録音する場合、従来は数十秒経つとロック画面に入ってしまい、「どれぐらいの時間録音したか」がわからなくなっていました。

常時表示では、しばらくすると白バックの画面から黒バックの画面に切り替わるものの、1秒ずつカウントダウンしながら、録音経過時間を表示してくれるため、「そろそろ会議の終了時間だな」といったことがiPhoneに触らずにわかるようになります。記者などが取材などで使う場合には、とても助かる機能で、多くのアプリで対応を進めて欲しいものです。

常時表示対応のボイスメモで録音中。一定時間経つと右の画面のように黒バックで、1秒ずつのカウント画面に移行する

なお、アップルのアプリ以外でも、WhatsApp、Skypeなどの音声通話アプリや、Spotifyなどが常時表示に対応しています。バックグランド動作が必要なアプリであれば、アプリ開発者が選択すれば、対応アプリの開発は可能です。

本当に素晴らしい常時表示ディスプレイですが、購入初日に困ったのが、夜寝る時も「常時表示」してしまうこと。当日は「オフ」にして寝ましたが、実は画面を下にして伏せれば、従来どおり画面は暗くなるので、この点は問題はありません。常時表示がオフになるのは、「画面を下にして置く」「ポケットなどに入れた時」「睡眠の集中モード オン」「低電力モード」などの条件です。

ちょっとしたトレードオフもあります。消費電力を抑えるとはいえ、画面を完全にオフにするよりはバッテリ消費があります。ただ、ざっくり2時間で1%程度のようなので、バッテリ残量が十分な場合は、あまり気にしなくても良さそうです。バッテリ残量が20%を切り、「低電力モード」になると、常時表示は自動でオフになります。

なお、iPhone 14 Proのディスプレイは、120Hz対応でスムーズで滑らかとのことですが、全然気づかずに使っていました。ただし、ディスプレイの輝度(2000nits)があがっていることは実感でき、表示品質には満足しています。

ダイナミック・アイランドは面白いけど

またディスプレイ関連の新機能が「ダイナミック・アイランド」です。本体上部の「ノッチ」部分を表示ディスプレイとして活用するもので、再生中のミュージック、タイマー、AirDropの接続、「マップ」の経路案内などの通知やアクティビティを表示できます。

右がiPhone 14 Pro。ノッチ部分のアイコンでステータスを表示

Appleの発表会でも「新しいiPhone体験」としてかなりアピールされており、、実際、「ミュージック」や「Spotify」で音楽生成中に、ロック画面でも再生中の楽曲がわかり、タップするとすぐに操作画面に移れるのは少し便利です。また、接続中のイヤフォンなどがすぐにわかるのも便利ではあります。

ただ、「あるとちょっと嬉しいかな」ぐらいの便利さです。面白くなりそうな可能性は感じるので、今後のアプリケーションに期待、といったところです。

ダイナミック・アイランドの操作(撮影:西田宗千佳)

カメラは“夜”の強化 2倍・3倍ズームは便利

iPhone 14 Proの最大の強化ポイントと言えるのが「カメラ」。背面カメラはメイン(f1.78)、超広角(f2.2)、望遠(f2.8)の3眼で、メインカメラは4,800万画素、超広角と望遠は1,200万画素となっています。

メインカメラの新センサーは、4つのピクセルを1つの大きなクアッドピクセルとして結合させ、4倍多くの光をとらえる「クアッドピクセルセンサー」で、基本的には1,200万画素で撮影し、4,800万画素のProRAW撮影にも対応するという形です。

かなり強化されたカメラ機能ですが、撮影後にスマホ上で見て、iPhone 12 Proとの違いがわかるかというと、なかなか難しいところです。すでに2年前からある程度画質には満足していましたが、比較せずに明確に違いがわかるのは「暗所性能」です。メインカメラでは、相当暗く、以前ではナイトモード(Night Mode)に切り替わっていたような場所でも、通常モードのままシャッターが切れるため、明らかにアップグレードされたと感じます。

ナイトモードを使ったほうがメリハリのある写真になり、細部の描写などは上回りますが、暗くても手軽に撮影できるようになっています。

暗所性能が向上。「ナイトモード」を使わずにもかなり暗い場所で撮影できます

また、iPhone 12 Proユーザーとしては、14 Proで3倍の望遠ズームに対応しているのもアップグレード感があります。12 Proは2倍ズームで、13 Proから3倍ズーム対応していましたが、より望遠で取れるようになったのは嬉しいところです。

