鈴木淳也のPay Attention

第288回

セルフレジは当たり前になった ファミマ新型POSが向き合う次の課題

ファミリーマートが9月から本格展開をスタートした新型POS

ファミリーマートは新型POSレジを9月から全国に約1万6,500店舗あるファミリーマートへの本格導入をスタートする。

全国展開開始前に直営店を対象に導入テストを行なっており、すでにご覧になったり触ったりされた方もいるかと思うが、8月末時点で約1,000台を先行導入済みで、その最大の特徴は「有人モード」と「セルフモード」を適宜1台で切り替えて使えるデュアルモードPOSという点にある。

現在、多くのファミリーマート店舗に設置されている従来型のPOSは、導入されたのが2016〜2017年にかけて。記事の後半で触れるが、同時期(2018年)にセルフ利用を想定してデュアルモードPOSを導入したローソンに比べるとやや時間が経過しての導入という印象がある。ファミリーマートでシステム本部 店舗システム部 次期店舗システムグループ マネジャーの宮脇沙予氏は、前回の導入経緯から最新モデルまでの経緯について次のように説明している。

宮脇氏:前回、10年前に(POSを)導入したときはまだセルフもそこまで世の中的にも浸透していない状態での入れ替えだったので、セルフ導入という構想も当時はあったのですが、そのときは『いったんは別の端末として2台構成でいこう』となりました。ファミリーマートでのセルフ導入開始は2018年からなので、ほぼ当時の新型POSの直後くらいになります。

それから10年経ってコロナ禍もあり、セルフが一般化し、スーパーでもどこでも見るようなものになりました。ファミリーマートでのセルフレジの利用率はコロナ禍以降伸長しており、現在は全体の約2割まで拡大しています。そのため新型POSでは一体化し、現状の対面とセルフを1台で使え、画面を切り替えて利用できるようにしました。

冒頭の写真が「有人モード」と「セルフモード」を切り替えて使うデュアルモードPOSで、こちらはセルフ専用の構成。キャッシュレス専用と自動釣り銭機付きの2種類がある

主な構成パターンは3種類、本部と加盟店での話し合いで調整

ファミリーマートの新型POSでは、冒頭からここまでに挙げた2枚の写真にある3つの構成(有人カウンターに設置されるデュアルモード端末、自動釣り銭機付きセルフレジ、キャッシュレス専用セルフレジ)が主軸となる。

宮脇氏によれば、どの店舗にどの構成をどれだけ配置するかは本部と加盟店の間での話し合いによるとのこと。現在でも店舗スペースの都合なのかセルフが配置されてなかったり、あるいは配置されていても稼働していない場面に出くわすことがあるのだが、この点について同氏は次のようにコメントしている。

宮脇:防犯面でセルフでの運用を気にされる方はいらっしゃるのですが、今回はどちらかといえばコンセプトの1つでもある“省力化”が中心です。

スタッフの人数をそんなに採用できない中で、今のスタッフで、決められた時間内でどのようにお店を活用していくかを考えたとき、セルフがないと運営がままならないという店舗もあり、実際に、セルフを採用されている店舗の方が多いという印象です。あくまで本部と加盟店での話し合いでの判断なので、一方的にセルフ化をというわけではありません

先ほども例に挙げたように、以前よりセルフ導入に積極的だったのはローソンだ。筆者の把握する限り、特にナチュラルローソンの店舗ではセルフ稼働率が非常に高く、店舗によっては店員が品出しなどの業務を中心に動いており、繁忙時間帯を除けばレジ周辺にスタッフがいないというケースも少なくない。

ファミリーマートとしてはセルフレジの今後の展開をどう考えているのか。

宮脇:ファミリーマートとしては、今回も寄り添い接客というところをコンセプトに入れており、セルフを『ただ置いておくだけ』でお客様に勝手に使ってくださいみたいなスタンスにはしません。必要に応じてスタッフも駆けつける。そのために今回『呼出ボタン』を付けているので、ボタンを押せばスタッフが持っている携帯端末の方に通知が行く形になっています。

アイドルタイムにずっとレジに張り付くわけではないのですが、品出しをやりながらでもレジに無関心ではないよというスタンスでおります。

セルフモードで利用できる「呼出ボタン」
ボタンを押すと気付いた店員がすぐにやってくる

そして今回、セルフ対応強化と並んで大きなトピックは自動釣り銭機の導入だ。ファミリーマートによれば、構成オプションとして前世代機でも2020年ごろから自動釣り銭機が選択できるようになっており、一部店舗でセルフ等に据え付けられているケースがある。

