レビュー

最新のテレビでも新型Chromecastはアリか? 買って試してみた

Chromecast with Google TV

新しい「Chromecast with Google TV」が11月25日に発売された。筆者は引っ越しに伴って55インチの東芝製4K液晶テレビ「REGZA 55M540X」を購入し、ネット動画の視聴機能を多用しているところだが、さらに快適・便利になるのではという期待も込めて購入した。Google Storeで注文し、7,600円(税込)だった。

なお、基本的な使用感や、競合製品「Fire TV Stick」との比較については、すでにレビュー記事が掲載されているので、そちらも参照していただきたい。また、筆者は「Amazon Prime」を契約していない点には留意していただきたい。本稿では、東芝の「REGZA 55M540X」と組み合わせた使用感や、筆者宅(テレビは仕事部屋に設置)での使い勝手といった部分にフォーカスしている。

リモコンが付属する

新ChromecastはYouTubeもネトフリも使いやすい。リモコンがイイ

セットトップボックスになったChromecast、やっぱり便利なリモコン

「Chromecast with Google TV」は、従来モデルからコンセプトを大きく変えた製品だ。これまでのChromecastは、スマートフォンと組み合わせて、スマートフォンから映像を受信あるいは指示されて動画などのコンテンツをテレビに表示するという製品だった。利用のきっかけはあくまでスマートフォンだったわけだ。

しかし新しいChromecast with Google TVは、有り体に言うとセットトップボックスで、4K60p、HDRに対応し、リモコンも付属。初期設定や管理にはスマホアプリ「Google Home」を使うものの、テレビのHDMIに接続されていれば、あとはリモコンで操作して動画サービスや番組を選択して再生するだけだ。

パッケージ内容
同梱のACアダプターの出力は5V 1.5Aだ
リモコンは単4形乾電池2本を使用。Googleブランドの白い電池が同梱されている

HDMI-CECもサポートされているので、例えばChromecastのリモコンのYouTubeボタンを押せば、テレビが消えていても自動でテレビの電源が入り、HDMI入力が切り換わって、ChromecastのYouTubeを表示する。

スタートガイド
リモコンの説明

ホームボタンやNetflixボタンも同様だ。加えてリモコンには赤外線も搭載されており、テレビのボリュームのアップ・ダウン、ミュートの操作も可能。初期設定時にはテレビのメーカーやブランドを選択するが、筆者宅のレグザの場合は、メーカーリストに名前はなかったが、ブランドリストにあった「Toshiba」を選択した。

なおChromecastのリモコンには、テレビの電源のオン・オフのボタンと、入力切換のボタンも用意されているが、これらは初期設定ではHDMI-CEC経由で動作する。この場合、入力切換はワンテンポ遅れた反応でちょっと癖がある。

また電源ボタンのオンを押すと、電源が入るだけでなく、Chromecastを接続しているHDMIに入力を切り換える。「Chromecastを見るためにテレビの電源を入れる」ボタンということだろう。リモコンの設定では、電源ボタン、入力切換ボタンのどちらも赤外線に変更が可能で、赤外線にすれば入力切替もテレビのリモコンと同様にサクサクと動作する。

Bluetoothで接続されるChromecastのリモコン
赤外線でテレビのボリューム操作も可能
リモコンの設定時、レグザの場合は「ブランド」で「Toshiba」を選択
初期設定時には動作チェックも行なわれる
設定画面ではリモコンのファームウェアのバージョンアップも

Chromecastのリモコンにはマイクと「Google アシスタント」ボタンが搭載されており、「Google TV」内での番組の検索のほか、天気や近所の飲食店・施設を探すといった「Google アシスタント」の機能も利用できる。特に番組の音声検索は、キーボードがないテレビでは検索が簡単になり便利だ。

Chromecastのリモコンの方向キーや決定ボタンの感触は一般的なもので、不満なく使える。ネット動画を観るためにテレビを使っていると、テレビのリモコンの方向キーや決定ボタン、戻るボタンなどを多用するため、やがてラバーボタンの表面の印字が剥げるだろうと予想しているのだが、Chromecastのリモコンは当然ながらこうしたネット動画のための操作をすべて行なえるし、ボタンはラバーではないので表面がすぐに消耗することもなさそうだ。「Chromecast with Google TV」を使い始めてからは、テレビのリモコンの出番は激減している。

