西田宗千佳のイマトミライ

第360回

「iPhone Duoは長く使える」 アップルが語る品質・価値を維持する設計

米アップル・ワールドワイド製品マーケティング担当バイスプレジデントのボブ・ボーチャーズ氏

アップルが、9月18日「iPhone 18 Pro」シリーズを中心とした新製品群を発表した。

このタイミングに合わせて来日した、米アップル・ワールドワイド製品マーケティング担当バイスプレジデントのボブ・ボーチャーズ(Bob Borchers)氏への単独インタビューをお届けする。

アップルの現在の製品開発の方向性や、新Apple Watchからスタートする「AIデバイスとしてのあり方」などについて詳しく聞いた。発表会からだけでは見えづらい部分が、彼のコメントから見えてくる。

アップルが「ハイエンド」を目指した意味とは

――新製品ラインナップで品質に大いに注力されたことについてです。例えば18 Proではカメラ品質が大幅に向上し、iPhone Duoでは初めて折りたたみ型を導入しました。この新しいラインナップで品質向上に注力された理由を教えてください。

iPhone 18 Pro Max
iPhone Duo

ボーチャーズ氏(以下敬称略):私たちが新製品を生み出す際の取り組み方に着目してくださったことに感謝します。

私たちは何を作る際にも、細部をすべて正しく整え、最高品質の体験を構築し、可能な限り多くの価値を届けることに情熱を注いでいます。

iPhone 18 ProとPro Maxでは、お客様が最も価値を置く4つの属性に本当に注力しました。パフォーマンス、バッテリー寿命、インテリジェンス、そしてカメラです。それぞれで大きな飛躍を果たしています。

パフォーマンスでは、A20 Proと新しいベイパーチャンバーにより、驚異的な性能を実現しました。バッテリーでも大きく前進しています。

インテリジェンスの面では、10月には日本でも提供が始まるApple IntelligenceとSiri AIの最新モデルを、18 ProとPro Maxでお届けできます。

カメラでは、画質を次のレベルに引き上げたくて、可変絞りを導入しました。プロのカメラマンであれ一般のユーザーであれ、誰もが望む通りにその瞬間を切り取り、画質の飛躍を手にしてほしかったのです。

iPhone 18 Pro Maxのカメラ。左下のメインカメラには、可変絞りを搭載。絞りによってレンズの見え方が変わっているのがわかる

そしてiPhone Duoは全く新しい体験・全く新しい製品なので、私たち自身が使いたくなるような製品づくりに本当に注力しました。楽しくて、直感的で、パワフルで、耐久性のあるもの。そうした部分を、お客様が非常に高く評価されることを、私たちは知っています。

――品質の向上を追い求められた結果、製品の価格が若干上昇し、全体として値上がりしています。消費者はどう反応するとお考えですか? 購入する人の数は減るでしょうか。それとも価格に関係なく、アップルの製品を選び続けるでしょうか。

ボーチャーズ:メモリやストレージといった汎用部品の状況は、業界全体で前例のないものです。私たちもこのことを考慮に入れなければなりません。

ただ、私たちは常に、可能な限り多くの価値をお客様に届けることを確実にしたいと考えています。お客様はどこにお金を使うかを決めなければならず、「価値が得られる」と確信したいはずです。

私たちは価格が上がることを決して好みませんし、可能な限り価格を維持するよう非常に努力しています。そしてなにより、どの製品でも、十分な価値を届け続けることが重要です。そうすればお客様は自分の選択に納得できます。

iPhone 18 Pro/Pro Maxと、まもなく登場するiPhone Duoの投入をとても喜んでおり、多くの価値をお届けできたと考えています。もちろん、最終的にはお客様が選択されます。

また、可能な限り手頃に購入できるプログラムを整えることにも力を入れています。

例えばiPhoneは他のプラットフォームより長く価値を保ちます。楽天やPaidy(ペイディ)といったパートナーと連携したプログラムを用意し、携帯電話事業者とも協力して、製品をできる限り手頃な価格で提供できるようにしています。

とはいえ結局のところ、お客様は賢くお金を使いたいと考えています。だからこそ、目に見えて活かせる価値に焦点を当てることが極めて重要なのです。

触ってわかった「iPhone 18 Pro」と「iPhone Duo」の方向性

ここで少し、新製品、特にiPhone 18 ProシリーズとiPhone Duoのインプレッションをお伝えしておこう。詳細は僚誌・AV Watchにも掲載予定だ。

iPhone 18 Proは、デザイン面での変化は非常に少ない。そのことから「マイナーチェンジだ」と感じる人が多いだろう。だが、性能は劇的に向上しており、すでに数年前のMacを超えている。

