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銀行の金利競争始まる? 金利0.55%でメイン口座化を推進するauじぶん銀行

ネット銀行を中心に「金利」への注目が高まりつつある。

きっかけは、2024年3月に日銀が2016年からのマイナス金利政策を転換し、金利を引き上げたこと。日銀による政策金利引き上げは、2007年以来17年ぶりとなったが、以降徐々に政策金利は引き上げられており、それに連動して銀行の預金金利も上がってきているという形だ。

この10年以上、銀行にお金を預けても金利は0.02%など「ほぼないのと同じ」状態だった。そのため銀行の利用者でも預金金利を意識することも少なく、積極的に預金する意義も薄いという状況だった。しかし、「金利ある世界」を迎えつつある2025年、徐々にその様相は変わってきており、ネット銀行を中心に金利を引き上げる動きが起きている。

その一社がauじぶん銀行だ。10月1日から「プレミアム金利優遇」を開始し、プレミアムユーザーなら無条件で円普通預金の金利を0.55%(税引前)とした。また「auマネ活プラン」など対象のau料金プラン契約による金利優遇を合わせると、合計年最大0.65%(税引前)の金利が適用される。

例えば500万円を1年間預け入れると、通常の年0.21%では利息は年間8,367円(税引後)だが、プレミアム金利優遇の場合は年0.55%では年間21,914円(同)。利用者としてはお金を「預けるだけ」で、大きな違いがでてくる。

auじぶん銀行を「使ってもらう」ための金利優遇

ただしauじぶん銀行の「プレミアム金利優遇」は、口座を持つ全ての人が対象となるわけではない。auじぶん銀行の顧客優待プログラム「じぶんプラス」の「プレミアムステージ」のユーザー限定の施策となる。

じぶんプラスは、給与や年金の受取、au PAY残高へのチャージ、スマホ決済など利用サービスの回数に応じて毎月決定されるほか、預金が1,000万円以上ある場合は、自動的にプレミアムステージになる。

つまり、auじぶん銀行を積極的に使う人、もしくは預金残高が多い人(1,000万円以上)であれば、金利優遇されるという枠組みになっている。

なぜこのような預金施策を行なうのか? auじぶん銀行の伊東宏之氏は、その主な目的を「メイン口座として使ってもらうこと」と説明する。

「ポイントは、『じぶんプラス』のプレミアムステージの方が対象ということです。当社をメインで使っていただけると金利が上がります。給与振込や口座引落など、生活口座として取引を行なうと、じぶんプラスのステージも無理なく上がるという形で設計しています。ステージが上がった結果として金利がつくため、お互いにWin-Winの関係を作れます」

auじぶん銀行の口座数は701万口座(25年9月末時点)だが、メインの口座ではなく、サブ口座的に使っている人も多い。金利優遇により、こうした口座開設済みの利用者のauじぶん銀行利用を活性化する。これが「プレミアム金利優遇」の狙いといえる。

また、auじぶん銀行の利用者のアクティブ率を向上することで、au/KDDIの「経済圏」の活性化も図れるとする。例えば、「auマネ活プラン」など対象のau料金プラン契約者にはさらなる金利優遇を行ない、合計年最大0.65%の金利が適用されることとなる。このように、KDDIグループの経済圏を活かし、「金利を中心に分かりやすくかつ生活口座としての価値を提供していきたい」とする。

金利優遇でステージ対象者は「ほぼ倍増」

では「プレミアム金利優遇」導入後の反応はどうなのだろうか?

プレミアム金利優遇は、8月に発表し、10月からスタートしたが、初月の10月の対象者は対前月比190%増と大きく伸びた。このうち1,000万円以上預金した人も同183%増加したという。

「金利」をきっかけとし、auじぶん銀行をアクティブに使う人が増えており、預金も大きく伸びているとのことで、反応は「想定以上」と語る。

「普通預金でも金利が付く」ことから、これまで金利に無関心だったauじぶん銀行利用者の注目を集め、ステージ獲得に動いた可能性が高いという。口座振替や給与振込の移行など、メイン口座利用も増えており、「メイン口座化の後押し」というプレミアム金利優遇の狙いは今のところうまく行っているようだ。

一方、金利優遇による「新規」の顧客獲得については「開始直後ということもあり、あまり大きな動きは見えていない」とのこと。ただし、低金利環境が長く続いたこともあり、金利が低い銀行に「預けっぱなし」の人はまだまだ多く、金利を意識している人も少数かもしれない。

auじぶん銀行では、今回のプレミアム金利優遇など預金施策の強化により、「auじぶん銀行は預金金利が高い」という認知を高めながら、利用拡大を図っていくという。

臼田勤哉