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災害広報に「LINE」を使う意味 能登半島地震における自治体対応
2025年7月10日 08:20
LINEヤフーと金沢大学は9日、能登半島地震における情報ツールの活用に関する調査研究の結果を発表した。被災した住民によって情報取得に関する差が生じていたことや、現地でのLINEの活用実態などをまとめたもので、2,094人の住民アンケート(Web)と珠洲市・輪島市で現地調査、広報担当者に対するヒアリングなどを行なった。
災害広報に「LINE」の意味
自治体におけるLINE公式アカウントは、47都道府県は100%利用しており、地方公共自治体プランも1,788自治体のうち1,500の自治体が採用するなど、幅広く普及している。ただし、SNSは「知人とのコミュニケーションツール」であり、災害対応ツールとしては、令和3年(2021年)から漸減傾向にあるという。
一方で、被災時に通信環境さえあれば一括で情報配信できるという点は大きな利点。情報源としても、地震発生前は4位だったLINEが発生後は2位にあがるなど、重要度は認知されている。情報源としての利用率が、地震発生後に上がっている点もLINEならではの特徴で、有用性は確認されたという。
発生直後は、安否情報や支援情報などで活用されたLINEだが、ここでは個人間でのやりとりのほか、自治体公式アカウントやグループトークやオープンチャットでの活用も行なわれた。
公式アカウントは、防災無線やテレビ、広報紙代わりの「正確な情報通知」を担い、グループトーク/オープンチャットは回覧板や集会の代替として、LINEのトークや通話は電話や戸別訪問の代わりに活用されている。一方、必ず情報弱者となる人も発生するため、「地続きの人間関係や他の手段との補完も不可欠」とする。LINEは自助・共助を促進しながら、公助との接点として使われていることとなる。
時間経過で変化する「必要な情報」 開封率で把握
9日に開催した説明会では、災害対応支援のため珠洲市に入った神戸市職員による取り組みについても説明された。現地での対応のほか、広報戦略部の約40人が神戸市で対応にあたりホームページ作成や情報発信に携わった。
珠洲市においては、道路が寸断され、ガス・水道は止まっていたもののネット環境は問題なく、LINEも使えため、気象庁等のデータを元にしたLINEオープンチャットでの情報共有、ホームページやLINE公式アカウントを使った情報発信を行なったが、発生直後と、その2カ月後などでは必要とされる情報も大きく異なり、「真に求められている情報」を精査して配信したという。
例えば発生当初は、ガスの復旧やごみ収集、炊き出しなどの情報ニーズが高かったが、2カ月後には、同じ炊き出しでも「今日はカレー」、「味噌汁」などの情報を入れていったという。日常に徐々に戻る中での、思いや数値化できない部分を大事にした情報発信が必要で、こうした対応も災害広報で重要になるという。
加えて、LINE公式アカウントでは、「開封率」がわかる点が、必要な情報の精査に役立ったたという。開封率が高い情報は「求められている」ものとわかる。そのため、伝える内容だけでなく、文章の長さなども調整し、読まれやすく伝えやすい発信に配慮したという。
一方、震災のような非常時にいきなり適切な情報発信を行なうのは難しい。行政においては、苦情を恐れて発信しないケースが多いが、災害時はそうは行かないので「平時から準備が必要」という。そのため、平時から自治体自体がオウンドメディア等で情報発信を行なうことが、災害広報の質を高めるうえでも重要としている。
神戸市および石川県珠洲市による、LINE公式アカウントの運用については、事例集として公開。神戸市と珠洲市により、実際に住民に配信をしたLINE公式アカウントでのメッセージを600点、画像を36点、計636点の素材を掲載し、文面や配信時間に加え神戸市・珠洲市によるポイントなども記載。「LINEスマートシティ推進パートナープログラム」に参画する自治体であれば、誰もがダウンロードすることができ、有事の際の情報発信に活用できるようにした。














