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千葉工業大学、日本初の「AI大学講師」を試験導入
2025年5月12日 13:17
千葉工業大学は5月12日、日本初となる「AI大学講師」の導入を発表した。受講生の全学習プロセスと大規模言語モデル「ChatGPT」を連携させた対話型の個別最適化された教育支援システムで、「web3・AI概論」の講義にて実証実験を開始した。期間は前期授業が終了する7月までで、教育効果の定量的検証を行なう。
AI大学講師は、学生の全学習プロセスを「Verifiable Credential(VC)」として記録・蓄積し、それを参照することで個別最適な指導を実現する。VCはW3Cが標準化を進めるデジタル証明書技術で、真正性・改ざん防止などの機能をもつ信頼性の高いデータとして管理される。VCを導入することで、AIが生成する情報の信頼性を大幅に向上させ、「ハルシネーション(幻覚)」を防止する。
さらに、講義内で得た成果もVCとして発行され、ブロックチェーン技術を活用して証明性を担保。就職活動などで学生が自身の学習成果を客観的に示す手段として活用可能となる。
実証実験では、学習内容の理解度と定着率、批判的思考力と問題解決能力の向上、自主学習時間の変化、講義満足度や学習継続率、中退率・離脱率の改善といった観点から効果を評価する。とくに、AIとの対話を通じて自らの考えを言語化・整理する過程を重視しており、批判的思考や多角的視点の獲得を目指す。
AI大学講師は、知識提供だけでなく「この結論に至った理由」「別の視点からどう考えられるか」といった問いかけを通じて、思考プロセスを深めるサポートを行なう。また、多言語対応にも強みを持ち、留学生への支援にも活用できるほか、履修科目間で一貫した学習支援を可能にする点も特徴としている。教員が全体指導に注力しつつ、AIが個々の学生に合わせた支援を行なうことで、大規模授業との両立も期待されている。
千葉工業大学では、実証を経て必要な改良を加えたうえで、全国の大学への段階的な展開を計画する。