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接触確認アプリ「COCOA」最終報告書。行動変容に一定の効果

デジタル庁は17日、2022年11月に運用を停止した、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」について、その活動を総括する報告書を発表した。報告書では短期間で4,000万ダウンロードを達成したほか、当初の目的であった「他人との接触を避ける行動を促す」については一定の効果があったとしている。

一方で、迅速な導入を優先したことから、開発・保守運用等の体制整備が十分になされず、後のアプリ不具合の一因になったことや、通知の発生回数を収集できず効果測定ができなかったことなどの課題も指摘している。また、検討過程で感染症対策の専門家や感染症法に基づく対策の実務に詳しい人の関与が薄く、必要な機能や目指すことの合意形成が不十分であったなど、開発・運用体制において多くの課題を残したとも記している。

COCOAは、新型コロナウイルスの感染者との濃厚接触の可能性を知らせる“接触確認”アプリとして、'20年6月からスタート。スマートフォンのBluetooth機能により、人と人との接触を検知・記録し、アプリ利用者の陽性が判明した場合、その人(陽性者)の同意のもとで、過去14日以内に接触したアプリ利用者に「接触した」という情報を通知してきた。

その後、ワクチン接種等が進んだこともあり、政府は、'22年9月に陽性者の「全数把握・全数届け出」の停止を決定。全数把握を前提としていたCOCOAの効果が限定的になるとして、サービスの終了を決定し、11月に停止した。

COCOAアプリでは、Androidアプリでの陽性者接触が“通知されない”など、いくつかの大きな不具合や運用の課題も生じたが、開始以来2年強で約4,128万ダウンロード、約369万件の陽性登録が行なわれた。

報告書では、COCOAのポジティブな面として、総括にあたって実施した利用者アンケート調査で、接触通知が来た人の7割以上が「他人との接触を避ける行動をとった」と答えるなど、当初の目的である「行動変容」において効果が確認できた。そのため、「経済との両立を図りながら、国民社会全体に対する行動制限を防ぐという目的で、自主的な行動制限を促す、公衆衛生上の国民の共助を促す環境を整えるアプリを活用していく意義は引き続きある」としている。

一方で、事前の準備が重要と指摘する。COCOAの開発運用はプラットフォーマーの方針を踏まえ、厚生労働省が担う事となったが、新型コロナ全般への対応で人的リソースが不足していたほか、システム開発運用に関する知見も不十分だった。デジタル庁はデジタル分野のエンジニアなど、民間人材を職員として有し、緊急時に必要なシステムの開発に直接関与する方針も示していることから、パンデミック時のシステム開発運用に速やかに対応するため、政府全体での人材の融通など、平時から体制を整える必要があるとしている。

今後同様のデジタル技術の利用においては、「PDCA サイクルを意識した設計」も必要とする。新たなデジタル技術を利用する場合、評価方法が定まっていないことや、効果を測定する手段がないことが想定される。そのため、システムにあらかじめ評価や効果を測定するための仕組みを組み込むなどの対策が必要としている。

また、COCOAではオープンソースコミュニティとの連携による開発が行なわれていたが、連携を継続する仕組みの必要性なども指摘している。なお、COCOAの開発・運用費用は総額で12.7億円。ダウンロード件数(41,287,054件)で割るとダウンロード1件あたり約31円となり、他国と比較しても「それなりの低い金額」であったという。