テレビよりサクサクで快適

筆者は日頃、映像サービスではYouTube(YouTube Premium)、Netflix(プレミアム)、DAZN、dアニメストアの4つのサービスを契約し利用している。これらのうちdアニメストア以外は、「REGZA 55M540X」に搭載されているネット動画の視聴機能でも観ることができる。

YouTube、Netflix、DAZNの3つは、レグザ内蔵のアプリでもChromecastのアプリでもUIはほぼ同じで、アプリの使い勝手という意味ではあまり差がない。

そうなるとChromecastを導入した意味が無いようだが、実はそうでもない。処理速度の面では、Android 10をベースにしたOSということもあってか、「Chromecast with Google TV」の動作は軽快で、2020年4月発売の現行モデル(12月時点)である「REGZA 55M540X」よりも快適に利用できる。

それでもYouTubeとNetflixは設計が洗練されているのか、レグザでもUIは軽快に動いており、両者で使用感に大きな違いはない。なおYouTubeのアプリについては、レグザではなぜかアプリ内の番組配信時刻がUTCで表示され、JST(日本標準時)に修正できなかったが、Chromecastのアプリでは問題なくJSTで表示される。

アプリの動作について、顕著に差が出るのはDAZNだ。レグザのネット動画視聴機能でDAZNを表示すると、その時やっているライブ配信をとりあえず読み込むというDAZNの微妙な仕様のホーム画面の表示に時間がかかり、これに影響されてか各番組のサムネイルの表示も遅れ、大方が読み込まれるまでカーソル操作もまともに反応しない。

だが、Chromecast with Google TVのDAZNアプリなら、アプリ起動後すぐにカーソルがサクサク動き、操作できる。UI自体は同じなので、単純に処理性能や効率の面で、東芝のテレビのシステムよりAndroid直系のOSを搭載するChromecastが勝る形だろう。端末側の処理負荷が高いと思われるDAZNのUIでは、顕著に差が出てしまう格好だ。

また、レグザではネット動画のアプリ間で行ったり来たりを繰り返すと、メモリ不足でアプリが強制終了してしまう場合があったが、Chromecast with Google TVではさすがにそうした挙動は見られない。

dアニメストアは、筆者宅ではPCのWebブラウザで利用するのみだったので、Chromecast with Google TVのアプリとして利用できるようになった点は素直に嬉しい。これにより、レグザの大画面で観たい映像サービスがすべてChromecastに集約できた形になるからだ。

このほか、今年はDAZNが配信を取りやめてしまった欧州サッカーのチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグを見られるUEFAのアプリ、「UEFA.tv」もChromecastでインストールしている。

「Chromecast with Google TV」のホーム画面
アプリをインストール可能
dアニメストア、DAZN、UEFA.tvもインストール。観たいサービスがすべて揃った

ただ一方で、「REGZA 55M540X」のネット動画視聴機能にメリットが無いわけではない。

「REGZA 55M540X」の「映像設定」では、明るさや色、フレーム補間など詳細な設定を行なえるが、この設定は各外部入力だけでなく、ネット動画についてはアプリそれぞれで異なる設定を保存できる。例えばNetflixは明るさを控えめにしてフレーム補間をオフにし、DAZNは明るくフレーム補間をオンにしてスポーツをなめらかな映像で観る、といったことが可能だ(55M540Xでは最大60fpsだが)。Chromecast with Google TVを使う場合、レグザ側からは1種類のHDMI機器として扱われるため、こうした根本的な部分の映像設定をアプリごとに使い分けることはできない。

サウンド設定は環境に合わせて確認

Chromecast with Google TVのシステム自体の使い勝手にも触れておきたい。

まず設定関連だが、4Kの「REGZA 55M540X」の場合、Chromecast側の映像関連の設定はデフォルトで問題ないだろう。「ディスプレイの詳細設定」は最大の「4k 60Hz」だ。この60Hzはディスプレイの表示に関する仕様・設定で、再生する映像コンテンツがフレーム補間された60fpsのヌルヌル映像になるという意味ではない。コンテンツがオリジナルのフレーム数相当で再生されるかどうかはアプリのポリシーによるようだ。Chromecastの設定として「4k 24Hz」なども選択できるが、こうするとホーム画面を含めたすべての表示が常時24Hzになり、少し見づらいと感じる。