メインカメラに可変絞りが搭載されたことが注目されているが、実のところ、それは要素の1つに過ぎないし、絞りによる変化の幅は一眼カメラほど大きなわけではない。だが、カメラの設定をより簡単に変え、撮影自体を楽しめる要素は増えた。絞りの変更はその一部に過ぎない。「スマートフォンしか持ち込めないが良い写真や動画を撮って楽しみたい」シーンはどんどん増えており、そんなシーンへの対応を軸に据えた製品、と言えるだろう。

iPhone Duoは、短時間触った限りで言えば、本当によくできている。機能として、他の折りたたみスマホに存在しないものがあるわけではないようだ。むしろ、アプリを細かく制御して使いこなすという意味では、Androidの方が自由度は高い。

だが、開いたとき、アプリを並べたときなどに感じる「感触」は、他のiPhoneにはないものだし、他の折りたたみスマホに比べ、作り込みが徹底している。世の中にないものを作っているわけではないが、「世の中にあるものとは手触りが違うもの」を目指したのだろう……と感じられる。

iPhone Duo。開くときの「すりガラスのような効果」は、体験してみるとなかなかインパクトがある
マットなインナーディスプレイにより折り目が目立たない。画質も十分で、映像視聴に向く

高価なものを買うときにはある種の「衝動」が必要だ。言葉は悪いが、冷静さを失うような瞬間が必要、と言ってもいい。アップルはiPhone Duoでそういう製品を目指したのだろう。もちろん、それだけの価格を支払える人向けに……ということだが。

同時に、下取りや分割払いなどのサポートの拡充にも、持っている製品の残価維持にも、アップルは戦略的に取り組んでいる。「長期的に顧客をつなぎとめ、高付加価値な製品を買い換え続けてもらえる」ことを戦略の軸に据えているのだろう。

iPhoneの「長期価値維持」を戦略的に実行

――購入者がアップル製品を選ぶ理由のひとつは、時間が経っても価値が持続することです。次の製品を買うとき、今持っている製品を下取りに出しても、高い価値が保たれます。他の端末メーカーを見ると価値は下がっているのに、アップルは下がらずに維持しています。

これは価値を同じ水準に保つ努力を意識的に行なっているのですか? それとも、お客様が製品を購入した結果として製品が価値を維持しているのですか?

ボーチャーズ:私たちの製品はより長く価値を保てています。

理由はいくつかあります。

ひとつは、製品を非常に耐久性の高いものとして設計していることです。18 ProやPro Max、Duoをご覧いただければわかるように、製造の品質、デザイン、素材のレベルは最高水準にあり、これが価値を長く保つことに貢献しています。

もうひとつは、ソフトウェアの面でも、業界の他のどの企業も行なっていないレベルでサポートしていることです。

これを非常に誇りに思っています。だからこそ、iPhoneもMacもiPadもApple Watchも、何年も何年も使い続けることができるのです。そしてその後、誰かに譲ったり売ったりすることもできます。

これらの要素が合わさって、私たちの製品が長期にわたって価値を維持することを可能にしており、市場もそれを認めています。

――製品が長く価値を持つとおっしゃいましたが、その考え方は折りたたみスマホ市場にも当てはまるでしょうか?

折りたたみタイプのスマホには、ある種の悪評があります。例えばフィルムが傷つきやすい、技術がすぐに陳腐化する、などです。多くの端末で、価格が大幅に下がるということも起きています。

ユーザーの視点で見て、Duoの高い価値を長期間保てると確信していますか?

ボーチャーズ:まずお伝えできるのは、Duoを極めて耐久性の高いものとして設計した、ということです。

例えばヒンジの組み立て——これは重要な部分ですが——初日から、そしてその先もずっと滑らかに動作することを確実にするため、大変な労力をかけて取り組み、その技術を大幅に進化させています。私たちが作ったスクリーンや、縁の周りにチタンを使ったことも、機械的な耐久性を高めています。

ディスプレイそのものについては、2層の極薄ガラスとその下のチタンプレートを含む、非常に堅牢なシステムを設計しました。そしてマットな表面には、追加の素材が使われています。

以上を踏まえ、10月にiPhone Duoを市場に投入できることを楽しみにしています。今後の展開は見ていただくとして、今日お伝えできるのは、耐久性を最優先して設計・製造している、ということです。

