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Amazon Echoが見据える音・家・クルマの近未来。「Echo Auto」年内国内発売へ

CESに、Amazonが大きなブースを構え、本格的にコンシューマ向け展示をするようになって2年目の今年。同社は昨年同様、パートナーによって作られた「Alexa対応デバイス」と、自社のハードウエア製品が並べられた。Googleも同様に大きなブースを展開し、「音声アシスタント企業による家電のアピール」は、もはやCESの一部として定着した感がある。

Amazonのハードウエア事業、特にAlexaを軸にした製品は現状どうなっているのか? 米Amazonのミリアム・ダニエル氏(Amazon Devices バイスプレジデント)に聞いた。

音楽体験の再構築を狙った「Echo Studio」

2019年もAmazonは多数のハードウエア製品を発売した。CESに設けられたブースには、それらがずらりと並べられた。その中でも、特に好調なものはなんだったのだろうか?

Amazon Devices・バイスプレジデントのミリアム・ダニエル氏

弊社の製品としては、特に「Echo Show 5」が世界中で売れています。これは本当に、顧客からの支持が厚いです。また、テレビと接続する「Fire TV Cube」もヒットしていますね。

中でも最近のヒットは「Echo Studio」です。こちらは、日本でもアメリカでも受注残を抱えるほどのヒットとなりました。非常に大きな需要があるという手ごたえを感じています。

Echo Studio

Echo Studioは、日本でも発売済みのオーディオ注力したスマートスピーカー(24,980円/税込)。オブジェクトベースの3Dオーディオに対応したことで、部屋の中どこにいても、包み込むような感覚で音楽が楽しめる。いわゆる高級スマートスピーカーとも違う、より新しい体験を狙った機器だ。

Echo Studioはどのようにして生まれたのだろうか?

ダニエル:そもそも、Echoは「音楽を気軽に聞く」ことを目的としたスマートスピーカーとして生まれました。要は「スピーカーをスマートにしたかった」わけです。

それがある程度成功し、Echoが普及したあと、Echoの開発チームが考えたのは、「では、もっと音が良く、没入感のある音楽体験を提供するにはどうしたらいいのか?」ということでした。

もちろん、ハイレゾのようなアプローチもあるのですが、様々な音楽レーベルの人々と話したうえで、3Dオーディオの採用を選択しました。こちらの方が誰にでも効果がよくわかるからです。

曲の準備などに時間が必要ですが、それは各オーディオレーベルと協力の上、進めています。

Amazon・Apple・Googleのスマートホーム連合「CHIP」の狙いとは

昨年12月、スマートホーム関連では大きな発表があった。Amazon・Apple・Google、そしてZigbee Allianceが共同で、スマートホーム関連の共同規格を開発する「Connected Home over IP プロジェクト」をスタートしたのだ。

Amazon、Apple、Google、スマートホーム統一規格に向け協力

これはどういう意図があるのだろうか?

ダニエル:狙いは「シンプルにする」ということ。これに尽きますきます。APIを統一することで、3つのメジャーな機器への対応を1つのボディーに入れることを目指します。

今は顧客が「どの機器がどの製品に対応しているのか」迷いがちで、複雑です。シンプルにしないと広がりません。私たちは、自らの製品で「フラストレーションフリー・セットアップ」などのシンプル化を進めてきましたが、それと同じ考え方です。スマートホームの未来は、もっとシンプルな姿の先にあります。

統一されるというと、他社との差別化が難しくなるのではないか? という疑問も浮かぶか、これをダニエル氏は明確に否定する。

ダニエル:そうではないです。規定されるのはローレベルでのAPIで、非常に成熟した部分を扱います。そこにはすでに差別化要因はありませんが、それをどう組み合わせて使うかは、各社の差別化領域です。

ちなみに、「Connected Home over IP プロジェクト」にはちゃんと略称がある。正式に「CHIP」と略すのだという。これからは「CHIP対応か否か」をチェックする時代になるのだろうか。

CHIPは、無線通信規格の「Zigbee」との連携を謳っている。そしてダニエル氏は、「Zigbeeとの関係には、もうひとつ重要な点がある」とも語る。

ダニエル:Zigbeeはもともと無線通信の規格であり、我々は、Zigbee Allianceと長い関係を築いています。現在、90%のスマートホームにおいて、「照明」が使われていますが、ここではZigbeeが使われる例が多いのです。ですからこの部分でも、AmazonはZigbeeとの関係・価値を大切にしていきます。

自動車向けのEcho Autoは位置情報を活用。2020年末までに日本投入か

CESに合わせ、Amazonはひとつの発表を行なった。自動車で使うためのEchoスピーカー「Echo Auto」を、2020年中にアメリカ以外の国へと出荷する、と発表した。

新たに展開予定の国として、1月15日にインドで発売されたが、それ以外の国については明確にアナウンスされていない。しかし関係者の話を総合すると、日本については、「2020年末までに展開される」と考えていいようだ。

Amazonは自動車メーカーと組み、自動車への「Alexaビルドイン」を進めている。ビルドイン型では、自動車のシートセッティングを変えたり、エアコンを操作したりといった、車内で求められる多くのことが音声で可能になる。スマホ連携を使うところもあるが、自動車に通信モジュールを搭載し、独立して動作するようにしている例もある。CESでは、ランボルギーニの「ウラカン・エヴォ」がAlexa対応する、と発表された。当然、組み込み型なので、自動車ごと買い替える必要がある。

ランボルギーニの「ウラカン・エヴォ」が、スーパーカー初のAlexaビルドインモデルとして発表された

Echo Autoは、自動車の買替えはできない、という人向けのソリューションだ。厚めのカードケースくらいの大きさ(85×47×13.28mm)の端末で、Bluetoothでスマホと接続して使うことを前提としている。後付なので、車のエアコンの操作はできない。だが、音楽をかけたりナビをしたりと、自動車で求められる多くのことが可能になる。

Echo Auto。アメリカでは昨年末に一般販売を開始した。2020年末までには、日本市場への投入が期待できる

ダニエル:Echo Autoは、しばらく招待制のテスト販売の形をとっていましたが、昨年11月から、アメリカでは正式販売に切り替わりました。今は毎週、何百万回と使われている状況です。

なにより「車の中で音楽を聴きたい」というニーズは、本当に大きい。この用途には非常に多く使われていますね。自動車向けであっても音楽が、やはりポイントです。

他のEchoとの違いを挙げるとすれば、より「コミュニケーション用途」に使われている、というところでしょうか。他の人にメッセージを送ったり、通話したり、という使い方ですね。それから「ローカルサーチ」が多いのも特徴です。天気やニュース、近くのガソリンスタンドの検索などを行なう例も多いです。というのは、他のEchoは自宅に置いて使うものですが、Echo Autoは移動しながら使うものなので、位置情報を生かした使い方が価値を持ってくるのです。

それに「リマインダー」機能も多く使われていますね。「帰りに牛乳を買ってくる」といったことを他のAlexaから入力しておくと、移動中に教えてくれるんです。

自動車はなかなか買い替えられないものだが、そこに低コスト(アメリカでの販売価格は50ドル)で音声での動作を追加できるなら、確かに便利だ。同じことはスマホだけでもできるが(スマホに話しかければいい)、Echo Autoはマイクの位置や組み合わせを工夫しており、スマホよりも音声認識の精度が高まるようになっているという。

用途や精度については、宅内で使うEchoに比べ厳しい声もあるようだが、ニーズが大きい製品だけに、日本展開までに成熟していくことを期待したい。