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3D点群データをモバイル回線で伝送可能にするリアルタイムエンコーダ。KDDI総研

KDDI総合研究所は24日、三次元点群圧縮技術の最新の国際標準方式「V-PCC」に対応したリアルタイムエンコーダーの開発に世界で初めて成功したと発表した。これにより、人物などの3D点群のデータ品質を落とさずにデータ量を大幅に削減し、モバイル回線でリアルタイム伝送を実現する。

点群圧縮(Point Cloud Compression)デモンストレーション

近年、3D点群を利用したコンテンツ制作が広く行なわれるようになったが、それらのコンテンツは膨大なデータ量を必要とする。これまでの圧縮技術では50Mbps以上のデータ量が必要だったが、これはモバイル回線を介して安定的に伝送するには困難だった。

KDDI総合研究所は、V-PCCに対応したリアルタイムエンコーダーの実現に向け、約400倍の高速化につながる2つの技術を確立。PCソフトウェアにより動作する、V-PCC対応リアルタイムエンコーダーの開発に成功した。これにより主観画質を劣化させずに、データサイズを1/40に圧縮できるようになるという。

新たに開発されたのは、1つは「3D点群を通常の映像と同じ形式へ高速に変換する技術」、もう一つは「V-PCCに適したタスクスケジューリング方式によるCPU使用率を改善する技術」。

高速変換技術では、3D空間をパッチよりも小さな小空間に分割し、多数の点が含まれる小空間ごとに平面を判定する高速化手法を導入。さらに、2D平面画像のうちテクスチャー画像と深度画像の変換処理に適用することで、圧縮性能を損なわずに、変換処理にかかる時間を削減。従来方式と比較して約20倍の高速化を実現したという。

CPU使用率の改善では、V-PCCに適したタスクスケジューリング方式を導入。CPU使用率を理想的な状態に近づけることで、約20倍の高速化に成功した。

これらにより、3D点群のデータ品質を落とさずに効率的にモバイル回線でリアルタイム伝送できるようにする。3D点群のライブ配信により、音楽やファッションなどのショーイベントにおいて、ボリュメトリックスタジオで撮影した映像をそのままメタバースに参加させるといった応用が見込まれる。

KDDI総合研究所は、今後ライブ伝送システムやスマートフォンやVRデバイスでの体験アプリケーションを開発。より臨場感のある3D点群の配信を普及させる取り組みを進める。