2001年12月
『スナッチ』

『ターミネーター』

『グリンチ』

2001年11月
『キャスト・アウェイ』

『スター・ウォーズ エピソードI ファントム・メナス』

『ショコラ』

『ゴッドファーザー』

スタンド・バイ・ミー』
2001年10月
『明日に向かって撃て!』

『羊たちの沈黙』

『バトル・ロワイアル』

アンブレイカブル』
2001年9月
『アラビアのロレンス』

『初恋のきた道』

『ペイ・フォワード』

クリムゾン・リバー』
2001年8月
『コヨーテ・アグリー』

『リトル・ダンサー 』

『ザ・セル 特別プレミアム版』

『火垂るの墓 -ほたるのはか-』

『17歳のカルテ コレクターズ・エディション』

2001年7月
『ダイナソー』

『宮廷料理人ヴァテール』

『グリーン・デスティニー』

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』


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原題:『THE CELL』
監督:ターセム
脚本/共同製作:マーク・プロトセヴィッチ
製作:フリオ・カロ/エリック・マクレオド
共同製作:スティーヴン・R・ロス
衣裳:エイプリル・ネイピア
特別衣裳:石岡瑛子
撮影:ポール・ローファー
音楽:ハワード・ショア
出演:ジェニファー・ロペス/ヴィンス・ヴォーン/ヴィンセント・ドノフリオ ほか

発売メーカ名:パイオニアLDC株式会社
定価:2枚組4,700円(税別)
■ターセムが映し出す閉ざされた心の闇

 歌手として女優として、今、大活躍のジェニファー・ロペス。その彼女の魅力を存分に引き出し話題を集めた作品がついにDVDで登場した。『ザ・セル 特別プレミアム版』だ。何が特別プレミアムかと言うと、なんとディスクが2枚組。収録されている特典映像は103分にも及ぶ。メイキングあり、音声解説あり、そして未公開シーンありと劇場公開時には観ることのできなかったお宝映像がぎっしり詰まっているのである。

 監督はCM、ミージッククリップなどでその才能を評価されている演出家ターセム。本作が劇場用映画デビュー作でありながら、オリジナリティー溢れたその堂々たる映像表現には息を呑む。インド出身の彼ならではの東洋思想が盛り込まれたエキゾティックな演出により、人の心の奥底に潜む“閉ざされた闇”を斬新に、かつ妖しく映し出す。凶悪な殺人犯の心の中に入り込むというおぞましさを描いているだけに、映し出される映像は残酷でショッキング。そして時に哀しみを誘う。観るものを混乱に陥れかねないほどのカオスが描かれているのだが、それこそがまさしく外からは図り知ることのできない人間の精神というものなのかもしれない。

 そんな潜在意識をどこまでもクリアに美しく、しかも夢の中を彷徨うかのような浮遊感と非現実感を持って表現した彼の才能は今や誰もが認めるところとなった。人の心に許可なく入り込むというアメリカ人が最も嫌いそうな“プライバシーの侵害”を根底に描きながらもこの作品がある一定の評価を得たのは、誰も成し得なかった精神世界の映像化を、限りない創造性をもって成功させたからに他ならないだろう。本作には、これまで誰も目にすることができなかった他人の潜在意識というものが見事にそして広大なスケールで広がっているのだから。

■圧倒的な映像世界

 心理学者のキャサリンは、最先端の技術を用いて脳障害を持つ患者の精神世界に入り込むという治療法を試みていた。ある日、彼女のもとにFBIからある依頼が舞い込む。昏睡状態のまま逮捕された連続殺人鬼、スターガーの潜在意識に入り、未だ行方不明の被害者の居所を探って欲しいということだった。協力要請を受けたキャサリンは戸惑いながら、残虐な犯行を重ねる凶悪犯の精神世界に入り込んでゆくのだが…。

 本作『ザ・セル』は、2001年3月の日本公開時、その斬新な映像に注目が集まった。リアリティは追求せず「ヴィジュアル面を重視」した「視覚に訴える作品」を目指したと監督自らが明言する通り、現実世界を描いたシーンですら現実味が抑えられている。温度の感じられない建築物、非現実的な色使い、セットのような風景と作品全体がある種異様な“架空の空気”に包まれている。唯一リアリティを持っているのはセリフくらいだ。映画をあくまでも空想世界と認識し、夢と現実が入り混じったような世界を展開しているのは「オペラのような作品」を目指したターセムの計算し尽くされた演出なのである。

 ターセムが思い描いた「オペラの世界」を実現するのに、最も大きな貢献を果たしたのは衣裳のデザインを手がけた人物、日本が誇る衣装デザイナー、石岡瑛子だろう。イメージ先行型のターセムの期待に応え、豪華でインパクトの強い衣裳を生み出している。特に、主人公のキャサリンが初めて犯人の潜在意識に入り込み彼の邪悪な面と遭遇する場面では、荘厳で豪華だが圧倒されるような恐怖感に満ちた雰囲気を表現することに一役買っている。監督はこのシーンを「ワーグナーのオペラのような場面」と評し、自らのそして石岡の功績を満足した様子で振り返っている。

 これまでCM、ミュージッククリップと数秒間、数分間の世界に入魂してきた監督らしく、短いシーンそれぞれがまるでひとつの作品であるかのように完成されている様にどこか潔さを感じる。圧倒的な映像世界はヴィジュアルを重視するという一貫した姿勢のもとに作られた1シーン1シーンの積み重ねがあってこそ実現したものであることが手に取るようにわかるのだ。だからこそこの作品を観終わって思い出されるのは、登場人物への共感よりも、物語に対する感想よりも、強烈な精神世界の残像なのである。

 人をチェーンで吊るしたり、アメリカ人お気に入りの動物、馬を輪切りにしたり、拷問装置を登場させたりとグロテスクな映像の数々に賛否両論の多かった作品ではあるが、自己表現能力、オリジナリティーを重視する芸術世界において、フランシス・ベーコンやサルバドール・ダリ、アンリ・ルソーのような独創性を感じさせる彼の才能は類稀なものと言って間違いないだろう。たとえそれが悪魔的で禁断の香りを湛えたものであったとしても。



■DISC1:片面2層
 DISC2:片面1層
■画面サイズ:スコープサイズ(16:9)
■収録時間:本編約109分
■音声仕様
:1,英語 5.1chサラウンド
 2,日本語 5.1chサラウンド
 3,英語 5.1chDTS
 4,英語(解説1)2chステレオ
 5,英語(解説2)2chステレオ
 6,音楽 2chサラウンド
 
映像特典(103分)
DISC1
■ 監督の解説(副音声)
■クルーの解説(副音声)
■音楽のみのトラック(副音声)
■オリジナル&日本版予告篇
■脳の知識
■キャスト&クルー紹介(静止画)
■解説/データ(静止画)
DISC2
■メイキング
■削除されたシーン
■特殊効果解説(マルチアングル)


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