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川崎重工、国産手術支援ロボ「hinotori」 ダビンチの半額

川崎重工業は、東京ビッグサイトで3月9日から11日まで開催された「2022国際ロボット展」で、同社とシスメックスが共同出資して設立したメディカロイドのゾーンで、国産の手術支援ロボット「hinotori」、「自動PCR検査ロボットシステム」を出展した。

日本製手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」

hinotori サージカルロボットシステム

手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」は8自由度(関節)を持つ4本のアームがついた「オペレーションユニット」と、医師が高精細なフルハイビジョン3D画像を見ながら操作する「サージョンコックピット」から構成されている手術支援システムだ。「サージョンコックピット」で画面を見ながら操作を行なうと、患者近くに設置された「オペレーションユニット」のアームが動き、手術を行なう。主に腹腔鏡手術と言われるタイプの手術に適用される。ロボットを使うことで患者にとっても侵襲(手術のための傷)が少なく、手術を行なう医師にとっても負担が少なくなる。

「オペレーションユニット」のアームは8自由度でアーム同士、そして医師とアームの干渉(接触)リスクを軽減する。手先部にはデュアル直動構造を採用し、挿入したときの動作量を低減している。これも患者への侵襲を少なくすることができる。インストゥルメントの動作支点「ピボット」はソフトウェアで設定できる。

8関節アームが4本の「オペレーションユニット」
サージョンコックピット。術者はフルハイビジョン画像を見ながら操作する

術者が操作するサージョンコックピットにはエルゴノミクスデザインを採用。術者の負担を軽減する。アーム動作の比率は、3:1、2:1、1.5:1を切り替えられる。つまり、操作側が大きく動かしても患者体内の鉗子は少ししか動かない、といった設定が可能となっている。2020年8月に泌尿器科領域で製造販売承認を取得。同9月から保険適用となった。2022年3月現在は泌尿器科のみを対象としている。

2020年12月には1例目として神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)にて前立腺がんの全摘出手術を実施した。術者が手術支援ロボットを操作した時間は3時間39分だった。このほか、2021年9月には藤田医科大学病院で、2021年11月には武蔵野徳洲会病院でも前立腺がん全摘除術を実施していることがニュースリリースされている。

ネットワークサポートシステム「MINS」、5G活用も

操作デモの様子

hinotoriには、シスメックス、メディカロイド、オプティムが共同開発したネットワークサポートシステムのプラットフォームとして「MINS(Medicaroid Intelligent Network System)」が採用されている。MINSはオプティムが提供するAI・IoT プラットフォームサービス「OPTiM Cloud IoT OS」をベースとしたシステムで、各種センサー情報や内視鏡映像及び手術室全体を映像等の情報をリアルタイムで取集・解析・提供できる。運用支援や安全・効率的な手術室の活用支援、及び手技の伝承・継承支援を目的としている。

具体的には、MINSはhinotoriの稼働状態やエラー情報などのログデータをリアルタイムで収集・蓄積し、サポートセンターでトラブルに対して遠隔から対応する。また、OPTiM Cloud IoT OSでの標準モジュールである「Video Streaming」を活用。手術室の映像をライブ配信・閲覧することで、メディカロイドのサポートセンターにおいて手術室の状況を正確に把握できる。同じくOPTiM Cloud IoT OSの標準モジュールである「Digital Twin」を活用することで、hinotoriの稼働状態を三次元的に再現することもでき、手術中のロボットの動作だけでなく、術者の操作もメディカロイドのサポートセンターで視覚的に把握することができるようになっている。

このほか2021年4月には、内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金事業」として採択された神戸市の「神戸未来医療構想」の枠組みで、メディカロイドのほか神戸大学、NTTドコモ、神戸市と共同で、神戸大学内に設置された実証実験施設「プレシジョン・テレサージェリーセンター」で商用5Gネットワークを介した手術支援ロボットの遠隔操作の実証実験を行なったと発表されている。

「外車を国産車に乗り換えるような感覚で」

世界市場を見ると手術支援ロボットは米国インテュイティブサージカルの「ダビンチ」一強の状況だ。1999年に登場した「ダビンチ」は、日本国内でも導入例は多く、インターフェイスもデファクトスタンダードになりつつある。そこで「hinotori」でも操作感はそれほど変わらないようにしているという。

メディカロイド広報の山本泉氏は「日本の先生方には『外車を国産車に乗り換えるような感覚』と申し上げています」と語る。現在、泌尿器科以外の他科への申請も行なっている段階で、消化器、婦人科、呼吸器など順次増やしていき、インストゥルメント(鉗子)の種類も今後増やして使い勝手を上げていくという。

また、価格競争力もアピールされている。「hinotori」は「ダビンチ」のおおよそ半分程度の価格とされており、より少ない手術件数で投資費用の回数が可能だという。メディカロイドでは2030年に売上高1,000億円達成を目指している。

自動PCR検査ロボットシステムも出展

自動PCR検査ロボット

このほか川崎重工、メディカロイドは自動PCR検査ロボットシステムを出展。同社は2020年10月からロボットを使った自動PCR検査サービスを開始している。感染リスクがともなう工程をロボットで無人化/自動化し、医療従事者の安全を守る。システムはパッケージ化されており、必要に応じて移動できる。検査方法はリアルタイムRT-PCR法。検体投入後約80分で検査を行なえる。

関西国際空港などに導入されており、国際線 出発旅客向けのPCR検査サービスを行なっている。検査受付から最短3時間で陰性証明書の発行ができる。