2倍の望遠ズームにも対応。これは、クアッドピクセルセンサーの中心の1,200万画素を使うもので、デジタルズームを使わずにフル解像度の写真や4Kビデオが行なえます。


    35mm換算の焦点距離
  • 超広角:13mm
  • メインカメラ:24mm
  • 2倍ズーム:48mm
  • 3倍ズーム:77mm
超広角
メインカメラ
2倍ズーム
3倍ズーム

もっとも前述にように、スマートフォン上で見る限り、夜の撮影以外ではそこまで大きく画質向上したと感じられません。ただ、「写真」アプリで過去の写真を振り返ると、iPhoneの世代を経るごとに画質が大幅にアップしていることはわかります。スマホの写真は単なる記録だけでなく、自分の「思い出のメモ」「外部記憶」的な意味もあると感じています。そうした意味でも、自分の思い出を記録する“目”であるカメラの進化は重要です。

個人的には、そうした点でiPhoneを(まだ使えるにも関わらず)2年程度で買い替えるのはある程度合理的なのではと思っています。あと、やはり3倍ズームは便利です。

動画撮影も強化され、シネマティックモードで最大4K HDR/30fpsの撮影に対応のほか、新たに手ブレを抑え、滑らかな映像が撮影できるアクションモードが追加されました。ジンバルなどを使わずに、手ブレの少ない映像を最大2.8K/60fpsで撮影できます。

実際に簡単に試してみましたが、確かに手ブレは大幅に抑制できます。映像にヌルっとした質感がでるので、少し違和感を覚える時もありますが、アクションカムなど他のカメラを使わずにスマホだけでこれだけの映像を撮れるのは便利です。

iPhone 14 Proのアクションモード2.8K/60fps)
【参考】iPhone 14 Proの動画撮影(4k/60fps)

フロントカメラのTrueDepthカメラもオートフォーカスを新搭載。暗所性能も最大2倍向上し、「セルフィーもiPhone史上最高」とのこと。個人的には主にFaceTime用になっていますが、オートフォーカスはたしかにしっかり動作しており、この点でもカメラ強化が確認できます。

バッテリが期待ほど持たない問題

少し不安を覚えたのは、買い替え直後にも関わらず、バッテリーの持ちが「よくなった」とあまり感じられないこと。常時表示の影響を疑いましたが、iPhoneをあまり取り出さないような日でも、夕方には50%ぐらいまで残量が減っているなど、2年落ちのiPhone 12 Pro(90%)とそれほど変わらない印象です。

スペック上はのバッテリー持続時間はビデオ再生時で最大23時間とのことで、iPhone 12 Proよりアップしており、iPhone購入直後は、「夕方になっても8割近くバッテリが残ってる」みたいな安心感があると想定していたので、少し不安に感じております。もっとも、モバイルバッテリは持ち歩いているので大きな問題ではないのですが、早くモバイルバッテリを持ち歩かなくていい日が来てほしいものです。

変わらないiPhoneの良さ

iPhone 14 Proに変えてから10日程度ですが、カメラや常時表示ディスプレイなど確かな進歩を感じながらも、基本操作や使い勝手が“変わらない”という点でも、かなり満足しています。

スマートフォンのように進化が急速なデジタルデバイスにおいては、「新しい体験」を求める人も多いとは思いますが、スマホがここまで普及すると、変わらなさも価値の一つかなとも感じます。操作性を着実に磨きながらも、これまでの写真やアプリ資産をしっかり使え、また“引っ越し”もかつてに比べるとだいぶ楽になっており、iPhone買い替えのハードルは年々下がっていると思います。

ただし、「価格」というハードルがあがっているのも事実です。iPhone 14 Proの164,800円は、2年前のiPhone 12 Pro/256GB(117,800円)に比べて47,000円、約40%の値上がりです。日本の給与水準はそこまであがっていないので、2年前に比べて、スマホを買い替えにくくなっている面はあるでしょう。

ただ、Apple Trade Inのような買い取りプログラムのほか、最近は中古市場も活発で、1年前のiPhone 13 Proで10万円超の査定がついている例もあるようです。そうした意味では、買い替えプログラムなどを活用して新機種に定期的に更新し、最新の機能に触れるのは悪くないのでは、と思っています。

臼田勤哉