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JALとGMO、羽田空港でのヒューマノイドロボット活用の実証実験

日本航空、JALグランドサービス、GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)は27日、ヒューマノイドロボットによるグランドハンドリング業務の代替に向けた実証実験を5月から開始すると発表し、羽田空港のJALメインテナンスセンターで記者会見を行なった。

手荷物・貨物の搭降載、機内清掃などグランドハンドリング業務全般の省人化・効率化を目的とし、まずはコンテナ移送の一部作業から、2028年まで実証実験を行なう。

ヒューマノイドロボットが作業するイメージ

活用するロボットはUnitree「G1」と、UBTECH「Walker E」。グランドハンドリング業務は航空機周辺の限られたスペースで多種多様な形状の特殊車両(GSE)を扱うなど人間の手作業を前提とした環境で行なわれており、従来の固定式自動化設備や単一機能のロボットでは既存のインフラや複雑な作業動線に柔軟に対応することは困難だった。

そこで人間と同等の可動域と適応力を持つヒューマノイドに着目して実証実験を行なう。

人型であることから現行の空港施設や機体構造を大幅に改修することなく導入が可能となり、将来的には手荷物の積み込みから機内清掃、GSEの操作まで多岐にわたる業務への汎用的な活用が期待できるとしている。

今回デモを行なったUnitree「G1」
Unitree「G1」(左)と、UBTECH「Walker E」(右)

コンテナ移送の一部作業の自動化に3年間かけて取り組む

プロジェクト担当者のJALグランドサービスの吉岡智也氏は、ヒューマノイド、GMO AIRを選定した理由、現状の作業と今後の展望を紹介した。

JALグランドサービス 吉岡智也氏

グランドハンドリングは多くの人手が使われている複雑な作業であり、これまで革新が進んでいなかった。専門設備はもちろん必要だが、いっぽうでヒューマノイドは人間が使うことを前提として設計されている既存インフラを有効活用可能であり、一台で何役もこなせる可能性がある。

GMO AIRを選定した理由としては、セキュリティを含めた信頼性、一貫したサポート体制、スピード感、最新機体を活用できる派遣サービス等が魅力的だったと語った。

現在行なわれている人力でのグランドハンドリング作業
この人手作業をロボットで自動化することが目標

今回はコンテナ移送の一部作業(コンテナ回転、ストッパー解除、移送)の自動化に取り組む。まずはドーリーからハイリフトローダーへのコンテナ移送を自動化するために、重さのあるレバーを操作する作業、コンテナを押す作業、そしてペダルを踏んで行なうドーリーの回転操作へと順次取り組む。

それぞれを実現させたあと、一連動作の開発へと進み、安全面を検証したあと、空港内の実証に取り掛かるという計画だ。

はじめに自動化を目指すのはコンテナ移送作業の一部
ドーリーからハイリフトローダーへの移動を想定した開発を行なう
レバーを上げる作業のイメージ
コンテナを押す作業のイメージ
コンテナを押すUnitree G1 JALとGMOによる実証実験 コンテナを押すUnitree G1

吉岡氏は「現場はスタート段階。今後実証実験を開始してすぐに輸送作業ができるわけではない。この先3年は第一ステップとして開発しながら、安全かつ効果的に自動化を進めて、作業負荷軽減と省人化を進めていきたい」と語った。

技術開発を担当するGMO AIR 滝澤照太氏は「開発は段階的に進めていく」と説明。いきなり「完全自律」を目指すのではなく、まずは模倣学習や強化学習などを使って、ヒューマノイドが作業したときの動的バランス制御などから進めていく。

徐々にデータ収集やアプローチの改善を行なっていく。進展著しい分野だけに、ロボットのハードウェアやAIモデル、開発手法などについても今後柔軟に見直していき、都度都度、良いものを選んでいきたいとのことだった。

開発はステップバイステップで行なっていく
GMO AIR グループ研究開発本部 AI研究開発室 共同研究推進グループ リーダー/リサーチエンジニア 滝澤照太氏

人の作業をロボットに置き換える取り組み

JALグランドサービス 代表取締役社長 鈴木美輝氏は「少子高齢化と人材不足への対応が急務だ」とロボットへの取り組みの背景を述べ、「現場の実用性に則したロボットの開発を進めたい」と語った。

JALグランドサービス 代表取締役社⻑ 鈴木美輝氏

JALグループは、2026年3月に、長期的な成長戦略と未来像を示す指針として「JALグループ経営ビジョン2035」を策定した。人とテクノロジーの協働により抜本的に働き方を変え、「持続可能なオペレーション体制」を確立することを掲げている。今回のロボット活用は、ビジョンの具現化に向けた象徴的な取り組みだという。

鈴木氏は「身体的負荷の高い作業がロボットに置き換えられることはメリットが大きい。人がやる作業領域をロボットに置き換えていかないと対応が難しくなると考えている。地上にいるときの発着工程管理などに優秀な人材をあてていきたい」と語った。

GMO AI & ロボティクス商事 代表取締役社⻑ 内田朋宏氏

GMOインターネットグループにおいてAI・ロボット事業を担う商社であるGMO AIRの内田氏は、同社のビジネスモデルを紹介し、「AIロボティクスの技術革新は速い。いま産業革命の真っ只中にいる。2026年はヒューマノイド元年だと考えて取り組みを始めている」と述べ、ヒューマノイドの派遣サービスや、販売、渋谷の「ヒューマノイド・ラボ」、GMOの陸上部と共に取り組んでいる「GMOロボッツ」といった取り組みを紹介した。

そして「社会実装しないと意味がない。JALと一緒に空港でできるというのはワクワクしている。これは本格的な社会実装の第一歩」と語った。空港業務の多くは自動化されているが、それでもまだ多くの人手が使われており、人手不足に苦しんでいる。そこを既存設備にそのまま導入できる可能性のあるヒューマノイドで代替することを目指す。そして「これは2040年を見据えた本気の長期プロジェクトだ」と語った。

ヒューマノイドの社会実装に取り組むGMO AIR
GMOの陸上部と共に取り組んでいる「GMOロボッツ」