音については「Surround sound」がデフォルトでオンになっていたが、これはオフにした。筆者宅は、レグザの音をデジタル出力(光ケーブル)でDACに接続、2chのパワードモニタースピーカーで再生するというシンプルなステレオ再生の環境だ。

Surround soundがオンになっていると、例えばNetflixの映画などでは、各コンテンツの音声メニューに5.1chの音声が追加され(用意されている場合)、これがデフォルトで選ばれてしまい、いちいち変更しない限り、5.1chを2chにダウンミックスしていないスカスカの音が再生されてしまう。「Surround sound」をオフにすると、Netflixなどでは音声メニューから5.1chが消え、デフォルトが2chになる。

音声は2chの再生環境なので「Surround sound」はオフにした

Chromecast with Google TVをテレビに接続した際、機器名称が「?????」などとなってしまう場合があるが、これは、スマートフォンのアプリ「Google Home」で行なう初期設定で、Chromecastに日本語の名称を付けていた場合に起こる。半角の英数字に変更すれば、テレビの入力切換の画面でも英数字で付けた名前が表示されるようになる。

スマートフォンのアプリ「Google Home」などで名称を付け直せば「???」でなくなる

横串検索は「契約の入り口」、おすすめを消す「アプリ専用モード」も

セットトップボックス型になったことで新たに搭載されたOS「Google TV」は、階層構造を理解しておくと小さな疑問も解消しやすい。「Chromecast with Google TV」において「Google TV」のシステムは最上位に位置しており、その内部にYouTubeやNetflixなどの各アプリがある。

例えばホーム画面に表示されるコンテンツを選ぶと出てくる「観たいものリスト」機能は、WebブラウザのGoogle検索の結果の画面や、「Google TV」上に用意されている機能で、Netflixのアプリの中から利用できるわけではなく、Netflixの「マイリスト」と連携するわけでもない。YouTubeのコンテンツについては、そもそも「Google TV」においては「観たいものリスト」機能の対象外のようだ。

一方、サブスクリプション型の各サービスのうち、アプリがプリインストールされている「ABEMA」「Prime Video」「dTV」「Hulu」「Netflix」「U-NEXT」については、視聴内容がGoogleアカウントと紐付けられ、「Google TV」のホーム画面の「おすすめ」に反映されるといった連携が行なわれる。サービスを契約していなくても連携はオンにでき、設定で連携を個別にオフにすることも可能だ。

ホーム画面でデフォルトで選択されている「おすすめ」タブは、このサービス連携が適用される画面。契約しているのがNetflixだけでも、その視聴履歴に基づいて、Hulu、U-NEXTといったほかのサービスで配信されているコンテンツも、おすすめとして表示される。

一方で、設定でサービス連携を個別にオフにし、契約しているNetflixだけオンにしておくと、おすすめされる動画のほとんどはNetflixになる。契約しているサービスの中でしか観ないという場合はこういう使い方もアリだろう。「映画」「番組」(テレビドラマやテレビアニメ)のタブは、各サービスのコンテンツがまんべんなく表示されている印象だ。

「おすすめ」タブはサービス連携の設定によって内容が変わる
この6つのサービスがGoogle アカウントと連携できる。連携をオンにすれば、契約していなくてもおすすめに反映される

ホーム画面での検索の結果に反映されるコンテンツも、アプリがプリインストールされている6つのサービスと、Googleが直接提供している映像コンテンツに限られるようだ。Googleと各サービスの間で、どのようなコンテンツを配信しているのかというデータベースの共有が行なわれ、検索結果もそれに依存しているからだ。

例えば筆者は、「dアニメストア」のアプリを追加でインストールしたが、「Google TV」のおすすめタブや検索結果には、「dアニメストア」で配信されているコンテンツは一切出てこない。

DAZNも同じで、「Google TV」のホーム画面で「名古屋グランパス」と検索してもYouTubeのコンテンツしか出てこず、DAZNで配信している試合の番組は出てこない。

同様に、視聴途中のコンテンツは「おすすめ」タブの中の「続きを見る」という欄に表示されるが、これも前述の6つのサービスに限られるようで、「dアニメストア」で視聴途中のコンテンツは「続きを見る」に表示されない。サービスが連携している6つのサービス以外は、ホーム画面では蚊帳の外になっているのは少し残念だ。

