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d払い・iD・dカードは「どれもお得」に dポイント軸で強化するドコモの決済

NTTドコモは18日、dポイントやドコモの決済サービスのマーケティングに関する説明会を開催した。dポイントを軸に、d払い・iD・dカードの各決済サービスを一体的によりわかりやすく訴求していくほか、外部パートナーとともにdポイントの価値向上を目指す方針を示した。

自社サービス“以外”で使われる「dポイント」

dポイントクラブの会員数は9,200万人、dポイントカードの登録数は6,000万人、d払いユーザーは4,800万人、dカード契約者は1,600万人と多くのユーザーを抱える。共通ポイントとしてのスタートは遅かったものの、多くの利用者を抱えるサービスとなっている。

外部利用の多さがdポイントの特徴

楽天やPayPay、au PAY/Pontaなど、日本における「ポイント経済圏」はケータイキャリアを軸に展開されているが、dポイントの他社にない強みは、「自社サービス以外で提携先で使われていること。加盟店にとって『いいポイント』になっている」(NTTドコモ コンシューママーケティング部 シニアマーケティングディレクター 西井 敏恭氏)という。

NTTドコモ コンシューママーケティング部 シニアマーケティングディレクター 西井 敏恭氏

実際、ドコモサービス以外の提携先での利用が約8割(2022年度第2四半期)で、決済/ポイント利用箇所も440万と充実している。「用途にあわせて様々なシーンで使え、提携先に送客・消費喚起できる」のがdポイントの特徴といえる。

使いやすさに課題。d払い・iD・dカードは「どれでもお得」

dポイントやドコモの決済サービスは、キャッシュレス化の波に合わせて利用者を順調に拡大してきている。一方で課題となっていたのが、「決済手段としての使いやすさ」(ドコモ西井氏)だった。

具体的には、ポイントプログラムの“わかりにくさ”、iD・d払い・dカードなど”支払手段ごとの違い”だ。そのため、'22年6月にポイント獲得額に応じてランクアップするシンプルな会員プログラムにリニューアル。ドコモ回線ユーザーであれば自動的に「2つ星」になり、ポイントが1.5倍になるなど、わかりやすく貯めやすいプログラムになった。これにより、ドコモ回線の「ロイヤルユーザー」にはお得なdポイントは確実に浸透しているという。

一方で、西井氏はドコモ回線契約者以外にはわかりやすさが「まだ伝わっていない」と指摘。今後の課題としている。

決済手段における課題も「わかりにくさ」にある。d払い、dカード、iDなどドコモでは複数の決済サービスを展開している。非接触やコード決済、アプリでの通知など、様々な違いや特徴があるが、以前は各サービスがそれぞれの目標をもち、ポイントキャンペーンなども別々に動いていた。そのため「どのサービスを使うとお得なのか?」がわかりにくくなっていた。

この課題に対して、ドコモのどの決済サービスを使っても同様にdポイントを貯められる「どの決済手段でもおトク!」を目指す方針に改めた。

ポイントアップキャンペーンも、従来はd払いやdカードなどで別々に展開していたが、iD・dカード・d払いのそれぞれを対象としたシンプルなものに改めていく。

実際に12月からスタートした「dポイント総額5億円分ポイントバック」キャンペーンのエントリー数は、「過去のキャンペーンと比べてもすごく多くなっている」とのこと。以降も「わかりやすさ」を重視したキャンペーン設計を行なう方針。

「エントリー」は「お得を感じてもらう」ため

シンプルを重視して強化を進めるdポイントとドコモの決済サービスだが、社内では「エフォートレス」という方針を掲げている。ユーザーが「学習」しないと使えないサービスではなく、わかりやすく、シニアでも使いやすく、かつセキュリティも担保していく。

この方針でいえば、PayPayのようにキャンペーンへの「エントリー」を行なわないほうが、よりシンプルでエフォートレスにも思える。

西井氏に聞くと「エントリーの有り/無しは難しい議論。エントリーという行為を通じて、『お得になった』とユーザーに感じていただける。そこに価値があると考えている。自分でエントリーすることが重要。(エントリーには)マーケティングコストの面で、対象者が絞れるというメリットもあるが、なにより『お得を感じてもらう』ためにエントリーは必要と考えている。ただし、複雑に条件分岐するようなキャンペーンは止めて、単純で考えずにエントリーできるもの。そこのエフォートをなくしていきたい。エントリーというアクションはもう少し深く考えていきたい」と説明した。

また、西井氏はエフォートレスの一つとして、「dアカウントを使いやすくする」という課題についても言及した。「アカウント認証のセキュリティが厳しい。非常に重要なことだが、セッション保持時間が短い、ブラウザをまたいだ時の挙動の課題など使い勝手の悪さにつながっている部分はある。他社はセキュリティを担保しながら改修できている部分もある。利便性を求めてdアカウント作ってくださるお客様に対し、良さが伝えられないのはコミュニケーションではなくシステムの問題」とし、改善に取り組む姿勢を示した。

良いポイントとはなにか? dポイント自体の価値を上げる

西井氏がもう一つ課題としてあげたのが、dポイントの「ブランド認知」だ。

発行額も使える場所も非常に多いdポイントだが、ネット通販や高額消費での利用認知やイメージはまだ低く、「どこでポイントが使えるか、想起されていない」と語る。

dポイントの場合、外部パートナーでの利用が多いのが特徴。ただし、旅行の場合、楽天であれば「楽天トラベル」が使えるとわかるが、dポイントが「じゃらん」で使えるとはすぐに想起できない可能性がある。またECなどドコモのサービスが弱い領域もある。こうした課題に対して、パートナーと連携して取り組むことで「最も選ばれる共通ポイント」を目指すとする。

また外部利用が多いということは、「ポイント経済圏」としてのドコモ/dポイントの弱さの現れともいえる。ただし、西井氏はこの点は否定的には捉えていないとする。

「経済圏(の弱さ)については、ご指摘のとおりの面はある。しっかりしていかないといけないが、同時に『顧客起点』で考えると、そもそもユーザーは経済圏で囲い込まれたいのか? という疑問はある。使いたいところで使えるのが一番いいはず。発行額では負けていないので、結果的に『送客』が多いポイントが加盟店にとっては『良いポイント』になる。囲い込むのではなく加盟店と一緒になってポイント価値を上げていくことが重要だ」(西井氏)

外部パートナーとの連携をdポイントの「強み」として訴求するほか、ECなどのドコモが相対的に弱いが重要なサービスにおいてはリニューアルなどで改善を図っていく。

また、最近は非接触決済としてクレジットカードなどのタッチ決済(NFC)が増えており、iDの特徴が薄れてきている。この対策も「dポイントの価値を上げること」と西井氏は語る。

「dカード経由のiDであれば、dポイントが貯まる。dポイントが使いやすくなることで、dポイントが貯まるiDの価値もあがる。非接触でdポイントを貯めたい時にiD決済を使っていただきたい。dポイントの価値が下がってしまえばiD利用の価値も下がってしまうので、dポイントの価値をあげていきたい。それがiDのシェア拡大につながると考えている」(西井氏)

今後、ドコモの決済サービスにおいては、わかりやすいネーミングへの変更も検討。シンプルさを基調に、dポイントや決済サービスの使いやすさを高めることで、ドコモとしてのARPU(1ユーザーあたりの平均売上)向上を目指す。