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AIは100兆円を超える価値を生み出す OpenAIが日本に政策提案

OpenAIは22日、日本がAIの経済的・社会的潜在力を最大限に活かすための政策フレームワーク「日本のAI:Open AIの経済ブループリント」を発表した。「AIは日本のGDPを最大16%押し上げ、100兆円を超える経済価値を生み出す可能性がある」として、戦略的なAIインフラ投資や、包摂的な社会基盤の構築などに取り組むよう提言している。

米国において、政府のリーダシップ拡大に向けた提言をまとめたブループリントを1月に公表したが、その日本版として制作したもの。

2022年11月のChatGPT公開からユーザーの急拡大は続いており、25年10月時点のChatGPT利用者は、全世界で8億人を超えた。GPTは「Generative Pretrained Transformer(生成事前学習済みトランスフォーマー)」の略称だが、OpenAIのChief Global Affairs Officerであるクリス・レヘイン(Chris Lehane)氏は「General Purpose Technology」(汎用技術)でもあると説明。蒸気機関の発明や電気の普及のような、急速な社会変化をAIがもたらし、「AIは人間活動を拡張するものになる」と語る。

OpenAI クリス・レヘイン氏

2025年はAIエージェントなどの大きな変化がもたらされ、人々が旅行計画にAIを役立てるなど、AIとの共存が進みつつある。26年には、大規模データを使い、科学や医療などの進歩が、27年にはロボティクスのAI連携が進むと予測しており、ロボティクスにおけるリーダーである日本での普及に期待を示した。

ブループリントでは、日本の経済成長におけるAIの重要性について、「100兆円を超える経済価値を生み出す可能性がある」と言及している。日本のChatGPTのアクティブユーザーは、前年から4倍の成長を見せており、ビジネスユーザーの数は米国に次ぎ2番手、有料会員数は世界4位、開発者市場は世界5位とOpenAIのなかでも大きな位置を占めているという。

それ故に、初の米国外拠点として日本が選ばれたが、加えて政府のイノベーションを後押しする姿勢や、初の女性首相となる高市首相の誕生に言及し、変化を受け入れ力に変えていく日本において、「AIはその原動力になる」とする。

その成長エンジンとして、「包摂的な社会基盤の構築」「戦略的インフラ投資」「教育と生涯学習の強化」の3点が重要になる。

包括的な社会基盤については、AIによる、中小企業の生産性向上やヘルスケア領域でのコスト削減のほか、ChatGPT Eduの提供による教育活用、デジタル庁など政府と協力した公共セクターのAI導入などを紹介。人口減少社会における成長をAIが下支えできると説明する。

AIインフラについては、日本のデータセンター市場は2028年に5兆円を超えると想定される。そのためブループリントでは、電力需要の増加に対応するグリーンエネルギー供給の確保に向け、AIインフラ整備を国家プロジェクトとして推進するよう提言している。

ブループリントでは、製造業や医療・介護、教育、行政サービス、科学、金融など各分野でのAI活用の重要性を強調。加えて、日本の倫理観やイノベーションの両立のほか、人口の急減少など社会課題先進国でもある日本におけるAIの導入は、「世界の指針になる」と説明。あらゆる主体がAIの恩恵を享受できる社会の実現に向けて、AIインフラへの投資、教育改革などを求めている。

左からOpenAI Japan 政策・パートナーシップ担当 大久保 和也氏、日立製作所 執行役常務 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニットCEO兼AIトランスフォーメーション推進本部長 細矢良智氏、OpenAI Chief Global Affairs Officer Chris Lehane氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役員 グループCDO兼デジタル戦略統括部長 江見 盛人氏、Cynthialy代表取締役CEO 國本知里氏、THE GUILD CEO/UI UX Designer深津貴之氏