いつモノコト

悔しいけど、マイナンバーカード作ったら色々便利だった

後出しジャンケンに幻滅

「公平・公正な社会の実現」「国民の利便性の向上」「行政の効率化」を旗印に掲げ、2015年10月から本格運用がスタートした「マイナンバー」。もう間もなくすると制度開始から4周年となりますが「国民生活に必要不可欠か?」と言われるとそうでもなく。

こと「マイナンバーカード」となると、さらにその存在感は低いでしょう。狭義の「マイナンバー」とは、日本に住民票を有していれば、必ず付番される12桁の数字です。本人が意識しようがしまいが、絶対的に持ち合わせています。ただ、確定申告などの関係で、書類にマイナンバーを記載したり、あるいは勤務する会社に届け出たことがあるものの、基本的にはそれっきり……という方も多いかと思います。

こちらが筆者のマイナンバーカード。制度そのものには色々注文をつけたいのですが、やむなく作成してしまいました。詳しくは後述

対して、「マイナンバーカード」は、このマイナンバーに加え、顔写真・氏名・住所・生年月日・性別が記載されたプラスチック製カードです。運転免許証のような身分証明書として使えますが、そもそも取得するかは個人の任意。総務省によると、2019年3月時点のマイナンバーカード普及率(人口に対する交付率)は13.08%だそうです。

筆者の場合、マイナンバー制度がスタートする前は色々と期待もしていたのですが、いざ運用が始まってみると幻滅することだらけ。マイナンバーの立ち上げと同時に、それまで電子確定申告に使っていた住基カードが入れ替わるように廃止。銀行口座の開設時にマイナンバーの記入が求められるなど、後出しジャンケン的に拡大していく施策の数々を見て「あ、結局は徴税強化なのね」と感じ入り、当初の興味も失せてしまいました。

だけど、マイナンバーカードないと色々不便なんですよね……

とはいえ、こうも年月を経ていくと、マイナンバーカードがないと不便、あったら便利なシーンが増えてきております。結局、筆者もこの春に作成しました。なんかもう政府の思惑通りに物事が進んでて悔しい! 思わずハンカチの端を噛むほど悔しい!

ただ、それだけで終わらせるのもなんなので、具体的にその便利ポイントをご紹介したいと思います。

便利1 コンビニで住民票や印鑑証明書が入手できる

住居の賃貸契約、車の購入・売却など、大きな買い物の際に何かと必要になってくるのが住民票・印鑑証明書の類です。これらを入手するための最もオーソドックスな手法は、自分が住民登録している自治体の窓口に足を運び、数百円の手数料を支払う方法です。しかし、役所が遠かったり、平日日中の開庁時に訪れることができないとか、色々面倒がつきまといます。

ですがマイナンバーカードがあると、これら書類をコンビニ・スーパーなどで即時取得できます。地元自治体から最初に郵送されてきた紙の「マイナンバー(通知カード)」ではダメ。あくまで、プラスチック製のマイナンバーカードを発行しておかねばなりません。

こちらは、とあるセブン-イレブンのマルチコピー機。写真中央の「電子マネー 携帯電話」と書かれた部分が、マイナンバーカード読み取り装置になっています

具体的な発行方法ですが、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンなど大手のコンビニの場合、店内に設置されているマルチコピー機を使います。マルチコピー機をよくよく見ますと、マイナンバーカードなどを読み取るためのリーダーが付いています。操作画面から「行政サービス」などを選択すれば、あとは指示に従ってマイナンバーカードの読み取りなどを行なえば、書類が“その場”で出力されます。取り寄せとか後日配送ではありません。

発行される書類は、基本的にA4のコピー紙。透かしはありませんが、コピー防止処理が施されています。「コンビニで出力した住民票だからダメ」と拒否される心配は、恐らくないでしょう。筆者は車の売買に際して、コンビニ出力した住民票・印鑑証明書を持参しましたが、何のトラブルもなく通用しました。

また隠れたメリットとして、発行手数料が役所窓口に比べて安く設定されているケースがあります。例えば横浜市の場合、役所の窓口で住民票(の写し)を発行する際の手数料は300円ですが、コンビニで交付すると250円になります。大阪市のように、ほぼ一律に100円引きとなったり、その実施状況は自治体によっても異なりますが、意外と見逃せない部分です。

