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JR、送電損失ほぼゼロ「超電導システム」 実用化へ前進

超電導き電システムの概要

JRグループの鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は、伊豆箱根鉄道とJR東日本が協力し、鉄道の営業線に設置した「超電導き電システム」の実証結果を発表した。いずれの試験でも安定した超電導状態で送電できることを確認したという。

超電導き電システムは、電車の走行に必要な電力を、一定温度以下で電気抵抗がゼロになる超電導ケーブルと冷却装置を組み合わせて、変電所から車両まで損失なく送るシステム。直流電気鉄道では、低電圧で送電するため大電流が必要で電圧降下が大きく、変電所を密に設置する必要があるが、同システムは送電損失や電圧降下を抑えられるので、省エネや省設備化の手段として期待されている。

このシステムは、鉄道総合技術研究所が2007年から開発に取り組み、24年3月から伊豆箱根鉄道の駿豆線、25年3月からJR東日本の中央本線において、実証試験を行なった。

駿豆線での試験では、大仁駅構内に超電導き電システムを設置。1年以上にわたり季節によらず安定した冷却状態を維持し、超電導状態を保持しながら約4万本の営業列車に電力を供給し、始発から終電まで負荷に応じた送電ができることや耐久性を確認した。

駿豆線での試験の様子

また、中央本線での試験では、中央本線に隣接する鉄道総研の日野土木実験所に超電導き電システムを設置。25年3月から4月の間に下り線へ接続し、都市圏鉄道での複数列車の同時力行を想定した最大4,500Aの電流供給や、減速時の最大2,889Aの回生電流の流入を測定した。

結果として、電流値や向きが頻繁に変わる過密路線でも、超電導ケーブル両端の電圧差はほぼ生じず、安定稼働と必要電力の確実な供給を実証した。

中央本線での試験の様子

今後は、変電所の集約による省設備化をより効果的に発揮するために、送電距離の長尺化に向けたケーブル接続技術の構築を進めるとともに、超電導材料と冷却性能の向上、保守手法や経済性の改善に取り組み、社会実装を目指す。