レビュー

新ChromecastはYouTubeもネトフリも使いやすい。リモコンがイイ

Googleの「Chromecast with Google TV」が11月25日から発売開始されました。テレビとHDMIで接続し、大画面でYouTubeやNetflixなどの動画を楽しめるデバイスです。似たような製品としてはAmazonのFire TVシリーズが人気で、デファクトスタンダードとも言えます。

Chromecastとしては第3世代ですが、これまではスマホで選んだコンテンツをテレビ(Chromecast)に“キャスト”(出力)するという操作になっていました。つまり操作を“スマホ”で行なうのが原則でしたが、新しいChromecast with Google TVでは、スマホも使えますが、基本的に“リモコン”で操作する形になりました。Fire TVシリーズは以前からリモコン中心だったので、Fire TVに操作系を揃えたとも言えそうです。

Fire TV Stick(税込4,980円の"2K")とChromecast with Google TV

価格は7,600円(税込)。4K/HDR対応で音声操作などスペック的に競合する「Fire TV 4K」が6,980円(税込)なのでほぼ同価格です。筆者は普段Fire TV Cube(14,980円/税込)を使っていますが、今回はFire TVとの違いを意識しながら、Chromecast with Google TVをテストしました。

短時間のテストですが、ざっくりとした結論は、YouTubeの利用頻度が高い人は「Chromecast」がおすすめ。PrimeVideoが中心で、映画やドラマをこだわって忠実に見たい人にとっては「Fire TV Stick」がおすすめですが、Chromecastには新製品ならではの魅力的な機能が多数用意されています。そのあたりを細かく紹介します。

パッケージ

ついにChromecastにリモコン

同梱品はChromecast本体とリモコン、ACアダプタとUSB Type-Cケーブルなど。設置は電源につないでテレビのHDMIにChromecastを挿すだけです。なお、テレビのUSB端子からの電源供給を試しましたが、ちゃんとACアダプタにつながないと動作しません。本体の外形寸法は162×61×12.5mm、重量は55g。

同梱品
Chromecast本体
テレビ背面に設置

リモコンは、最上部にカーソールキーと決定ボタンを備えるほか、戻る、Google アシスタント、ホーム、ミュート、YouTube、Netflix、テレビ電源、テレビ入力切替ボタンを装備。右側面にはボリュームボタン(上/下)も備えています。電池は単4×2本。使いやすいサイズのリモコンです。

リモコン

テレビの電源を入れると、画面上にQRコードが表示され、スマホのカメラで読み取った後「Google Home」アプリで設定が開始されます。ソフトウェアのアップデートが行なわれるほか、画面に従って操作するだけで、Google Nest HubなどのGoogleデバイスに紐付いた設定(Wi-Fiのほか、筆者の場合YouTubeアカウトや、Netflix、Spotifyなど)が自動的に完了します。

特徴的なのがテレビとリモコンの設定。テレビのメーカーを選び、電源と音量ボタンの動作確認を行なうだけで、Chromecastのリモコンがテレビのリモコンコードを学習します。自宅のテレビは、東芝のREGZA「55X920」ですが、メーカーを選び、電源のON/OFF確認し、音量ボタンの設定を2回、入力切替を1回確認しただけで、リモコン設定が完了しました。これはなかなか便利です。

Fire TVも電源とボリュームの操作はできますが、入力切替(放送やHDMI入力などの切替)はできなかったので、ここはChromecastのアドバンテージといえます。

Chromecast with Google TVはテレビ専用のインターフェイス(UI)「Google TV」を新たに搭載し、リモコンを使ってテレビ画面でコンテンツのブラウズや検索が行なえます。

Google TVのホーム画面。検索、おすすめ、映画、番組、アプリなどからコンテンツを探せる

このGoogle TVのホーム画面では、検索、おすすめ、映画、番組などから検索できます。また、YouTubeやNetflix、Spotifyなど、複数のサービスのコンテンツを一括してブラウズや検索可能で、[おすすめ]では、契約しているサービスや視聴履歴からおすすめのコンテンツも提案してくれます。

対応している動画・音楽配信サービスは、YouTube、Netflix、Amazon Prime Video、ABEMA、TVer、dTV、U-NEXT、Paravi、DAZN、FOD、YouTube Music、Spotify、AWAなど。

音声検索対応も大きな特徴。リモコンのGoogle アシスタントボタンを押してコンテンツ検索を行なえ、特にYouTubeではとても重宝します。YouTube以外のサービスの横断検索も可能で、「何を見たらいい?」と声で尋ねておすすめ紹介などにも対応。また、「今日の天気は?」などの質問にもGoogle アシスタントが回答してくれます。

