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Google、宇宙で無限の太陽光を活用するAIデータセンター

Googleは、宇宙空間で太陽光発電を活用し、スケーラブルな宇宙データセンターを構築するための研究プロジェクト「Project Suncatcher(プロジェクト・サンキャッチャー)」における成果を発表した。2027年にPlanetと共同で試験用衛星を打上げる。

今回発表されたシステムは、GoogleのAIチップ「TPU(Tensor Processing Unit)」を搭載しネットワーク化した衛星群を、太陽同期の低軌道で運用するもの。ほぼ常に太陽光を受け続ける状態のため、太陽エネルギーを最大限に活用しながらAIデータセンターの運用が可能になる。

衛星間のリンクは光通信で行なうが、リンクに要求される数十テラビット/秒の速度を実現するには、従来の長距離通信よりも何千倍も高い受信電力レベルが必要になる。しかし実現には、衛星同士を数キロメートル以内に配置する非常に緊密な編隊で飛行させる必要がある。

これを実現するために、「Hill-Clohessy-Wiltshire equations」と呼ばれる、衛星の動きを近似的に計算できる数学的な方法を使用。衛星の動きを軌道という「道」の上の動きとして考え、近くに居る別の衛星との位置関係を予測する。また、地球の引力は完全に均一ではないため、そうした細かいズレや、低高度における空気のわずかな抵抗の影響も考慮している。

実際に、高度約650kmの太陽同期軌道(地球の周りを太陽の動きと同期して回る軌道)で、1kmの範囲に約80機以上が集まって動く衛星群をシミュレートしたところ、衛星同士は100~200mの距離で変動しながらも、相互の位置を比較的安定した状態に保つことができた。これにより衛星群の位置を維持するために使う燃料や推進操作はごく僅かですむという。

TPUを低軌道環境で動作させるためには、低軌道の環境に耐える必要がある。このため、Googleの第6世代TPU「Trillium」において、放射線耐性のテストも実施。長期の運用に耐えられることを実証した。

打上げコストはこれまで宇宙システム導入の最大の障壁だったが、2030年代半ばには1kgあたり200ドル未満に低下する可能性があるという。この価格帯での打上げが可能になると、宇宙データセンターの打上げ・運用コストは、キロワットあたりの年間ベースで、同等の地上センターのエネルギーコストとほぼ同等になる可能性がある。

Googleでは2027年初頭までに2機のプロトタイプ衛星を打上げる予定で、TPUのハードウェアが宇宙でどのように動作するかをテスト。分散MLタスク向けの光衛星間リンクについても検証する。