レビュー

クルマでアレクサ。Amazon Echo Autoで家族ドライブをもっと楽しく

Amazon「Echo Auto」があればドライブがもっと楽しくなる!

クルマに“声”で命令できる、というのは長年待ち望んでいたものだった。安全運転を考えると、ドライブ中にステアリングから手を離してカーナビを操作するわけにもいかない。ハンズフリーで必要な情報が得られたり、好きな音楽がかけられたりするのは、ドライブを快適にするのには不可欠だ。

筆者が所有しているマツダCX-3(2世代目)は、マツダコネクトというカーナビ・インフォテイメント機器を標準搭載し、一応音声操作の機能も備えている。が、その認識率や機能は、最近のスマートフォンの技術レベルから見ると古くささは否めない。そもそもインターネットに接続する機能もないので応用もきかない。

そこへついに登場したクルマ用のAlexa、Amazon「Echo Auto」。これがあれば運転手である筆者も、一緒に乗る家族も、ドライブが快適で楽しくなるに違いない。

そう思っていろいろ試してみたところ、想像していた通りのメリットもあれば、ネックとなる部分もあることがわかった。そして、米国向けにリリースされている「Auto Mode」が、実は国内で試せることもわかった。

クルマとの一体感すら感じさせる高速起動

簡単に説明すると、Echo AutoはAmazonの音声アシスタントであるAlexaに対応する車載用デバイスだ。本体にはディスプレイもスピーカーもなく(起動時などの効果音を再生するスピーカーは内蔵している)、基本的には音声入力するマイクとしての役割しかもたないシンプルなもの。

「アレクサ」の呼びかけなしに音声命令できるようにするボタンと、マイクオフのボタンのみのシンプルな外観

なので、実際に使用するにはインターネットに接続可能なスマートフォンと、カーオーディオを組み合わせることになる。カーオーディオの代わりにスマートフォンのスピーカーを使う形にしてもいいけれど、走行時のノイズのことを考えるとスマートフォンの内蔵スピーカーでは力不足だろう。

これらを利用するときは、Echo AutoとスマートフォンがBluetoothでつながり、スマートフォンがさらにカーオーディオとBluetoothでつながる形になる。もしくはカーオーディオがBluetooth非対応の場合は、Echo Auto(のライン出力)とカーオーディオをケーブル接続することになる。そのうえで、スマートフォン上のAlexaアプリを介して動作するという仕組みだ。

給電用のMicro USBポートとライン出力がある

最初のセットアップは室内で行なうのがおすすめ。本体のMicro USB端子にケーブル接続して給電し、Alexaアプリの「デバイス追加」からEcho Autoを登録しておく。その後車両に持ち込み、付属の送風口取り付け用マウントなどを使って固定する。最後に同じく付属しているアクセサリーソケット用のUSB充電器と電源ケーブルを接続すれば準備OKだ。

Alexaアプリを起動し、画面右上の「+」ボタンをタップして「デバイスを追加」
「Amazon Echo」を選ぶ
「Echo Auto」を選択
後は画面の指示に従って操作すれば初期設定は完了
付属のマウント
送風口などに取り付ける。Echo Auto本体とはマグネットでくっつく
付属のUSB充電器から給電。十分な電力を供給できる車載USBポートがあるならそれを使ってもOKだ

他のAmazon Echoシリーズだと電源オンから起動が完了するまで数十秒以上かかる場合がある。が、Echo Autoの起動は数秒と驚くほど短時間だ。クルマのエンジンスイッチを押して通電し、エンジンがかかる頃にはもうデバイスとしては待機状態。あとはスマートフォンとカーオーディオのBluetooth接続がどれだけ早く確立されるかで使えるようになるタイミングが変わってくる。

筆者のCX-3では、Bluetooth接続を含めて10秒程度あれば使用準備が完了する。車載オーディオとEcho Autoがほとんど一体化しているような感覚になるほどで、後付のハードウェアとは思えないスムーズさで使い始められる。

