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壁より断熱性が高い樹脂サッシ。パナソニックの真空断熱ガラス採用

左からパナソニック ハウジングシステム事業部 建築システムBU VIG事業推進部の木村猛氏、エクセルシャノン代表取締役社長の池田州充氏

パナソニックは、真空断熱ガラス「Glavenir」(グラベニール)が、エクセルシャノンが発売する高断熱の樹脂サッシ「シャノンウインドSPG」に採用されたと発表した。同サッシは両社の共同開発で、エクセルシャノンが6月から新築向けに販売する。形状などは7種類を用意、カラーはホワイト。価格は縦すべり出し窓スマートシリーズ(640×1,170mm)で285,120円。

パナソニックの真空断熱ガラスであるグラベニールは、2枚のガラスの間に0.1mm程度の真空層を設けて断熱性を高めたガラス。合計で厚さが6mmのガラスで、一般的なトリプルガラスと同等の性能を持つ、国内最高性能の断熱性を誇る。かつて生産していたプラズマディスプレイパネルの技術を応用したもので、国内に出荷されるものはパナソニックの工場で生産される。サッシ向けガラス市場には新規参入の形だが、技術的に近いプラズマディスプレイパネルは数千万枚を生産しており、豊富な生産実績があるとする。

パナソニックの真空断熱ガラス「Glavenir」(グラベニール)。黒い点に見えるのは、真空層であるガラス間の約0.1mmの隙間を支えるピラー。20mmピッチで配置されている

エクセルシャノンは日本で初めて樹脂サッシを開発した樹脂サッシ専業メーカー。樹脂フレームの中に断熱材を充填する技術などを組み合わせ、高性能な断熱サッシをラインナップしている。塩化ビニル樹脂材料などを開発するトクヤマの子会社で、パナソニックが株式の49%を保有、今回の共同開発に至っている。

「シャノンウインドSPG」は、国内最高クラスの断熱性能を備えるフラッグシップ樹脂サッシ。パナソニックの真空断熱ガラスを屋内側に採用した上で、全体では3枚のガラスを用いるトリプルガラスの構成。外側の2枚のガラスは高透過Low-E強化ガラスで、ガラスの間にはクリプトンガスが封入される。ガラスの総厚は37.1mm。樹脂フレーム内部にはノンフロン系シリコンの断熱材も充填される。

「シャノンウインドSPG」
離れると見えにくいが、近づくと真空断熱ガラスのピラーが黒い点として見える
「シャノンウインドSPG」のカットモデル。真空断熱ガラスはパナソニックの技術で、断熱材を充填した樹脂フレームやセンターシールはエクセルシャノンの技術となる。説明用の模型のため細部は製品と異なる

窓全体の断熱性能として用いられる熱貫流率(U値、Uw)は、新設のJIS等級「H-8」(1.1W/m2・K)を大幅に上回る0.52W/m2・K(縦すべり出し窓)で、国内最高クラスの断熱性能を実現した。これは、最新基準の省エネ住宅に使用される断熱材入りの壁(0.53W/m2・K)よりも高性能な水準。

この結果、例えば外気温がマイナス10度の環境でも、「シャノンウインドSPG」の屋内側のガラスの表面温度は室内温度とほぼ同じになり、窓のガラスやフレームが屋内の空気を冷却してしまう効果を大幅に低減できる。

遮音性能も高く、平均音圧レベル差は35.1dBになる。これは住宅性能表示・遮音性能の最高等級である等級3(平均音圧レベル差25dB)と比較して、10.1dBの差があり、遮音性能としては約3倍も高性能としている。

氷水の入った袋が密着した状態のデモ。室温は23度で、一般的な1枚のガラスだと、表面温度が8.5度まで下がっている
「シャノンウインドSPG」のトリプルガラス。室内側になる真空断熱ガラスの表面は室温と同じ

これまで日本における樹脂サッシの需要は寒冷地が中心だったことから、エクセルシャノンも1990年代までは北海道や東北で展開していたが、省エネの観点から樹脂サッシの需要が拡大していることにあわせ、2000年代からは全国で展開を行なっている。「シャノンウインドSPG」は新築向けだが、病院などの施設にも展開していく方針。

パナソニックは、住宅設備建材メーカーとして今回の共同開発の断熱サッシをラインナップできることになり、省エネ化がますます求められる高性能住宅での需要に対応していく。