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電力需要を昼にシフトする「上げDR」推進実証 EV+エコキュートで効果
2026年3月17日 16:33
環境省とLooopは、「昼の再エネ余剰電力需要創出モデル実証」の成果について発表した。昼の電力利用促進に向け、消費者に行動を促す取り組みと、EV充電やエコキュートを自動制御する取り組みを実施し、いずれも効果が見られたものの課題もあると結論づけた。
昼に余る再生可能エネルギーを有効活用し「出力制御」を低減するため、昼間の電力需要創出を目指す取り組み。消費者が電力使用量を制御することで電力需要パターンを変化させることを意味する「DR(ディマンドリスポンス)」のうち、電気の使用時間を昼にシフトする「上げDR」が有効であるという考えから実施した。
「上げDR」には、消費者が自ら行動する「行動変容型DR」と、機器を自動的に制御する「機器制御型DR」の2つの方法がある。具体例として、行動変容型DRには洗濯の時間を夜から次の日の昼間にシフトする、夕食の準備のため炊飯を昼に行なうなど、機器制御型DRにはヒートポンプ給湯器の沸き上げ時間やEVの充電時間を昼間にシフトすることなどが挙げられている。
実証実験は、27年度以降の「上げDR」の社会実装を目指した、消費者の行動変容を促す、24年度から26年度にわたる3カ年のモデル実証事業。行動変容型と機器制御型の両方に係る実証を実施した。
行動変容型DRに関しては、Looopが提供するスマホアプリを通じて、ユーザー特性に応じたDR行動のレコメンドやインセンティブを提供。参加者に対してDR行動を促すメッセージを通知することは共通だが、内容は2パターンで、「一律のメッセージ」「参加者が持っている家電の種類に合わせた内容」を用意した。
参加者は3つのグループに分類し、上記2パターンを通知する2つのグループのほか、「一律のメッセージ」に加えてタスク達成による金銭的インセンティブを設定したグループを設け、計3つのグループを比較検証した。参加世帯は各3,000世帯、計約9,000世帯。
インセンティブグループに対するタスクはクイズの回答やコラム読了で、タスク達成でポイント獲得、ポイントに応じてランクが決まり、謝礼金も変化する。クイズやコラムを通じて参加者の知識や関心を高めるという狙いもある。
行動変容型DR実証の結果、全体的にゆるやかな上げDR傾向を確認。特に、参加者に合わせたレコメンデーション提供グループが、DRが観測された日数が全体的に多く、行動変容を継続的に促す施策としてのレコメンデーションの効果が見られた。
次回も「参加したい」と答えた参加者割合に関しては、インセンティブプログラム提供グループが多かった。
機器制御型DRに関しては、「EVレコメンド」および「EVとエコキュートの複数機器制御」の2つに着目して実証を行なった。後者は、EV、エコキュートの単独機器制御よりも「複数機器制御」を通して大きなDR量と電気代削減効果が得られるという仮説に基づいて検証している。これら2グループに、レコメンドを行なわない「EV、エコキュートの単独機器制御」のグループを加えた3グループで比較している。参加世帯は計124世帯。
EV制御の方法は、参加者が実証用アプリで設定した出発時刻と充電上限を取得し、実証システムがEV充電計画を作成。出発時刻に間に合う範囲、かつ最も電気代が安くなるように、充電上限まで遠隔操作で自動的にEV充電を行なった。実証にあたってはKaluza Japanと協働している。
エコキュート制御の方法は、参加者の生活リズムから電気の使い方・お湯の使い方を取得し、実証システムが沸き上げ計画を作成。湯切れを起こさない範囲、かつ最も電気代が安くなるように、自宅の太陽光発電の余剰電力も考慮して、自動的にエコキュート沸き上げを行なった。加えて、消費電力を5分間隔で監視し、家庭内の消費電力と沸き上げに必要な電力を合算した値が契約電力を超えると判断した場合には、当該コマの沸き上げを中止し再計画する運用とした。
EVは充電できる環境になければ自動制御による充電ができないことから、電気代が安い時間にEV充電ケーブルの接続を促す通知を送信するEVレコメンドを行なっており、通知の内容は「EVレコメンド」と「EVとエコキュートの複数機器制御」の両グループ共通で実施した。
機器制御型DR実証の結果、EVレコメンドあり群のほうが、昼の上げDR量が多く確認された。かつ、出発時刻を日中の時間帯に設定する割合が高く、レコメンデーションが昼間の上げDRに貢献した可能性があるとしている。一方で、EVレコメンドあり群において、レコメンド配信日の充電のためのプラグインが増加する傾向は見られなかった。
また、複数機器制御は、単独機器制御よりも相対的に大きい結果が得られたという。
しかし、機器制御型DRには制御可能なEVとエコキュートを持つ需要家は少ないという課題があり、加えて「アプリ通知が煩わしい」「アプリ通知を見る習慣がない」という意見も見られた。
環境省は実証実験全体を通して、行動変容型・機器制御型ともに上げDRの効果を確認できた一方で、より精緻なレコメンド等の非金銭的インセンティブによる一層の行動変容の促進が課題としている。26年度は今回の結果と課題も踏まえ、消費者の昼間の電力需要の創出および昼間の電力利用による消費者便益の最大化を目的として、モデル実証を実施する。











