ソフトバンク、5Gミリ波を透明な“反射フィルム”で誘導する技術

積水化学が開発した「メタサーフェス反射フィルム」

ソフトバンクは、5Gのミリ波の通信エリア拡大や補完を可能にする、電源不要で電波を誘導できる“反射フィルム”の効果を検証し、電波制御技術として有効性を確認したと発表した。駅構内や工場、イベント会場などでの活用を見込む。

積水化学工業が開発した「メタサーフェス反射フィルム」は、電源が不要な透明フィルムで、電波を任意の方向に誘導できるというもの。

メタサーフェス反射フィルムを活用した電波環境改善の効果検証は、ソフトバンクの本社で実施された。検証の結果、オフィス内の圏外・弱電エリアにおける電波環境の改善が確認され、エリアカバレッジの向上と景観への配慮を両立できる、新たな電波制御技術としての有効性が確認されたとしている。

今後の活用イメージ

反射方向を変えられる反射フィルム

積水化学製のメタサーフェス反射フィルムは、電源不要のパッシブ構造で、特殊な人工周期構造(メタマテリアル)により電波の反射位相を制御し、反射方向を自在に変えられるのが特徴。

金属板などの反射体は「入射角=反射角」という正反射の法則に従うのに対し、メタサーフェス反射フィルムは微細なパターン設計により電波を任意の方向へ曲げることが可能。これにより、電波の死角となるエリアにも効率的に電波を届けられる。

金属板による正反射とメタマテリアル技術による反射のイメージ

また、透明で軽量・薄型、折り曲げ可能な構造のため、壁面やガラス、柱などにも容易に設置でき、通信品質の向上と景観への配慮を両立できるとしている。

オフィスで検証 多段反射も

ソフトバンク本社で実施された効果検証では、メタサーフェス反射フィルムを活用して、正反射するフィルムと偏反射するフィルムをオフィス内の壁面にあるポスターフレームに張り付けて設置。フィルムの有無による5Gミリ波の受信電力や通信速度の変化が検証された。

その結果、圏外や弱電となっていたエリアで電波強度が向上。また、正反射フィルムと偏反射フィルムを組み合わせて廊下の壁面に設置し、多段反射によって電波を効率的に誘導できることも確認された。従来はミリ波の電波が届きにくかった、廊下の奥にあるリフレッシュルーム内に同様の構成を適用した結果、空間全体をエリア化できることも明らかになったという。

効果検証環境のイメージ

これらの結果から、正反射フィルムと偏反射フィルムを適切に組み合わせれば、景観を損なうことなく柔軟な電波反射経路の設計が可能で、オフィスなどの屋内環境におけるミリ波の通信エリアの拡大に有効であることが実証されたとしている。