自宅のスマートスピーカーと同じ使い勝手をクルマに

ところで、我が家にはAmazon EchoシリーズのうちEcho Show 5とEcho Plusの2台が導入済みで、今回のEcho Autoで3台目となる。

他にスマートスピーカーとしてはGoogle HomeとGoogle Nest Miniもある。だいたい各部屋に1台ずつあるようなイメージで、家族全員が普段から使っているので音声命令のインターフェースには慣れ親しんでいる、と言っていいと思う。

ディスプレイがない、という意味では、Echo Autoは一般的なスマートスピーカーに近い存在だ。実際、機能としてもスマートスピーカーをそのままクルマに持ち込んだようなイメージ。自宅のスマートスピーカーに話しかけてできることと、Echo Autoでできることに、違いは今のところほとんどない。

セットが完了したEcho Auto。機能としては自宅のスマートスピーカーをそのままクルマに持ち込んだ感じ

なので、スマートスピーカーに普段から慣れ親しんでいる筆者や家族としては、全く同じ使い勝手なので戸惑うことは一切なかった。そういうこともあり、いつものミュージックボックス的な使い方では、ドライブ中もEcho Autoは期待通りの性能を発揮してくれた。

なにより、Amazon Prime MusicやAmazon Music Unlimitedなどと連携して、いつでも好きな曲を流せるのがいい。楽曲名やアーティスト名を指定したり、そのときの気分に合うプレイリストを再生したり、といったスマートスピーカーならではの使い方をクルマにそのまま持ち込める。気に入らない曲が流れても、音声命令で「次の曲」と言えばいいだけ。

自分でCDやUSBメモリ、スマートフォンで楽曲を用意する場合はどうしてもバリエーションが限られるし、手動操作も必要になる。でも、Echo Autoがあればその両方を一度に解決できてしまうわけだ。音質も十分に高く、そのへんにこだわりのない家族からも「(車載FMラジオに比べて)なんか音がすごくよくない?」という感想が出てくるほど。

Bluetooth接続の場合、インフォテイメントの画面には再生中の楽曲情報が表示される

家族でドライブしているときは、Echo Autoのメリットをさらに感じられる。後席の子供からの面倒くさい要望に応えて操作せずとも、子供本人が直接音声命令できるので、運転席や助手席の大人の手間・ストレスも減らせるのだ。

我々大人の知らない謎の楽曲をリクエストされたときも、音楽配信サービスに存在さえしていればすぐに再生されるし、なかなか目当ての曲が流れなくても、悪戦苦闘自体が楽しいコミュニケーションにつながる。子供は上機嫌で、ドライバーである筆者の安全運転にもなる。

radiko.jpでラジオを流すことができるのも、シチュエーションによっては便利だ。カーオーディオのラジオで聞く場合はラジオ電波の受信状態に左右されてしまい、走行中に途切れ途切れになってしまうことも多い。しかしデータ通信で受信するradiko.jpであればラジオ電波は関係ない。もちろんモバイルネットワークの電波が届かないと聞けないことにはなるが、正常に受信している限りはFMラジオで聞くよりもノイズが少ないのもメリットだ。

旅行でロングドライブする際も、目的地の天気を音声命令で簡単に確認できるので心構えがしやすい。悪天候が予想されるようなら、途中でお店に立ち寄って雨合羽など必要な装備を買っていこうか、みたいな判断もできるだろう。

ヘビーに使うなら通信費に注意。認識精度はやや弱いか

ただ、いいところばかりでなく、Echo Autoにはネックと思える部分もいくつかある。一番大きいのは、やはりデータ通信量がかさむということ。往復2日間、合計で4~5時間程度のドライブで音楽配信サービスなどのストリーミングコンテンツを利用してみたところ、通信量は500MBを超えた。

ここで表示されている437MBの他に、モバイルルーターでも110MBほど通信していたので、トータルの通信量は550MBほど

天気などの各種情報をチェックする際にも当然通信することになるので、回線の契約プランによっては高速通信の上限に到達しやすくなる。ヘビーに使いたいなら高速でなくてもいいので低料金の通信サービスを組み合わせることも検討するべきかもしれない。

