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“あくまでG-SHOCK” 指輪サイズ「G-SHOCK NANO」のこだわり

G-SHOCK NANO

カシオ計算機は、“指輪サイズのG-SHOCK”として「G-SHOCK NANO」(DWN-5600)を11月8日に発売する。価格は14,300円。2024年に発売され話題を集めた指輪型の「CASIO RING WATCH」(CRW-001)に続く小型の製品で、耐衝撃構造や20気圧防水、バンド形状についてもG-SHOCKを再現したのが特徴。

満を持して登場したこの指輪サイズのG-SHOCKについて、カシオ計算機 羽村技術センター 時計事業部 商品企画部の小島一泰氏に話を聞いた。

カシオ計算機 羽村技術センター 時計事業部 商品企画部の小島一泰氏

デザインもタフさもG-SHOCK

G-SHOCK NANOの特徴は、耐衝撃構造で20気圧防水という現代のG-SHOCKの基準を満たし、G-SHOCKを名乗れる仕様を実現したこと。DWN-5600という製品型番もG-SHOCKのシリーズを踏襲したものになっている。デザインは定番である5600シリーズをそのまま約1/10サイズに小さくしたもので、各部の比率も維持。“あくまでG-SHOCK”として仕様やデザインを貫いている。

G-SHOCK NANO
G-SHOCK DW-5600(左)とG-SHOCK NANO DWN-5600(右)

開発のスタートは2023年末で、設計・開発部隊からの提案で始まったという。企画当初は難しいと思われていた20気圧防水の実現にめどが立つと、開発が加速。先に発売されたCASIO RING WATCHの反響をみて開発を決定したのではなく、平行して進められていた形とのこと。

CASIO RING WATCH(左)とG-SHOCK NANO(右)

搭載されるモジュール(クオーツムーブメント)は基本的に「CASIO RING WATCH」と同じだが、表示パターンはG-SHOCKに近いレイアウトに変更。細かなところでは、G-SHOCKではコロン(:)が丸いデザインのため、ここもCASIO RING WATCHから変更されている。

液晶表示はレイアウトのほかコロンの形状など細かな違いも
カレンダー
ストップウォッチ

見た目だけでなく、耐衝撃構造も「G-SHOCKとまったく同じ」(小島氏)で、モジュールをケースに入れ、ウレタンでガードする構造を踏襲した。

G-SHOCKと同じ耐衝撃構造

防水性能の実現でカギになるボタンパーツのパッキンも約1/10サイズで実現。ベゼルとバンドを止める側面からのビスは、直径約0.8mmとかなり細くなったが構造を維持している。

耐久性に関する試験は、通常サイズのG-SHOCKと同じ試験をクリア。小さく軽量なため落下試験などでは有利な面もあったとしている。

ケースとバンドは両側からビスで固定する

難しかったのは防水性能を実現する上で重要なボタンパーツ部分の防水構造で、Wパッキンの構造や固定のための「Eリング」と呼ばれるパーツを、小型化して同じ性能を実現するのに苦労したとのこと。ビス止めの裏蓋も、防水のための「Oリング」によるシーリングを機能させるには精度の高いOリングパーツが必要で、製作のハードルが高かったという。

ビス止めの裏蓋も再現。従来と同じ手順で電池交換が可能になっている

風防ガラスの固定方法も新たに開発された。通常サイズのG-SHOCKで使うパッキン構造は採用できなかったため、接着技術を用いて高い防水性能を実現している。これは、両面テープのような技術を使ったCASIO RING WATCHの風防ガラスとも異なり、接着剤を縁にまわして接着する技術で、高精度に接着剤を塗布する必要があり、苦労したとのことだった。

ケースやバンドは塗装ではなく樹脂の成型色。ベゼル部分にある「PROTECTION」「G-SHOCK」の文字は当初、着色(流し込み塗装)をしない案もあったというが、再現度という観点でも着色アリの仕様が選ばれた。

指以外にも装着可能

G-SHOCK NANOは、指輪のように閉じているのではなく、腕時計を再現したバンドを搭載している。これもまた“あくまで1/10サイズのG-SHOCK”というコンセプトを反映したもの。尾錠のパーツも試験を経て特別な小型サイズで製作されている。

バンドを再現したことで、指のサイズに柔軟に対応できるほか、バッグのD環やリング状のパーツなどに後から取り付けることが可能。「いろんな場所に付けられるので、ユーザーの発想で使い方が広がれば」(小島氏)と、さまざまな場所で活用してほしいとしている。

今後、“スマートウォッチ化”するなど、モジュールの機能に発展はあるのだろうか? 「1/10サイズで開発したモジュールで分かったことは、今まで挑戦できていなかったことに挑戦できるということです。例えば従来の液晶部分は厚さが0.4mmでしたが、0.15mmまで薄型化できた。こうした部分を、新技術のスタート地点にできればいいですね」(小島氏)。

なお、G-SHOCK NANOは“あくまでG-SHOCK”かつ、レギュラーモデルのひとつという位置付け。限定生産ではなく、店頭を含め継続的に販売される予定になっている。

太田 亮三