北極の面積が過去最少　観測衛星「しずく」で確認

JAXAと極地研究所は、北極の冬季海氷域面積(年間最大面積)が衛星観測史上最も小さくなったと発表した。毎年北極の海氷域は晩冬となる3月頃まで拡大するが、今年は3月20日に年間最大面積の1,379万km2を記録し、この値は衛星観測開始以来の最も小さい値となる。

JAXAと極地研究所は、北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)の一環で、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)をはじめとしたマイクロ波放射計による観測データをもとに、40年以上に渡る長期的なデータセットを整備。南極・北極の海氷域面積の時間的・空間的な変化を可視化や、北極域データアーカイブシステム(ADS)のWebサイト公開などを行なっている。

北極の海氷域面積(氷が15%以上存在する領域)は、例年、10月～3月に拡大し、4月から9月に縮小するという季節変動を繰り返している。2024年12月～2025年2月にかけて、北極の月平均海氷域面積は、いずれの月もその月としては観測史上最小を記録。この傾向は3月に入っても続き、今シーズンで最も海氷域が拡がった3月20日でも、1,379万km2にとどまった。

これまでの最小記録は2017年3月5日の1,392万km2で、今回はそれを13万km2下回った結果となった。2010年代の平均との比較では、グリーンランドの東側以外の多くの海域で、海氷域が小さかった傾向にあり、特に、海氷分布の南限に近いオホーツク海では、2025年の冬の海氷域面積が47年間でも小さい水準で推移。2月の平均面積としては過去2番目に小さい値を記録している。この影響により、北極だけでなく南極も含めた全球の海氷域面積の年間最小値が観測史上最小を更新する結果となった。原因は北極海周辺の気温が2010年代の平均と比べて高く、海氷域が広がりにくい状態が続いたためとしている。

今回の解析には、水循環変動観測衛星「しずく」に搭載された「高性能マイクロ波放射計 2(AMSR2)」センサのデータを使用。AMSR2は直径約2mのアンテナにより、海面や海氷、大気から放射される微弱な電波を捉え、水に関するさまざまな物理量を観測できる。2025年度には「AMSR2」の後継である「高性能マイクロ波放射計 3」(AMSR3)を搭載した温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」の打上げも予定されている。

JAXAらは、北極海氷域面積の減少は、地球規模の気候変動と関連する現象で、今後の気象や海洋環境への影響が懸念されるため、今後も継続的なモニタリングと分析を行なっていくとしている。