「iPhoneはかつてないほどのラインナップを備えている」

――今回の新製品の中では、他社が一度導入したけれど、最新の製品では使わなくなった技術というのがいくつかあります。可変絞りについてもそうですし、アンダーディスプレイカメラについてもそうだと思います。他社のハイエンド製品では、導入したけれどもやめてしまった技術が多い。

でも、今回アップルは導入してきた。他社と違うタイムラインで技術を導入するというポリシーについて、どのような考えを持っているか、教えてください。

アンダーディスプレイカメラを採用。普段はカメラの穴が見えないが、カメラを使うときだけは「穴」になる

ボーチャーズ:私たちは常に、「自分たちが望む形でお届けできる準備が整った」と感じたときに、技術を製品に導入するようにしています。

挙げていただいた2つの例は、今日のアップルならではの強みを活かして、他の誰にもできない形で技術を活用・提供できる、素晴らしい例です。

アンダーディスプレイカメラは、A20 Proとイメージングパイプラインの能力をフルに活かして、(顔を常に中央に捉え続ける)センターステージのような、FaceTime通話に不可欠な高度な機能も実現しています。

可変絞りについては、ブレード(羽根)の精密加工と、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって、一般のユーザーなら自動的にその恩恵を受けられるようになっています。さらにプロであれば、どう使うか、どこで使うかについて完全な柔軟性があります。

これは、ハードウェア、ソフトウェア、シリコンをすべて自分たちで統合しているからこそ可能なことなのです。

――今年の新製品の投入についてです。

Proモデルが発表され、標準モデルは発表されませんでした。この発表が標準モデルのユーザーに与える影響をどうお考えですか? 標準モデルを待つのでしょうか。それともProモデル以上を購入し始める人が増えるのでしょうか。あるいはアップル製品から他社へ離れていく人が出るでしょうか? Proモデル以上だけを発表した特別な理由はありますか? 今年だけのことでしょうか。それとも今後もこのような発表が続くと考えるべきでしょうか。

ボーチャーズ:私たちは18 ProとPro Max、そしてDuoにとてもワクワクしています。そして、製品は準備ができたときに投入するのです。それらをお届けできることを楽しみにしています。

とはいえ、同時に、史上最良とも言えるiPhoneのラインナップも持っています。iPhone 17e、iPhone 17、iPhone Air——これらは今日でも最新鋭の製品です。つまり、店頭に来られるお客様は、かつてないほど多くの選択肢を持っているのです。そしてiPhoneを買うのに良い時期でないことはありません。

ラインナップの中から選び、自分にとって正しい価値、正しい機能と能力が何かを見極めればよいのです。

私たちが注力し続けるのは、提供する選択肢を可能な限り最高のものにすることです。今日なら18 Pro/Pro MaxとiPhone 17全製品、そして10月にはiPhone Duoが加わります。

おそらく史上最高のラインナップだと考えています。

――折りたたみ型は生産が大変です。十分な供給は可能でしょうか。……要は、私がちゃんと手に入れられるか心配なんですけど。

ボーチャーズ:(笑)

私たちは常に、お客様が望む製品を確実に入手できるようにすることに注力しており、懸命に取り組んでいます。これからも努力を続けます。お客様にiPhone Duoでも、iPhone 18 ProやPro Maxでも、選ばれたものをお届けできるように。

欲しいと思ってくださって、とても嬉しいです。お届けできるよう頑張ります。

「継続的ヘルスケア指標」のためにApple Watchを一新

――次は、Apple Watchのことを伺います。

今回のApple Watchでは、ヘルスケアについて継続的に計測することで理解を高める機能が搭載されています。アップルが継続的な計測というところに着目した理由を教えてください。そのためのハードウェア構成のハードルが非常に高くなったと思うのですが……

Apple Watch Ultra 4
Apple Watch Series 12のセラミックモデル

ボーチャーズ:ええ。Apple Watch Series 12とUltra 4では、背面に搭載したセンサーのセットで構成される、全く新しいヘルスセンシングシステムを導入しました。

その理由は、Apple Watchのヘルス体験に組み込みたい健康シグナル——特に高頻度の心拍数測定——があったからです。これにより、今ようやくお届けできる多くの優れた機能が実現しました。「準備度(Readiness)」や、日中・夜間両方での「心拍変動(HRV)」のような機能をお届けしたかったからこそ、システムを再設計するプロセスが必要になったのです。

ただ、ご想像の通り、私たちは有効性と精度を検証できるときにのみ機能を展開します。

今年とても誇りに思っていることのひとつは、ウェアラブルで最も正確な心拍数センシングを実現した、と自信を持って言えることです。非常に堅牢な一連の製品と大規模なサンプルでテストを行ない、結果を公開しました。臨床的検証と科学的検証の両方を行なうことが、この領域への正しいアプローチだと考えています。この新しいヘルスセンシングシステムによって、お客様がアップルに期待する品質水準でお届けできる機能が実現しました。