4K/60pのHDRにも対応。HDR方式はHDR 10/HDR 10+とDolby Visionサポートしているので、動画配信サービスのHDR映像はほぼカバーしている形です。

ひとつの動画サービスのような感覚の「Google TV」

Chromecast with Google TVとFire TVを比較してみると、できることはほぼ同じで価格もほぼ一緒(Fire TV Stick 4K)です。機能面では、リモコンでテレビの入力切替までできるのは、Chromecastのみの特徴ですが、入力切替の応答速度が悪く、次の入力まで切替えてしまうこともあり、リモコンが見つからない非常時用という印象です。

Chromecastならではの“良さ”が感じられるのが新しいUIの「Google TV」。Fire TVの場合は、Prime Videoを中心に各サービスのアプリを選ぶ形ですが、Google TVではNetflixやU-NEXT、ABEMA、Prime Videoなどのコンテンツが並列にならび、おすすめ、SFアクション映画、ホラー映画、ドラマ番組、おすすめの動画(YouTube)などから探せるようになっています。

Chromecast with Google TVの操作画面

アプリ単位でも検索できますが、基本的には多くのサービスの中から見たい番組を探す形です。思わぬコンテンツと出会えるという意味で、とても良い仕組みです。

このGoogle TVのUIで印象的なのが、YouTubeやNetflixなどの起動がスムーズなこと。Fire TVでサービスを切り替える場合、基本的にアプリを起動してコンテンツを選ぶ必要があります。しかしChromecastのGoogle TVでは、Netflixのコンテンツを選ぶと、Netflixのアプリがすっと立ち上がり、またYouTubeのコンテンツを選ぶとYouTubeがすぐに立ち上がります。

アプリの起動待ちがほとんどなく、まるでGoogle TVがひとつの動画サービスのような感覚で使えます。これはちょっと感動的でした。

ただ、Prime Videoは、他のサービスを起動すると再度のアプリ立ち上げが必要となります。筆者が確認したかぎりでは、YouTube、Netflix、ABEMA、U-NEXTなどは、Google TVから即座にコンテンツを立ち上げできるようです。

また、複数のサービスで同じコンテンツを配信している場合は、[観る方法はxx通り]と表示。例えば[秒速5センチメートル]の場合、ABEMA、dTV、Hulu、U-NEXT、Google TV(レンタル/400円)、Google TV(購入/2,000円)の6通りが用意されており、契約しているサービスであればすぐに視聴可能で、未契約の場合は[登録]などと表示されます。様々な動画配信サービスがシームレスに使えるのは、Chromecast with Google TVならではの魅力です。

コンテンツの“おすすめ”にも対応し、音声検索も可能です。ただ、“おすすめ”されるコンテンツにおいて契約・課金が必要なものも含まれていて、少しわかり場合もあります。例えば、筆者が現在契約していないU-NEXTやABEMAビデオ(ABEMAの有料サービス)などが“おすすめ”に表示されます。それ自体はいいのですが、番組を選ぶ前に料金が表示されていなものもあり、どれが課金対象なのかわかりにくい部分もあります。

細かな改善してほしい点もありますが、基本的にはとても使いやすいUIと感じます。

Googleで人気
おすすめ表示のためのサービスを選択
YouTubeとDAZNはChromecastがおすすめ

また、「どのサービスで使いやすいか」という観点では、結構違います。

Chromecastが使いやすいのは「YouTube」。Googleのサービスなので当たり前ですが、ChromecastのYouTubeアプリは、Android TVのアプリがほぼそのままで、リモコンでの操作に加え、音声検索、アカウントを紐付けたスマホやPCとの履歴の共有などが可能で、非常に使いやすくなっています。

Fire TVにもYouTubeアプリが用意されており、音声検索など一通りの機能は揃っていすが、Chromecastはよりスムーズに使える印象。音声検索もYouTubeでは重宝しますし、起動はとても早いのでキビキビ使えます。

また、リモコンのYouTubeボタンで、テレビの電源ONからYouTubeの画面までを一発で起動できるのもChromecastならではの機能です。また、他の配信サービスを見ていて、YouTubeを見たい場合にもボタンを押すだけで切り替えられるため、「YouTubeを選びやすい」デバイスです。

ChromecastのYouTube

同様にNetflixも専用ボタンが用意されているので便利です。ワンボタンでテレビの電源からNetflixまで立ち上げられるので、「ほぼNetflixのためにテレビを使っている」という人には最適です。

