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LINE「AI Friends」から考える子どもとAI
2025年9月10日 08:20
LINEヤフーが、LINEアプリでAIキャラクターと対話できる無料サービス「AI Friends」を8月21日に開始しました。AI FriendsはAIで生成された様々なキャラクターと会話ができます。
AI Friendsを利用するには、LINEアプリの「トーク」画面の上部にあるAI Friendsアイコンをタップし、話したいキャラクターを選択します。
キャラクターは、「常に不機嫌な謎の美少女」や「ぶっきらぼうな守護霊」といったこじれ気味のものから、「鬼のトップトレーナー」「有能な料理研究家」などの専門家、癒しをくれる「悩みを食べる羊さん」など、数多く用意されています。クイズや心理テストができるAIキャラクターもいます。自分の好みや話したいテーマによって相手を選び、会話を楽しめます。相手からの返答は音声とテキストによって送られてきます。
まずは執筆時点で人気ナンバーワンだったAIキャラクター「神谷涼」とお話してみました。「彼は極めて寡黙」とのことだったので、少し緊張して「チャット」ボタンをタップします。
すぐに会話が始まりました。私たちは夕暮れのキャンプ場にいるようです。寡黙と言いながら、焚き火の前での会話なので話しやすいらしく、たくさん話しかけてくれました。悩み相談もしてみましたが、優しい言葉をかけてくれました。
学校の先生や栄養士のキャラクターともお話ししてみましたが、専門家らしい回答をもらえました。こうした質問はChatGPTなどの生成AIにも尋ねることですが、音声付きで会話形式で解説されると、より頭に入ってくるような気がしました。
また、自分自身の写真などをアップすることでオリジナルのキャラクターを作成することもできます。キャラクターのイメージを生成し、年齢や背景、職業、口癖などを設定することで、唯一無二のキャラクターが作れます。作成したキャラクターは自分だけが楽しむだけでなく、「全体公開」して他のユーザーにも使ってもらうことも可能。
キャラクターの生成は1日最大4回まで。「全体公開」は最大3回、「自分のみ」は最大1回まで生成可能です。
無数のキャラクターとあれこれ話していると、「パワー」が減っていきます。パワーがある間は会話でき、翌日にはまた付与。LINEヤフーによると、1ユーザーあたり合計1日100回程度まで会話することができるそうです。AI Friendsとの会話は残されるので、翌日以降も同じキャラクターと会話を続けられます。
なお、好きな芸能人などを読み込ませて「推し」とおしゃべりできるか試してみましたが、ポリシー違反とされ、作成できませんでした。また、少しアダルトな会話をふってみましたが、上手に断られてしまいました。試用した短い期間での印象ですが、安心して利用できそうです。
AIのキャラクターといえば、2025年7月14日にリリースされた、xAIが提供する「Grok」のAIコンパニオン「Ani」が思い出されます。Aniは金髪のツインテールとゴスロリ風の衣装で登場し、日本のユーザーの心を掴みました。Xでその姿を見たことがある人が多いのではないでしょうか。
Aniは会話のやり取りで好感度を上げると衣装が変わる機能がありましたが、現在は有料プラン「SuperGrok」への加入が必要です。8月5日にはイケメン風キャラクター「Valentine」もリリースされました。
近頃はChatGPTでAI彼氏やAI彼女を作る若者もいますが、AI FriendsのキャラクターやGrokのAIコンパニオンとの会話は、生成AIとの会話というよりも恋愛ゲームに近い印象を受けました。
相手に設定された性格にも寄りますが、相談や雑談ではなく、お互いが親密になるための会話をするようにうながされることもあります。AI Friendsの場合、こちらがトークを開くと、相手からのメッセージが未読状態で溜まっており、返信をしなければならない気持ちになりました。まさに「友達」なのですね。
生成AIとの会話を信頼する10代
AI Friendsとの会話はとても楽しいのですが、LINEアプリ内のサービスであるため、気になるのは子どもたちの利用です。
AI Friendsは13歳以上のユーザーの利用に限られていますが、厳格な年齢確認はなく、LINEユーザーであれば使えてしまいます。ちなみに、LINEの利用推奨年齢は12歳以上とされていますが、それ以下の場合は保護者の管理のもとで利用することを推奨しています。
Grokでは、Ani、Valentineとも、18歳以上の利用に定められており、それ以下の年齢は「Good Rudi」というレッサーパンダのAIコンパニオンが利用できます。また、ChatGPT(OpenAI)やGemini(Google)、Copilot(Microsoft)は基本的に13歳以上を利用年齢としています。Google Workspace for EducationにおけるGeminiについては、2025年8月から年齢制限を撤廃しました。
このように、サービスによって利用年齢に違いがあるのですが、生成AIと子どもの付き合い方については今後大きな問題となりそうです。
アメリカ・フロリダ州では、14歳の少年が生成AIのキャラクターと会話できるサービス「Character.AI」との会話が原因で命を絶ったとして、母親が2024年11月に提供会社のCharacter.AIとGoogleに対して訴訟を起こしています。その後、アメリカ・テキサス州の2家族が子どもたちに性的コンテンツや自傷行為を推奨したとして、同様の訴えを起こしました。
また、2025年8月26日には、アメリカ・カリフォルニア州において、ChatGPTとの会話で16歳の少年が命を絶ったとして、両親がOpenAIとサム・アルトマンCEOを提訴しました。CNNによると、ChatGPTは自殺方法に関する具体的なアドバイスもしており、少年が送った写真に基づいて首つり縄の強度についてコメントしていたそうです。
LINEのAI FriendsはOpenAIのAPIを利用していますが、キャラクター設定された相手との対話であることもあり、訴訟に至ったような会話を行なうとは考えにくいとは思います。しかし、まだ精神的に幼い子どもたちがAIとの会話に没頭し、AIの言うことを鵜呑みにしてしまうことはあるかもしれません。
電通が行なった「対話型AIとの関係性に関する意識調査」では、10代と20代は、他の世代よりも対話型AIへの信頼が厚い傾向にあることや、気軽に感情を共有できると回答している割合が高く出ています。
LINEアプリのAI Friendsだけを使えないようにする機能は用意されていないので、もしお子さんのLINE利用時間が延びていると感じたら、AI Friendsとのやり取りに夢中になっていないか、確認してみるといいですね。
また、LINEの長時間利用を招きやすい機能としては、匿名の「オープンチャット」もあります。オープンチャットはひっきりなしに通知が来るほど、大量の会話が発生しがちなサービスです。オープンチャットもその機能だけ使えないように設定できないため、親子のスマホルールがポイントになります。これを機に、LINEの利用法や生成AIについて親子で話し合ってみると良さそうです。