「継続的計測」を軸に大幅に進化したApple Watch

Apple Watchについてはいくつか説明が必要だと思う。

今回、センサーなどを大きく変更し、頻度の高い計測が実現された。その結果として、プロセッサーへの負担は増えている。

そこでApple Watchでは、新しいプロセッサーを採用し、継続的に計測しても消費電力を低いまま維持できる、という方向性へと進化した。急速充電を強化したのも、より「つけ続けてもらう」ためだろう。前モデルと同じデザインのように見えて、背面は大きく変わっているし、画面のリムも少し大きくなった。こうした部分はある種のトレードオフだ。

一方で、今後の追加機能として準備されているのが、「Live Rewind」と「Siri Recap」だ。アメリカでは年内にベータ版として提供され、日本での提供はそのあとになる。

Live Rewindでは、Apple WatchのDigital Crownを2回押し(ダブルプレス)すると、直近15秒分の会話を「テキストでApple Watchの上に表示」してくれる。また、そこからSiri AIに対して質問したり、記録をお願いしたりもできる。

Siri Recapでは、周囲の会話のログから自動的に、ミーティングの概要やその日に起こったことをまとめてくれる。

これは明確に「AIを使った個人デバイスへどうアプローチするか」についての、アップルからの回答だ。その是非については、先週の本連載で詳しく考察しているので、そちらもご覧いただきたい。

「AIの耳」「新しいメモ書き」を目指すAudio Intelligence

――新しいApple Watchで可能なことについてもう一つ伺いたいと思います。

Audio Intelligenceでは、音声を聞き取って様々なことができるようになっています。特に「Siri Recap」のような機能というものの位置づけをどう考えているか、教えてください。

AIに音声を聞いてもらうというのは非常に難しいところがあって、録音をするとプライバシーの侵害だと言われます。でも、AIの耳としてマイクを使う場合には、人に対してプラスの価値を持つと考えています。

Apple Watchがやろうとしていることは「AIに耳を持たせる」という方向性だと思うのですが、プライバシーとAIの価値の利用という部分のバランスについて、今答えられることがあれば教えてください。

ボーチャーズ:Audio Intelligenceには、お客様に届けられる新しい価値が存在すると考えています。

もちろん、今日似たようなことを実現しようとしている製品やアプリケーションが数多く存在します。その中で私たちは、利便性とプライバシーの両方を前進させる形でこれを届けたいと考えており、どちらでも妥協することはできません。

利便性の観点では、Apple Watchは常に身につけていて、いつでも使えるものですから、この取り組みに最適な存在です。だからこそApple Watchから始めたのです。

新しいApple Watchのチップには、2つの非常に重要な要素を組み込んでいます。

ひとつは常時オンプロセッサー(AOP)です。AOPの中にはもう1つの要素である「Secure Enclave」があります。これはチップの一部で、音声信号を受け取って処理できますが、オペレーティングシステムからも、どのアプリケーションからも、一切アクセスできません。Secure EnclaveにはiPhone側にも対となるものがあり、Apple WatchがiPhoneの処理能力と接続性を活かすための経路となっています。

Apple Watchのマイクが信号を捉えると、処理されてからiPhoneに送られます。しかし録音は一切行なわれません。録音を保存することは決してなく、誰も音声ファイルを取り出すことはできず、話者を特定することも決してありません。

Siri Recapを例に挙げると、私たちの目標は、一日の中で交わした会話について、いわば高レベルの「メモ」を届けることです。要は、紙にメモを書き留めるのと同じです。逐語の書き起こしではありません。

音声の録音は作られませんが、そのときの出来事について重要なことを思い出せるだけの詳細のセットです。実際に見れば「ああ、そうだった」と思い出せる。そんな例を、Siri Recapでお見せできます。

鍵となるのは、すべてをユーザーの管理下に置くことを絶対に確実にする、ということです。

これらの機能はすべてオプトインのみで、有効にしたいものだけをオンにし、いつでもオフにできます。そして録音は一切行なわれないことを明確にしています。

ですから、プライバシーの観点からも、規制・法務の観点からも、私たちが取っているのは他社と大きく異なるアプローチです。

まさにあなたの質問の通り、プライバシーという基本的人権に対する私たちのコミットメントを犠牲にすることなく、「AIによるメモ取り」の有用性と価値をお届けできると信じています。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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