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デジタル庁、マイナカードで登山者情報把握 マナー周知や整備・寄付活用

マイナカードで本人確認して登山届を提出(提供:デジタル庁)

デジタル庁は、長野県の北アルプスエリアや八ヶ岳エリアにおいて、マイナンバーカードを活用した登山者情報のデジタル基盤整備の実証実験を開始する。登山届の提出から山小屋予約、寄付・募金協力、ふるさと納税の連携など、登山にまつわる課題解決と新たな価値創出を目指すもので実施期間は、25年10月から26年2月。

登山人口が拡大する一方で、登山道の整備や観光資源の管理、遭難者の捜索など、その管理のための財源は行政機関からの支援や、維持・管理の担い手である山小屋の収益に限られている。こうした中で、来訪者情報を把握したデジタル管理が、課題解決につながるとの仮説のもと、実証実験を行なう。

実証実験では、マイナンバーカードを活用することで、登山者の正確な本人確認を行なえるほか、来訪者情報をデジタル管理できるため、来訪者の基本情報や連絡先の把握に加え、ニーズ分析や観光資源の収容力を踏まえたキャパシティプランニング(入域許可制)、入場料・入域料のシミュレーションなどにつなげていく。

2025年やまのあかしプロジェクト

対象となる山小屋は、北アルプスエリア(中部山岳国立公園)の9カ所と八ヶ岳エリア(八ヶ岳中信高原国定公園)の14カ所。

6日からは、「2025年やまのあかしプロジェクト」を開始し、登山前にこのプロジェクトページから実証実験に参加し、マイナンバーカードもしくはパスポートによる身元確認とともにID登録が行なわれる。マイナカードを利用する場合は、「デジタル認証アプリ」を活用する。

2025年やまのあかしプロジェクト
2025やまのあかしプロジェクト(観光資源DX 自然公園エコシステムの実証実験)実証参加方法ー入山準備編

ID登録したあとは、入山計画や登山マナー確認、誓約書提出を行なう。登山マナーについてのテストを通過すると、デジタル資格証明として「入山準備完了証」が発行される。登山時に山小屋に完了証を提示すると、山小屋でノベルティがもらえる。入山準備完了証の発行には「MS Authenticator」アプリを活用する。

「入山準備完了証」を発行(提供:デジタル庁)

ID登録した登山者は、同プロジェクトからオフライン(非対面)で山小屋への募金も可能。山小屋に直接寄付と、ふるさと納税を選択可能で、寄付を行なうとデジタル資格証明として募金完了証を発行する。

プロジェクトページからふるさと納税(提供:デジタル庁)
2025やまのあかしプロジェクト 募金で応援編

山小屋においては、通常の営業だけでなく登山道の整備などの活動も担っているが、近年の燃料費高騰により、ヘリ輸送や光熱費などの費用増大が課題となっている。また、登山道の管理には登山技術だけでなく整備技術も必要で、長期的な取り組みが必要だ。一方、初心者や海外からの来訪者の増加により、無理な登山や登山マナーが周知されないといった課題もあるとする。

登山者情報のデジタル基盤が整備されることで、マナーの周知や山小屋への寄付のきっかけとなることを目指す。また、八ヶ岳エリアの長野県茅野市など周辺自治体では、山岳整備のための登山協力金(入山金)の導入に向けた検討を進めており、実証実験では入山料のシミュレーションなどにも役立てていく。

実証実験の概要(提供:デジタル庁)
対象エリア(提供:デジタル庁)

山小屋においては、遭難救助の依頼がある場合、山荘従業員が民間救助隊として活動に参加することもある。しかし、現状は登山届の書式などもまちまちで、デジタル管理されていないことから電話での都度のやりとりで、対象者を把握するなどの非効率が存在する。今回のプロジェクトでは、事務局が登山者情報を管理するデータベースを構築し、登山者情報を一括管理することで、遭難救助時の初期対応の迅速化などにも役立てていくとする。

VC発行の仕組み(提供:デジタル庁)

今回のフェーズ1では、基盤整備の技術検証に加え、実際の登山者において、登山者、山小屋、自治体にとり有益な結果をもたらし、将来的に課題解決に繋がる可能性があるかどうかを検証。その後、横展開に向けたシステム運用やガバナンスの整理、入域規制におけるデジタル基盤活用検証(入山許可証等)などをフェーズ2に位置づけ、その先に観光分野への応用を検討していく。

(提供:デジタル庁)