もう一つ良いと感じたのはスポーツ配信の「DAZN」。Fire TVのDAZNアプリは安定性が今ひとつ。ブラウズ中も関係ない番組を背景でずっと再生しているなど、よくわからない動作もあり、正直あまり出来がよくありません。

ChromecastのDAZNアプリも、背景で無関係の動画を再生し続けるという謎仕様は共通ですが、よりキビキビ動いているような印象です。短い時間しか使っていませんが、安定して動いており、追いかけ再生時の早戻しの操作やレスポンスなどはFire TVより良いように感じます。

ただ、実際に早送り時間を計測してみたところ、2時間56分の番組でChromecastが41秒、Fire TVが42秒とほぼ同じでした。他にも比較計測しても大きな違いはでないのですが、Chromecastのほうがレスポンス良く、思い通りに使える印象です。

ChromecastのDAZN

一方、Fire TVの方が優れている点もあります。Amazon Prime Video(プライムビデオ)の使いやすさは、Fire TVのほうが上。Chromecastも一通りの機能はあり、悪くはないですが、Prime Videoの様々な“おすすめ”が見やすいのはFire TVです。Prime Videoにおいては、Fire TVのほうが使いやすいので、Prime Videoを中心に、他のサービスのコンテンツを見たい、という人にはFire TVのほうがよいと思います。

ChromecastのAmazon Prime Video

また、HDMI出力の設定など、細かな画質・音質設定はFire TVのほうがよさそうです。例えば、映画作品は24フレーム/秒で作られており、テレビでも、この24コマ(24p)に対応して、映画を映画らしく見られるモードを備えた製品があります。細かいことはAV Watchの記事で紹介していますが、Fire TVは、この24p出力に対応しており、コンテンツにあわせて通常の60pと24pを出し分けできます。例えばPrime Videoの24p作品だけ、24pで出力して、映画を映画らしく楽しめます。

しかし、Chromecastは60p/24pの自動切り替えができず、60p固定あるいは24p固定の選択項目のみです。映画体験にこだわりがある人にとっては重要なポイントで、ここはFire TVのほうが優れているといえます。

ただ、NetflixはFire TVでも24p出力に対応していないので、Netflix利用時に気にする必要はありません(ちなみにApple TV 4Kは24p出力対応)。

YouTubeが使いやすくて困る

またYouTubeが“見やすい”というのは大きな利点ではあるのですが、ある意味、困ったことかもしれません。理由は2つあります。

まず、PCやスマホでYouTubeを見ている時は、さほど気にならない「広告」ですが、大画面のテレビで見ると結構鬱陶しく感じてしまうこと。画面をタップできないので広告を飛ばしにくいというのもありますが、広告が表示されないYouTube Premium(月額1,180円/税込)に加入したくなります。

もうひとつは、ペアレンタルコントロールが無く、子供などが自由に使えてしまうこと。現状のChromecastのYouTubeアプリでは、子供用のプロファイルなどは設定できず、自由に使えてしまいます。また、コンテンツの年齢制限もできないので、見せたくないコンテンツを防ぐ方法もありません。Fire TVではアプリの起動時にPIN設定ができるなど、簡単な対応は可能になっています。ChromecastのYouTubeアプリは「使いやすい」のですが、家族での共有や子供を守るという点では、少し工夫が必要といえそうです。

一番使いやすいChromecast

動画配信のほか、Google フォトの写真のテレビ出力やGoogle Meetのテレビ会議など、様々なGoogle サービスをテレビで使えるという点で、Chromecast with Google TVは魅力的な製品で、7,600円(税込)という価格もリーズナブルです。

また、Chromecast with Google TVとNetflix 6カ月分のセットも発売し、価格は11,200円(Google ストアのみ)。ビックカメラやau PAYマーケット、イオン、ジョーシン、ヨドバシカメラ、楽天ブックスなど、実店舗/ECを問わず多くの店で購入できます。

従来のChromecastは「スマホからキャストする」という動作が、スマホや技術に詳しい人以外にはなかなか伝えづらい製品でしたが、Chromecast with Google TVは、リモコン操作でよりテレビ的に使えるようになり、多くの人が使いやすい製品になりました。これまでのHDMIステックはFire TV一択的な状況でしたが、Chromecastはいろいろな動画サービスを意識せずに使え、YouTubeも使いやすくレスポンスも良いなど、独自の魅力があふれた製品になっています。

Fire TVユーザーがすぐに買い替える必要はないとは思いますが、よく使うサービスや機能面の違いで選択できるようになったのは歓迎したいところ。個人的には、Prime Videoは引き続きFire TVを使いながら、YouTubeやDAZNはChromecastを使うという2台体制にしたいと思います。

臼田勤哉