ライバル企業を見ていくと、大手3社では先行で導入したローソンがグローリー製のものを導入している。次いでセブン-イレブンが2019年の沖縄進出を機に富士電機製のものを導入し、2020年以降に全国展開している。

ファミリーマートは最後発とはなるが、宮脇氏によれば加盟店側からの要望は当時からあったとのことで、個別対応で構成オプションに加えていたものの、一斉展開を行なった他社と比べるとごく一部に留まり、ほとんどの店舗では未導入となっていた。今回のタイミングで本格導入となるだろう。

筆者は会計時に他の客がどのように決済を進めているかよく観察しているが、特にセルフレジの操作に慣れていない高齢者や外国旅行者などは自動釣り銭機やポイントプログラムの提示、決済手段の選択場面で止まってしまうことが多い。自動釣り銭機については紙幣の挿入方向に戸惑ったり、複数枚投入できることを知らずに1枚1枚千円札を投入していたりと、なかなかにまごつく。

ファミリーマートが導入した自動釣り銭機の場合、紙幣や硬貨投入口は買い物客側を向いているため、会計作業は必ず買い物客が行なわなければいけない。ゆえに現金払い客がレジにやってくることで、先ほど挙げたような戸惑う例が少なからず出てくるだろう。

宮脇氏によれば、こうした場合でも適宜スタッフがカウンター内から客側に回り込んで動作や現金投入の手伝いを行なったりすることも想定しており、先ほどの「寄り添い接客」を実施するというスタンスだ。

ファミリーマートが導入した自動釣り銭機。左側にGloryのロゴが見える

この自動釣り銭機だが、コンビニ各社ごとに導入スタンスが微妙に異なっていて興味深い。先行導入したローソンでは、一部店舗でターンテーブル式の機構を採用しており、ピークタイムとオフタイムで紙幣や硬貨の投入方向を買い物客側とスタッフ側で切り替えられるようになっている。

以下は先日オープンした「Lミニマート 小平仲町店」での動画だが、同様の機構はNCRなどの海外メーカーも実際に採用しており、セルフ需要の高まりに合わせて別々の機械を導入するのではなく、時間に合わせて切り替えられるよう提案していたりする。

「Lミニマート 小平仲町店」に導入されたターンテーブル式のPOS。なお、通常のローソン店舗とLミニマート(ローソンストア100)で使用しているPOSは同じ仕様

また、ファミリーマートやローソンでは通常のレジカウンターにそのまま自動釣り銭機とPOS本体を載せる構造を採用しており、その場合は通常のテーブルへの直設置より高くなる。

宮脇氏によれば、タッチパネルの位置が高くなることで操作に支障が出ないよう、主要操作ボタンのほとんどを下側に配置する工夫をしており、なるべく不自由のないよう考慮したという。一方でセブン-イレブンではカウンターテーブル内に自動釣り銭機を埋め込めるよう専用の“什器”を用意して買い物客に圧迫感を与えないよう工夫していたりと、追加設置コストの兼ね合いがあるとはいえ、いろいろ違いが垣間見えて興味深い。

言語対応とセルフ利用時のUX改善

速報レポートでも触れられているように、今回の新型POSでも基本的な商品登録から決済までのフローはそのままで変化していない。

「慣れているフローをあまり大きく変えてしまうと入れ替えたときのギャップが大きく、あくまでボタン配置とかを工夫する形で対応している」(宮脇氏)ということで、あえて違和感を感じないものにしているようだ。とはいえ、画面が横置きから縦置きになりサイズも変更されているので、そこも含めての調整を行なったようだ。

気になるのは言語設定の部分で、買い物客側と店員側ともに「日本語」「ひらがな」「英語」が選択できるようになっている。「ひらがな」モードというのが珍しいのと、英語以外の言語、例えば「中国語」などは利用客の多さを考えればあってもおかしくない選択肢だと思われるので、このあたりはどうなのか。

宮脇:『ひらがな』は日本語はできるけど漢字は読めないという方も結構いらっしゃると思うので取り入れました。これは買い物客側と店員側の両方ともです。あとは外国の方が使われることを想定したときに『英語』は必要だよねというところで選んでいます。もし将来的に要望があればアップデートで調整できますので、適宜対応できればと思います。

基本的には加盟店などからの意見を集約して開発や調整を行なっているようだが、今回の新型POS導入にあたり一番要望があったのが「エコ割」への対応だという。食品ロス対策で時間が経過した商品を割引販売するシールだが、シール券面にあるように従来のセルフレジでは利用できない。

