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グーグルと日本のサイバー防御強化の取り組み AI活用とその成果

Googleは13日、AIを活用した防御力の強化と日本社会のレジリエンス向上に向けた方針を示す「Japan Cybersecurity Initiative シンポジウム」を開催し、日本におけるサイバーセキュリティ戦略や支援成果について説明した。

Japan Cybersecurity Initiative(JCI)は、日本企業のサイバーセキュリティ意識の向上と専門人材の育成を目的に2025年3月に設立された有識者会議で、最新事案の共有や課題の把握、解決策の検討を進めてきた。

冒頭ではGoogle 日本法人代表の奥山真司氏が登壇し、同社が推進する包括的な防御手法と、JCI設立から1年間の成果について説明した。同氏は、デジタル社会の安全性と公正性を確保する重要性を強調した。

奥山真司氏

サイバー攻撃は多様化しており、重要インフラが攻撃を受けた場合には社会機能や市民生活に大きな影響が及ぶと指摘。こうした状況に対応するため、物理インフラ、クラウド、AIモデル、アプリケーションまでを統合的に活用する防御体制の構築に取り組むとした。

JCIの活動としては、中小企業向けの無償トレーニングや、自治体と連携した対面講座の実施、産学官による有識者会議の開催などを推進。有識者会議では、サイバーセキュリティを個人レベルの課題として捉えて議論を展開し、国民意識の向上や経営層の関与、サイバーセキュリティ人材拡大の3点を柱とした提言をまとめた。

Googleはその内容を反映したレポート「日本社会におけるサイバーセキュリティの課題と方策」を同日に公開した。

サイバーセキュリティへのAI応用

Google プライバシーセーフティセキュリティ担当バイス・プレジデントのロイヤル・ハンセン氏は、日本におけるGoogleのサイバーセキュリティ戦略と支援成果を説明した。

ロイヤル・ハンセン氏

同氏は、サイバー攻撃におけるAIの活用が急速に進んでいる一方、防御側でもAIを活用した対策の強化が不可欠になっていると指摘。攻撃者がネットワークに侵入してから排除されるまでの時間が長期化する一方、攻撃プロセスの引き継ぎは数十秒単位に短縮されていると指摘し、従来の対応では不十分であるとした。

サイバーセキュリティ分野が10兆ドル規模の産業に拡大する中、日本政府も脅威への対応強化に向けた経済対策を打ち出していることにも触れ、単にセキュリティ製品に資金を投じるだけでなく、社会全体としてAIを活用して実際の防御体制を拡張していく重要性を述べた。また、サイバーセキュリティ人材が約17万人不足しているとの試算を示し、AIを活用した教育やトレーニングの重要性も強調した。

AIを活用した防御手法として、Googleの「VirusTotal」ではAIにより悪意あるスクリプトの検出率が70%向上し、ファイルにマルウェアを含んでいるかを特定する能力も300%向上したという。また、同社はセキュリティオペレーションセンターにAIを活用することで、生産性が77%向上したという。

AIの活用により、脅威検出やセキュリティ運用の効率化が進んでいる点にも言及。マルウェア検出や分析精度の向上、セキュリティオペレーションの生産性改善などの成果を紹介するとともに、防御体制を拡張する手段としてAIの活用が不可欠であるとした。

同氏は、サイバーセキュリティにおいて、一度構築して放置するのではなく、日々変化する脅威に対応して進化し続ける、動的な防御体制である「デジタル免疫システム」の構築を目指すべきだと語った。

AIは攻防表裏一体 能動的サイバー防御の整備を進める

シンポジウムでは、片山さつき財務大臣が登壇。AIの社会実装が進む中で、金融システムの信頼性確保には、サイバー攻撃や障害の発生を前提としたサイバーレジリエンスの向上が不可欠であると述べた。

片山さつき財務大臣

AIは攻撃と防御の双方に関わる技術であるとし、金融機関に対してリスクへの対応と防御力強化への取り組みを求めた。

また、重要インフラを狙ったサイバー攻撃は経済安全保障や国家安全保障に直結する課題であるとし、関係省庁や業界と連携した能動的サイバー防御の検討を進めていると説明。今回のシンポジウムでの議論が、日本全体のサイバーセキュリティ水準の向上と国際的な信頼性の強化につながることへの期待を示した。

AIは攻撃手段となる一方、防御の高度化を可能にする表裏一体の技術であり、金融機関にはAIがもたらすリスクへの適切な対応とサイバーレジリエンスの強化に取り組んでいただきたいと述べた。

このほか、サイバー攻撃は特定の業界にとどまらず国家安全保障に直結する課題であるため、金融庁としても被害を未然に防ぐ観点から、能動的サイバー防御に関する制度面や運用面の検討を進めていると語った。