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ソフトバンク、HAPSで「3次元ネットワーク」へ スマホ直接通信で下り36Mbps

ソフトバンクは、8月に実施した成層圏通信プラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」の飛行・通信試験に関する説明会を開催した。試験は日本上空で行なわれ、スマートフォン向け通信やドローン通信、エッジコンピューティングなどを検証。2027年からHAPSの商用運用開始を目指す。

商用運用では、まず災害時の通信エリア復旧を主な用途として想定。HAPSを日本上空に数カ月間滞空させ、地震や豪雨などで地上の基地局が利用できなくなった場合に、被災地域へ移動して上空から通信を提供する。

今回使用したHAPSは、8月9日に米ニューメキシコ州ロズウェルを出発。約13日間、約1万5,000kmを飛行して日本へ到達した。その後、高知県沖の高度約17kmで通信試験を実施し、米国へ帰還。総飛行期間は30日間となった。

使用したLTA型HAPSは、ヘリウムガスの浮力で機体を浮かせ、太陽光発電とバッテリーでモーターを駆動する。飛行機のように揚力を得るために飛び続ける必要がなく、長期間の滞空に適している。

スマホ直接通信で下り最大36Mbps

通信試験では、HAPSを地上ゲートウェイ経由でソフトバンクの商用コアネットワークに接続し、一般的なスマートフォンとHAPS間の通信を確認した。

実測値は下り最大約36Mbps、上り4.8Mbps。音声通話やデータ通信のほか、緊急機関への通話、緊急地震速報などを想定した一斉同報通信も検証した。

単に通信できることを確認するだけでなく、100回発信して100回通話を成立させる試験も実施。走行しながら通信可能なエリアを確認する試験や、既存基地局への干渉影響も検証している。

HAPS経由でドローンを制御

将来の利用を見据え、ドローンとの連携も検証した。ソフトバンクが開発するクラウド型GCS(Ground Control Station)とHAPSの通信回線を組み合わせ、ドローンの飛行制御、位置情報の送信、映像伝送が可能であることを確認した。

災害時には、HAPSで携帯電話の通信エリアを復旧するとともに、ドローンで被災状況を撮影したり、物資を輸送したりするといった活用を想定する。

HAPS内にコアネットワーク、遅延を約40%削減

HAPS上にコンピュータを搭載したエッジコンピューティングの試験も実施した。一般的なクラウド上のサーバーと通信する場合と比較し、通信遅延を約40%削減できたという。HAPSにコンピュータを載せるには重量と消費電力が課題になるが、今回使用した機体は搭載重量や電力に比較的余裕があり、こうした構成を実現できた。

将来的には、自動運転やロボットなどの「フィジカルAI」、災害・防災映像のリアルタイム解析などへの応用を見込む。

また今回の試験では、基地局機能に加えてコアネットワーク機能もHAPS側に搭載。地上の商用コアネットワークに依存せず、HAPS単体で通信ネットワークを構成できるスタンドアロン型の構成も実証した。

地上―HAPS―衛星を光無線で接続

ソフトバンクが最終的に目指すのは、地上ネットワーク、HAPS、衛星を組み合わせた「3次元ネットワーク」。

今回の飛行では、光無線通信の実現に向けた技術実証として、地上からレーザーを照射し、HAPSに搭載した数cm程度の反射鏡(リフレクター)を追尾するレーザー測距を実施した。地上から数十km先にある小型の反射鏡を捉え、HAPSを追従できることを確認した。

リフレクター(実物大)

ソフトバンクは、成層圏を移動するHAPSを地上からレーザーで追尾した実証を「世界初」としている。将来の光無線通信では、まず10Gbps程度以上の通信速度を想定する。

2026年中には光無線通信装置を衛星に搭載して打ち上げ、衛星との通信を検証。2027年にはHAPSにも光無線通信装置を搭載し、「衛星―HAPS―地上」を接続する実証へ進む計画だ。

2027年に商用運用、数カ月間の日本滞空へ

2027年の商用運用では、米国からHAPSを飛行させ、1回の飛行で日本上空に数カ月間滞空させる計画。災害が発生すれば対象地域へ移動し、通信エリアを空から復旧する。2030年ごろまでに日本全国で年間365日運用できる状態を目指す。災害時以外の用途についても各省庁から引き合いがあるとし、今後、さまざまなユースケースや事業性を検討していく。

機体を発着・格納する施設については、商用運用開始当初は米国の拠点を利用する。ソフトバンクはその約2年後をめどに日本国内にまず1カ所の格納庫を設け、日本からの打ち上げと回収を可能にする構想も示した。

大規模災害への対応には複数機が必要になるとしており、技術面での確信を得ながら機数を増やす方針。