もっとも、おすすめ機能の類は、各アプリの中で提供されているし、検索機能もしかり。Chromecastのリモコンには音声検索に対応したマイクが搭載されており、簡単に検索できるのもありがたい(Netflixは、アプリの中だと音声検索が用意されていないが)。

おすすめ機能や検索機能は、もともと各アプリの中で用意されている。アプリがサポートしていればリモコンで音声検索も利用できる

俯瞰してみると、「Google TV」には、検索結果やおすすめなどから作品を発見してもらい、観たいものリストで忘れないようにつなぎとめ、Google アカウントと紐付け可能なサブスクリプションサービスへ誘導する、というコンセプトがあるように思われる。サービスが契約され、視聴傾向がGoogle アカウントと紐付けば、Googleにとってもメリットのある内容になる。「Google TV」のホーム画面は、日々の視聴のための入り口というより、発見と契約のための入り口という意味合いが強いと考えると、一連の振る舞いが分かりやすいかもしれない。

おすすめされたコンテンツが気になれば迷わずサービスを契約するという人には「Google TV」のホーム画面の機能は有用だし、気になっていた作品を検索すれば「この作品はU-NEXTなら配信してるのか……」といった発見もある(6つのサービス内に限られるが)。2つ以上契約しているなら、前述のようにホーム画面のおすすめ機能が各サービスを横断するため、「Google TV」ならではのメリットが出てくる。一方、サブスクの契約を絞りこみ、例えば「契約しているNetflixで配信されるなら観るけど、そうじゃないなら我慢する」というタイプの人には、「Google TV」のホーム画面の機能は余分に感じられるかもしれない。6つのサービスのうち、いくつ契約しているかでかなり印象が変わってくるだろう。

ちなみに、これらの「Google TV」ならではの機能をすべてオフにする「アプリ専用モード」も用意されている。

このモードをオンにすると、インストールされているアプリが画面に並ぶだけになり、ホーム画面の「おすすめ」や「映画」「番組」といった各タブ、「観たいものリスト」機能、さらにはホーム画面での検索機能もオフになり、表示されなくなる。リモコンの音声検索ボタン(Google アシスタントボタン)も機能しなくなるが、各アプリの中の検索画面なら、リモコンのマイクを使った音声検索機能は変わらず利用できる。本製品の存在意義が薄れてしまうモードだが、各サービスを横断したおすすめなどいらない、という人はこのモードでもよさそうだ。

禁断の? アプリ専用モード
オンにすると、注意喚起のようなメッセージ
アプリ専用モードのホーム画面。上下スクロールはなくなり、アプリが並ぶだけになる。なお背景には、視聴履歴とは関係なく、6つのサービスの中の人気コンテンツが表示される

ネット動画にどっぷりな人は検討の価値アリ

Chromecast with Google TVを買って最も恩恵を感じられる人は、数年前の大型液晶テレビを持っている人ではないだろうか。テレビの処理性能に影響されることなく最新のネット動画環境を加えられるという、まさに最新のセットトップボックスとして機能し、その性能も申し分ない。

また、見逃せないのはリモコンの存在で、ボタン一発で起動するのは楽だし、コンパクトで、方向キーなども操作しやすい。筆者のようにネット動画がメインになっていると、前述のようにテレビのリモコンの出番は激減してしまうほどだ。

筆者宅では、発売から半年以上経っているとはいえ現行モデルである「REGZA 55M540X」と組み合わせるとあって、Chromecast with Google TVの機能のほとんどは“ダブり”で、意味がないかもしれないという心配もあった。

だが蓋を開けてみると、筆者宅のレグザでは重かったDAZNのUIがサクサク動いたこと、レグザでは用意されていないdアニメストアのアプリもインストールできたこと、ついでにUEFA.tvのアプリもインストールできたとあって、最終的にはかなり満足している。

Google TVのホーム画面についてはもうしばらく使ってみるつもりだが、気に入らなければ「アプリ専用モード」もあるので安心だ。今使っているテレビのネット動画視聴機能に不満があるなら、「Chromecast with Google TV」は検討する価値があると思う。

太田 亮三