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イヤフォンで注目「マルチポイント」ってなに? スマホとPCをシームレスに

普及が進むワイヤレスイヤフォン。最近では有線のイヤフォンよりもワイヤレスのほうが当たり前にようになってきた感もありますが、コロナ禍とリモートワークの普及により、音楽を聴くだけでなくビデオ会議などの仕事でも使われることが多くなってきました。

そんなワイヤレスイヤフォンでいま注目を集めている機能が「マルチポイント」という機能です。これは複数(2台)のスマートフォンやパソコンと1台のワイヤレスイヤフォンで同時に接続できる機能のことで、パソコンやスマートフォンなど複数の機器で、設定を切り替えることなく同じイヤフォンを使うことができます。

ワイヤレスイヤフォンには「マルチペアリング」という似た名前の機能もありますが、こちらは複数の機器を登録できるものの、機器を切り替える時はスマートフォンやパソコンなどから都度接続操作を行なう必要があります。

「マルチポイント」は、そうした操作を一切することなく、音を聴きたい端末を操作するだけで接続が自動的に切り替わるのが違いです。

対応機種が広がるマルチポイント

マルチポイントはBluetooth接続の「ヘッドフォン」では上位機種を中心にそれなりに普及していましたが、左右が分離したいわゆる完全ワイヤレスイヤフォン(TWS)では、対応機種が少なく、Jabraなど一部の製品に限られていました。

しかし最近は、完全ワイヤレスイヤフォンでもマルチポイント搭載機種が増えています。昨年末あたりから、オーディオテクニカの「ATH-CKS50TW」、パナソニック/テクニクスの「EAH-AZ60」などが増えてきて、今夏にはGoogleの「Pixel Buds Pro」なども登場。さらに、10月にはソニーの人気イヤフォン「WF-1000XM4」「LinkBuds」などが“アップデート”でマルチポイントに対応すると発表しました

マルチポイント対応のGoogle「Pixel Buds Pro」とShokz「OpenMove」

ソフトウェア・アップデートでマルチポイント対応できるのには驚きましたが、ソニーによれば、「テレワーク下でスマホとPCを同時に接続するようなユースケースが増えたことをふまえ、他社含めて開発を進めた」とのことです。

17日からマルチポイントに対応したソニーLinkBuds S(左)とLinkBuds(右)

10月以降のAV Watchの記事を見てもオーディオテクニカの「ATH-CKS30TW」やゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 3」のアップデート、ヤマハ「TW-E3C」など多くのマルチポイント対応完全ワイヤレスが発表されているなど、完全ワイヤレスでも“当たり前”の機能になってきたようです。

なお、アップルのワイヤレスイヤフォン「AirPods」も、複数の機器に接続して自動で切り替わる機能がありますが、こちらは同じApple IDでログインしたAppleやBeats製品に限られます。

一方、マルチポイントはイヤフォンが対応していれば、接続するスマートフォンやパソコンに制限はありません。WindowsやAndroidスマートフォンはもちろん、MacBookやiPhone、iPadでも利用できます。

MacやiPhoneだけでなく、様々な機器でシームレスにイヤフォンを切り替えられるのがマルチポイントの特徴なのです。

マルチポイント非対応だとスマホとPCの切替が面倒

マルチポイントだと何が便利なのか、実際に操作の手順を紹介しましょう。

まず初めに、マルチポイントで使いたい機器を登録します。マルチポイントの設定方法は機器によって異なりますので、取扱説明書を確認して設定してください。今回はWindowsのパソコンとAndroidスマートフォンの2台を使い、マルチポイント対応イヤフォンと非対応イヤフォンの流れを比較してみます。

まずはマルチポイントに対応していないイヤフォンの場合です。スマートフォンで音楽を聴きながら帰宅し、そのままビデオ会議を始める、という場合、Windowsなら設定からBluetoothの設定を開き、イヤフォンを接続します。

Windowsの設定からBluetoothを選択、該当のイヤフォンに接続

なお、イヤフォンによってはそのまま接続を選ぶだけですみますが、機種によってはスマートフォンの接続を切断しないとWindowsで接続できない製品もあります。

マルチポイント非対応のJVC「HA-NP35T」は接続済みの機器とBluetoothを切断しないと別の機器で接続できない

そしてまたスマートフォンで音楽を聴く場合は、再度スマートフォンのBluetoothから接続設定を行ないます。機種によってはWindowsとの接続を切断しなければスマホと接続できない機種もありますし、接続したい機器を変えるたびにこの操作を行なわなければならないのが面倒です。

スマートフォンのBluetooth設定から該当のイヤフォンに接続
タップで接続が完了

また、マルチポイント非対応機種は同時に接続できないため、パソコンに接続している時に突然スマートフォンに電話がかかってきたときはイヤフォンを使うことができません。電話に出るにはイヤフォンを外し、スマートフォンで電話に出る必要があります。

自動でデバイスを切替できるマルチポイント

マルチポイント対応イヤフォンの場合、こうした接続切り替えの手間は一切不要です。スマートフォンで音楽を聴きながら帰宅したら、あとはパソコンでビデオ会議を始めるだけ。終わったら再度スマートフォンで音楽を聴けますし、ビデオに接続している時に電話が掛ってきたらイヤフォンでそのまま電話に出ることができます。

スマホとPCの切り替えに即座に対応する。パソコンはマウスコンピューターの14型ノートPC「mouse X4-R5」、スマホは「Pixel 6 Pro」

なお、マルチポイントでの接続変更はイヤフォンによって動作が異なります。

ほとんどの製品では接続済みの機器で音楽を聴いている場合、もう一方の機器で接続しても自動では切り替わらず、接続済みの機器での音楽を止める必要があります。音楽を止めてから、別のデバイスで操作すると出力が切り替ります。

一方、筆者が試したイヤフォンの中には、テクニクスの「EAH-AZ60」は、接続済みの機器であってももう一方の機器で接続操作を行なうと自動で接続が切り替わります。切替の手間がかからなくていいというメリットがある一方、パソコンでビデオ会議中にスマートフォンで接続操作すると切り替わってしまうということもあり、利便性では一長一短といったところです。

なお、音声通話は優先的な扱いとなっており、スマートフォンで電話を着信した場合はどちらの仕様であってもパソコンで音楽を再生していても自動的にスマートフォンに切り替わります。これは電話回線だけでなく、FacebookやLINEといったアプリ経由での音声通話も同じです。

細かな仕様に違いはあれど、1つのイヤフォンでパソコンとスマートフォンを併用できる便利さは同じです。接続の手間が省けるのはもちろん、パソコン接続中にスマートフォンに掛ってきた電話を同じイヤフォンで受け取れるのはとても便利です。

スマートフォンとパソコンそれぞれでイヤフォンを使っている人は、これまで2台のイヤフォンを使い分けたり、1台のイヤフォンをこまめに切り替えていたかもしれません。

しかし、マルチポイント対応のワイヤレスイヤフォンであれば、1台の機器で切り替えの手間をかけることなく2台の機器で使い分けることができます。

最近ではワイヤレスイヤフォン人気を受けてたくさんの製品が販売されており、どの製品を選ぶか悩んでしまうこともあるかもしれません。そんな時には実際に使うときに便利な「マルチポイント」に対応しているかを製品選びのポイントにしてみてはいかがでしょうか。