また、その4~5時間のロングドライブでストリーミング再生中、モバイルネットワークの電波がなくなり通信が途切れると、再生が止まるだけでなく、なぜかスマートフォンとカーオーディオのBluetooth接続まで不安定になる場合があった。カーオーディオとの相性の問題もあるかもしれないが、できればもう少し安定してほしい。

Echo Autoは本体に搭載する8つのマイクでノイズと音声命令を聞き分ける、とうたってはいるものの、それでも音声認識の精度は自宅のスマートスピーカーほどではないと感じる。使用車両はある程度静音化が図られた2世代目のCX-3だが、特に高速道路走行時には騒々しいロードノイズが360度全方位から響いてくる。そのせいか、大きな声でしゃべったり本体に口を近づけたりしないと「アレクサ」の呼びかけに応えてくれないこともあった。

8つのマイクを内蔵し、ノイズと音声を聞き分けるというが……

Bluetooth接続で音楽を聞いている場合にも、やや応答精度が低くなるようにも思う。「アレクサ」と呼びかけて音声命令を受け付ける状態になってからも、1秒間ほどはカーオーディオから音楽が流れ続けているせいかもしれない。これはEcho Autoというより、使用しているBluetoothのコーデックに起因する遅延やマツダコネクト側の問題だろうか。

走行する車内では自宅にはない持続的なノイズはどうしても発生してしまう。音声認識の精度を高めるために、取り付け位置をあれこれ工夫するのもいいかもしれない。付属のマウントだと送風口をふさぐ格好になるので、たとえばサンバイザー付近などに固定すれば、音声認識精度を高めつつ、冷暖房効果も損なわなずに済みそうではある。

運転時に適した「Auto Mode」もこっそり(?)使用可能

Echo Autoを2018年に販売開始した米国では、運転時に適した「Auto Mode」と呼ばれる表示モードを利用できるようにもなっている。スマートフォンの画面でAlexaアプリを表示させておくことで、Echo Showのようなスマートディスプレイ的な使い方が可能になるものだ。

残念ながら日本版のAlexaアプリにはまだ正式には導入されていないので、現状ではどうしても機能面で「クルマ用のAlexa」というような特別さは感じにくい。早く正式に使えるようになってほしいところだ。ただ、おそらく“正式”ではない方法かもしれないが、日本国内のユーザーでも「Amazon.com」のアカウントがあれば、Auto Mode(日本語版では「ドライブモード」)を利用できるようだ。

AlexaアプリにAmazon.comのアカウントでログインすると「ドライブモード」が使用可能に

試してみたところでは、Alexaアプリの画面表示がシンプルなレイアウトになり、「試してみて」というEcho Showでよく見るリコメンドが表示される。テキスト表示はすべて日本語だ。音楽再生時には楽曲情報と再生状況が表示され、スキップなどもワンタッチで行なえる。

こちらは通常状態の日本版のAlexaアプリ
ドライブモードではこうなる
ドライブモードを解除した状態。ドライブモードへの切り替えボタンが表示されている
楽曲再生画面

便利なのはスポット検索。通常はスポット名や住所を音声でしゃべるしかできないEcho Autoだが、運転モードではたとえば「近くの○○を教えて」などと話しかけると、Alexaアプリ上に該当スポットが一覧表示される。さらにそのなかから行きたい場所を確認して、「○○(一覧画面に表示されている番号)に連れて行って」と言えばマップアプリがナビモードで起動し、案内してくれるのだ。

「そば屋を教えて」と話しかけたときの結果一覧。距離の単位がマイルになっているがkmへの変更も可
「1つ目に連れて行って」と言うとGoogle マップがナビモードで起動し、案内が始まる
自宅や職場へのルートを簡単に指示できるようにする設定もある

Auto Modeはまだ日本では正式対応前だが、こうなるとスマートフォンの画面を常に見られるようにしておきたくなる。スマートフォン固定用のホルダーは必須だ。Echo Autoとスマートフォンの両方を固定することになれば運転席周りが混雑するが、クルマのドライブはさらに楽しいものになりそうだ。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。