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年末調整の完全デジタル化。SAP・弥生など6社が提言

SAPジャパンなど6社は、社会的システム・デジタル化研究会(通称:Born Digital研究会)として、「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」を発表した。年末調整のプロセスを一貫してデジタル化することで、抜本的な効率化を目指す。

年末調整は本来確定申告の簡易版であるはずだが、税制が複雑化するとともに、確定申告よりも処理が複雑化しており、電子化の範囲は広がりつつも、依然として紙を前提とした業務になっている。全国の膨大な数の事業者が繁忙期である年末時期に多大な時間を費やして業務を行なっている他、行政が年末調整業務の正確性を検証するのは、事業者と行政の両者で二度手間となり、社会的に多大なコストを要している。

新たな年末調整の基本的な考え方は、「1. 発生源でのデジタル化」「2. 原始データのリアルタイムでの収集」「3. 一貫したデジタルデータとしての取り扱い」「4. 必要に応じた処理の主体の見直し」「5. 確定した事実ベース」の5つ。そして、「従業員の扶養情報等の情報」「月次の給与支払いや源泉徴収の実績」「各種控除証明データ」を、発生源からデジタルデータでリアルタイムに収集し、翌年1月以降に年税額・精算額を算出することを提言している。紙の電子化にとどまらず「デジタル化」で業務のあり方を見直すことで、効率を抜本的に向上させる。

実現に向けては、実現可能な難易度が異なる物が混在するため、段階的に実施していくアプローチを提案。第1ステップは2023年分頃、第2ステップは2026年分頃での実現を目指すとしている。

年末調整制度は主に行政の仕組みであるため、新たな制度の実現に向けては、行政による主導が必要になる。一方、民間事業者からも一定の関与と強力な後押しが不可欠なため、引き続き、提言内容の実現に向けて積極的に活動するという。

社会的システム・デジタル化研究会は、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生、Works Human Intelligenceの6社が、社会的システムのデジタル化を通じ、社会全体の抜本的な効率化、社会的コストの最小化を図ることを目指し、2019年12月に発足した研究会。2020年6月には、「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」を発表し、「中長期的には、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等について、業務プロセスを根底から見直すデジタル化を進めるべき」との提言を行なっている。今回の提言はそこから、「新しい年末調整のあり方」についてまとめたもの。