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Luup、公道走行できる電動キックボードシェア。ヘルメットは任意

シェアサイクル事業を展開する「Luup」は、新たに電動キックボードのシェアサービスを4月下旬よりサービス開始する。原付ではない形で、ヘルメット任意での公道走行展開は国内初となる。電動キックボードの利用は、事前に運転免許証の登録とテスト受講が必要で、実証実験中の料金は初乗り100円(最初10分)+15円/分。

従来の実証実験では「原付」扱いで、制限速度20km/h、ヘルメット必須としていた。今回は、経産省による「新事業特例制度」を使った実証実験で、原付ではなく「特殊小型自動車」扱いとなった。

そのため、ヘルメットの着用が任意となるほか、自転車レーンの走行が許可される。また、一方通行だが「自転車走行可」とされている車道も走行できる(歩道の走行は禁止)。速度は最高15km/h。運転免許は必要。

4月下旬に実証実験の認可がおり次第、電動キックボードのサービスを開始。Luupのシェアサイクルは、東京の渋谷区、新宿区、品川区、世田谷区、港区、目黒区などで展開しているが、現在の約300ポートのうち200ポートでキックボードが利用可能になる予定。

まず100台からスタートし、順次追加していく。電動アシスト自転車との棲み分けでは、1~2kmなど短かい距離での利用が多いと想定。また、スカートやスーツでの乗りやすさなどからビジネス街や坂道が多い場所などでキックボードが使われると考え、ポート展開にも反映していく。

キックボードも前回の実証実験から大幅に改良。新たにスマホホルダーを搭載したほか、ボディの構造を頑丈にして耐久性を向上。サスペンションも改善し、段差の衝撃を改善したほか、モーターの性能も向上。タイヤサイズも8インチから10インチにアップし、安定性を高めている。

時速は15km/hに制限し、航続距離は45km、充電時間は4.5時間。本体サイズは1,300×591×1,350mm、重量は25kg。折りたたみはできない。サイドミラーやウィンカー、ナンバープレートも装備する。

なお、歩道での走行は禁止。自転車レーン(普通自転車走行通行帯)が設置されている道路では、同レーンを走行できる。小型特殊自動車のため二段階右折は禁止。車両走行が著しく多い道路は「走行禁止路線」となる。

安全性やニーズを検証。キックボードは「普遍的なモビリティではない」

実証実験という位置づけだが、対象エリアで半年間の許可を取得しており、主に安全性の検証や、ニーズの確認、電動キックボードの正しいルール訴求を目的とする。

原付き扱いの実証実験では、時速20km/hと今回より高速だが事故は発生していない。ただし、今回は自転車レーンやヘルメット任意などの新たな走行条件になっていることから、15km/hに速度を制限しながら、安全性を検証していく。

また、電動キックボードは、電動アシスト自転車(24km/h)に比べて速度は遅い一方、スカートやスーツでも乗りやすいなどの特徴もある。そのため利用距離やニーズなどをデータから検証。シェアリングモデルでの電動キックボードの市場性を確認していく。Luupの岡井大輝CEOは、「速度はアシスト自転車より遅いので、走行時のリスクは下がる。ただし、車道走行ではクルマとの速度差は懸念事項。どういった形が最適かを見極める必要がある」とした。

Luup岡井大輝CEO

また、電動キックボードで問題となっているのが「違法走行(ナンバープレートなし、ヘルメットなし、歩道走行)」。私有地での利用を目的とした、電動キックボードが量販店やネット通販で購入できるが、法律を遵守していないものが多い。原付き同等のルールの遵守が知られていないことから、実証実験を通して正しいルール訴求も行ない、こうした違法走行を減らしていく狙い。

Luupでは、対象エリアで自治体や街、警察と協力し、電動キックボードの法的な扱いについて、所轄の警察署での説明会なども行なっており、社会に受け入れられるための仕組みづくりに取り組んでいく。こうした対応が済んだ地域からエリアに組み込んでいるという。

今回のキックボードは、走行時のルール(道路交通法/警察庁)では「小型特殊自動車」だが、道路運送車両法(国交省)上は原動機付自転車(原付)扱いとなる。そのため、自賠責保険や任意保険などは、原付相当でLuupが加盟し、利用者を保護する仕組みとする。

今回の実証実験の結果を見ながら、新たなモビリティサービスに向けた仕組み・規制づくりを国に呼びかけていく方針。基本的には自転車近く緩やかな規制となることを目指しているという。

一方、岡井CEOは、「電動キックボードは、普遍的なモビリティだとは思っていない。2足で歩けて、降りられる人にとっては便利だが、足腰の弱い高齢者には向いておらず、高齢化社会の日本において最適とは言えない可能性は高い。理想的なモビリティは3輪、4輪かもしれない。ただ、絶対必要なのは電動走行で、世界中のモビリティで唯一町中利用が認められているのが電動キックボード。だからこれを通して、関係省庁と対話を続けていきたい」とし、キックボードにとどまらない電動モビリティを模索していく姿勢を強調。2023年までに短距離移動インフラとしてのLuupを全国展開を目標に、サービスを強化していく。