結局、途中でバーコードが読めずに気付いた買い物客が有人レジに並び直すという二度手間なので、そのあたりも要望を受けての改善だ。

このほか、自動釣り銭機を導入したことでセルフでの電子マネーチャージにも対応しており、POSレジ単体でできることは増えている。

自動釣り銭機導入によりセルフレジでの電子マネーチャージにも対応

決済端末はIngenico製に

今回の新型POSでは決済端末が既存店舗の「Pax Q28」からIngenico製のものになっている(形状からAXIUM RX5000系と思われる)。2016〜2017年に展開が開始された前世代からPOS本体は東芝テック製のものだが、キャッシュレス決済端末側はNECの「マルチサービスゲートウェイ」にNEC提供端末の組み合わせという点で変更はない。PaxとIngenicoともにNECが日本国内代理店として決済端末の提供を行なっており、今回はIngenico製のものが採用された形だ。

前世代では決済端末に関して紆余曲折があり、最初にPOSと一緒に導入されたのはPax製端末ではなく、JR東日本メカトロニクス(JREM)とNECが共同開発したFeliCa系電子マネー対応決済端末だった。

ただ、この構成では1つ問題があり、2018年6月施行の「改正割賦販売法」により2020年3月末をめどに加盟店の決済端末100% IC対応が定められ、ICカード対応と合わせ基本的にはPIN入力必須とされたため、既存の構成ではIC対応カードリーダとPINパッドを外付けするしか対応方法がなかったといえる。そのため、IC対応ができて、かつPINパッドを備えた「Pax Q28」への入れ替えが2019年に行なわれた。Q28はクレジットカードのいわゆる“タッチ決済”に対応した端末だが、この時点ではまだこの機能は解放されておらず、2021年より主要ブランドでの“タッチ決済”が可能になった。

Ingenico製端末での決済
ファミリーマートが前世代POS導入時に採用していたFeliCa電子マネー用決済端末

ただこのPax端末だが、筆者的にはかなり苦い思い出がある。通常のカードタイプのクレジットカードであれば問題ないが、スマートフォン内の電子マネーやクレジットカードで決済しようと思った場合、NFCアンテナの位置によっては画面まで近付けることができず、決済を断念したことが何度かある。

ファミリーマートの有人レジの場合は特に問題ないのだが、セルフレジなどでは狭い場所に無理矢理設置されたケースも少なくなく、決済端末を手前に引っ張ってこない限りはスマートフォンを“タッチ”できないという場面に出くわしてセルフ利用を回避していた。Pax Q28はNFC読み取りを液晶画面で行なうのだが、ICカード挿入口が出っ張っているために画面が奥まった位置にあるのが原因だからだ。

スマートフォンのNFCアンテナが端末中心部にある場合、本体を横にすればPax Q28で“タッチ決済”ができるのだが、スマートフォンを横にして近付けられないほど狭い場所に固定設置されるとどうしようもない

なお、新型POSで決済方法を選択してから実際に決済を行ない、レシートが出てくるまでのレスポンスタイムが遅いというクレームがあったという。実際に筆者もいくつか試して前世代機に比べて若干引っかかりがあるのが気になった。ファミリーマート側でもそれは認識しており、宮脇氏によれば改善のためのチューニングを行なっている段階だという。

今回の取材では短期間に決済端末を総入れ替えすることになった経緯を聞くことはできなかったが、将来的に新技術が登場したときに、次の10年後の更新サイクルを待たずに対応を進めなければいけないというケースも当然出てくるだろう。

典型的なのはUWBを使った“タッチレス”決済だ。JCBが提案していた仕組みではUWBのみならず、確実性を上げるための手段として顔認証を1つのトリガーと捉えていたりしたが、今回の新型POSでは買い物客側の画面にフロントカメラがあり、こうした用途にも活用できそうだ。ファミリーマートによれば現状では特に何も利用しておらず、将来的な機能拡張に向けて活用を検討中ということ。次のステップとしてどのような拡張が行なわれるのかも楽しみな部分だといえる。

買い物客側の画面上部に未使用のカメラがある

国内SIerでシステムエンジニアとして勤務後、1997年よりアスキー(現KADOKAWA)で雑誌編集、2000年にプロフェッショナル向けIT情報サイト「@IT」の立ち上げに参画。渡米を機に2002年からフリーランスとしてサンフランシスコからシリコンバレーのIT情報発信を行なう。2011年以降は、取材分野を「NFCとモバイル決済」とし、リテール向けソリューションや公共インフラ、Fintechなどをテーマに取材活動を続けている。Twitter(@j17sf)