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“大人の世界”のAIルール問題

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OpenAI Japanが、「未成年の安全性に関するブループリント」を発表し、説明会を開催しました。報告書自体は、未成年ユーザーの安心なAI利用のための基本方針や今後の方向性を示したものですが、その話の中で特に印象に残ったのは、教育ならではのAI利用「目的」の話でした。

AIの社会における利用が進み、企業での導入も加速しています。その中でも効率化、省力化、自動化といった時間や費用の「削減」が目的になっているものが多くなっています。仕事に求められる要素としては、これは正解なのですが、教育にこの考え方をそのまま適用するのは危険と、早稲田大学 教育・総合科学学術院 大学院教育学研究科の田中博之教授は語ります。

教育で重要なことは、「自立して創造的に考えること」。Co-Creativeとして、AIと共に考え、ともに創造することこそが、教育の意味で目標となるはずです。

しかし、大人が子どものAI導入をガイドする時に、親や先生なども「大人の世界のルール」を教えがち。大人が効率化で使っているから、子供がレポートや作文の効率化を目指してしまうといった点が課題になっているそうです。

「パートナーではなく手下、手先みたいなAIを使う。そういう使い方だけを教えてしまうのは問題」と田中教授。教育現場での価値観として子供が自分自身で考える、自分の言葉で問いかけることがAI活用に必要であり、思考や表現のパートナーとしてのAIを目指してほしいと、OpenAIにも訴えていました。

早稲田大学 教育・総合科学学術院 大学院教育学研究科の田中博之教授とOpenAI Japan Head of Policy and Partnershipsの大久保和也氏

言われてみると、我々メディアも「大人の世界のルール」で思考していることが多いのかもしれません。それだけでないAIの側面をもっと意識していく必要がありそうです。

一方、これまでの日本の学校教育の弱さになっていた、文章構成のアドバイスやプレゼンテーションの技術などは、AIの活用で大きく伸ばしていけるとしています。田中教授は、「(いまの教育に)足りないのはAIリテラシーではなく、授業の構成力・設計力」と語っていました。必要なのは、「なんのためにAIを使うのか」という基本的な問いなのかもしれません。