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非常食・トイレを実際に使ってわかったこと アルファ米はおいしい

9月1日は防災の日です。地震だけに留まらず、豪雨、台風、豪雪、噴火など、日本では多様な災害が発生しており、日常的な備えが重要です。

非常食や携帯トイレなどの備蓄を確保していても、実際の災害時に“使えるかどうか”という視点が抜け落ちていることがあります。筆者はこれまで、「備蓄はしているが使ったことがない」という状況でした。備蓄品は、用意しただけでは意味がありません。使い方を理解し、事前に体験しておくことで、初めて“使える備え”となります。

たとえば非常食は、賞味期限の確認だけでなく、実際に食べてみることが大切です。アルファ米であれば、必要な水の量や食べられるようになるまでの時間、冷たい状態でもおいしく食べられるかどうかを確認しておくと安心でしょう。ボリュームや味が自分に合っているかも、非常時の心理的ストレスを軽減する重要な要素になります。

また、携帯トイレも災害時には欠かせないアイテムですが、「どのように使うのか」「吸水量はどれくらいか」「においは気にならないか」といったことは、実際に使ってみないとわかりません。使用のハードルを下げるには、事前の確認が効果的です。

実際に食べてみました

そこで、自宅に備蓄しているアイリスオーヤマのアルファ米「白飯」と「きのこご飯」を実際に用意し、パッケージの表示に従って調理してみました。白飯は常温の水で、きのこご飯はお湯を注いで戻す方法を試しました。

使用する水の量は、どちらも1食あたり160ml程度。今回は非常時を想定し、水道水ではなくミネラルウォーターを使用しました。水で戻す場合は約60分、お湯では約15分で食べられる状態になります。封を開けるとスプーンが付属しており、そのまま袋の中で食べられる仕様でした。

スプーンが付属している。直接水を注ぐ

なお、熱湯で調理した際は蒸発によって水が一部失われたため、2食分を用意するのに実際に使った水量は、500mlのペットボトル1本分となりました。

常温で戻した白飯は、食感がやや硬めではあるものの、問題なく食べられる範囲でした。味に違和感はありませんが、温かくないご飯を食べ続けるのは精神的に負担に感じるかもしれません。

できあがったもの。常温ミネラルウォーターで60分かかる

白飯には味がついていないため、塩やふりかけ、缶詰などを組み合わせると食べやすさが増し、満足感も高まりました。常温でも十分に食べられることは確認できましたが、工夫が必要だと感じました。

一方、熱湯で戻した「きのこご飯」は、温かさに加え味つけもされているため、とてもおいしく感じられました。体が温まることで安心感も得られ、非常時において“食べること”の大切さを改めて実感する体験となりました。

きのこご飯。お湯で15分

アイリスオーヤマのアルファ米の場合、ご飯約1.7杯分(1杯150g換算)の内容量でした。成人男性にとってはやや物足りなさを感じる一方で、小食な人には十分な量とも言えます。

今回は2名での食事を想定し、アルファ米2食分に加えて、缶詰を3缶用意して組み合わせてみました。実際に食べてみると、缶詰3缶を加えることで満腹感が得られ、非常時の食事としては十分な内容だと感じられました。

缶詰があるだけで心強い

感じた課題は、アルファ米の備蓄量が思っていたより少なく、数日分の食事を想定すると明らかに不足しているということでした。缶詰も現状では種類・量ともに足りず、主食との組み合わせや栄養バランスを考えると、より計画的な備蓄が必要だと感じました。

さらに、調理や飲用に使う水についても、1食あたりで想像以上に消費することがわかり、備蓄水の量も見直す必要があると実感しました。食料と同様に、水も“あるつもり”では足りないという現実を再認識する結果となりました。

携帯トイレも試してみる

携帯トイレも実際に使用してみました。今回は自宅待機の状況を想定し、自宅のトイレに専用袋をセットした上で、付属の凝固剤を用いてテストを行ないました。

筆者が備蓄している携帯トイレはAmazonでは販売が終わっていた
トイレへのセットは非常に簡単

あわせて、凝固剤の吸水量についても検証を実施。紙コップに凝固剤を入れ、水を注ぎながら吸収の限界を確かめたところ、260ml以上はしっかりと吸水されました。紙コップでは途中で容量が足りなくなりましたが、凝固剤の反応を見る限りでは、500ml程度の吸水にも十分対応できる印象を受けました。

吸水力を試してみる
想像以上に吸水する。まだ余裕がありそうだった

課題も見つかりました。1つは、使用後の処理方法です。袋は密封できるものの、使用済みトイレをどこに保管しておくかは、自宅だと悩ましい問題です。臭いは比較的抑えられているものの、連日使うことを考えると、使用済み袋の保管場所も備えの一部として必要になります。

もうひとつは自宅のトイレが使用できないケースです。災害による損傷で便器が使えない場合、バケツや段ボール箱などを代用することになりますが、実際にそれで使えるのか、安全性や安定性はどうかといった点は、いずれ実際に試しておく必要があります。

見た目は簡易的でも、使う場所の確保や、座る姿勢の安定性、床の防水など、想定外の問題が出てくることもありえます。道具を備えるだけでなく、「どこで・どう使うか」を含めた具体的なシミュレーションが、防災対策として重要だと感じました。

防災備蓄を見直すだけでなく、実際に使って課題を見つけ改善を繰り返す。これが万が一の安心につながると思いました。

佐々木 翼