大阪市の公式サイト。「コンビニ交付」では、窓口交付より手数料が100円安い事がアピールされている

この「コンビニ交付」の受付時間は、原則6時30分~23時00分で、土日祝を問いません。取得できるのは「住民票の写し」「印鑑登録証明書」「住民票記載事項証明書」「各種税証明書」「戸籍証明書」「戸籍の附票の写し」の6つですが、自治体によって多少異なります。また書類の種別によっては、平日日中だけしか発行できないなどの制限があるため、詳しくは公式サイトなどで確認してください。

便利2 オンライン本人認証時にアップロード書類が少なくて済む

これまで資産運用には全く興味がなかった筆者。ただ仕事絡みでフィンテックの話を取り上げたり、近年その手軽さをウリにした投資信託なども増えています。そこで一念発起して「LINEスマート投資」に申し込んでみました。

手続きはスマホ1台あればほぼ完結するのですが、面倒なのが本人認証です。口座開設にあたっては、免許証を撮影してアップロードしたり、マイナンバーの申告をしなければなりません。

この際、顔写真入りのマイナンバーカード(プラスチック製)が手元にあれば、その1枚の表・裏だけを撮影し、画像をアップロードすればOK。しかし紙製の通知カードしかない場合は、それに加えて免許証かパスポートが求められます。もし免許証・パスポートを持っていない場合は、保険証・住民票・年金手帳の中からさらに2つを送信せねばならず、なにかと煩雑なのです。

「LINEスマート投資」とも関連が深いオンライン証券サービス「FOLIO」で個人口座を開設しようとしているところ。マイナンバーカードがあると、アップロードすべき本人確認用画像が減る

こうした本人確認手続きは、LINEスマート投資だけに限らず、その他の金融サービスでも当然求められるかと思います。今後登場してくるであろう新興サービス───それこそ最近流行の信用スコアリングサービスあたりを利用する際、マイナンバーカードがあったほうがよりスムーズだった…というシチュエーションはあり得るでしょう。

便利3 結局のところ、電子確定申告にも必要

マイナンバーカードは、毎年1回の税金確定申告をオンラインで行なう際にも必要になってきます。平成31年(2019年)1月以降は新制度が始まり、税務署に足を運んでID・パスワードを発行してもらえば、マイナンバーカードなしでオンライン申告が一応できるようになりました。

ただ、この処置はあくまでマイナンバーカードが普及するまでの暫定的なものとされ、長期的にはどうなるか不明です。

国税電子申告システム「e-Tax」のWebサイト。ID・パスワードでも利用できるが、本来はマイナンバーカードを用いる方式がメイン扱い

税金の電子申告は、マイナンバーカードに加え、対応するICカードリーダーを用意しなければならないため、導入ハードルは正直言って高いです。しかし、一度体験するととにかく便利なのもまた、否定しがたい事実。混雑する確定申告期間に税務署を訪問する必要が無く、書類を郵送するための切手代も節約できます。「書類の電子送付が確かに完了した」という確認がすぐさまできるメリットもあります。

かくいう筆者ですが、今年2019年2~3月の確定申告も本当は電子申告したかったのですが、それまで使っていた住基カードが期限切れしていることに気付かず、かといって申告期限ギリギリ過ぎて税務署へ足を運ぶ時間もなし。結局、PCで作成した書類を郵送するという体たらく。いやぁ封筒に宛名を手書きしたりとか、色々面倒でした…。

結論~必要な人だけ作ればいいのでは?

筆者の場合、これら3つの便利ポイントをもろに享受できるため、マイナンバーカードを作った甲斐は確かにありました。特に1つ目のコンビニ交付は、万人にとって重宝するサービスですので、これだけをもってマイナンバーカード作成を検討してもよいかと。交付手数料が1枚あたり50~100円程度節約できる可能性も高いです。

マイナンバーカード交付時に付いてくる透明カバーをかけた状態。性別・臓器の提供意思・個人番号(裏面側)が読み取れないよう、目隠しする効果がある

対して3つめの確定申告用途ですが、前述の通り、ID・パスワードを税務署で取得すれば、電子申告自体はマイナンバーカードがなくても可能です。またサラリーマンの方でそもそも確定申告する必要がないケースですと、取得意義はさらに薄れるかもしれません。

本稿の結論としては、今回例示した便利ポイントを天秤にかけていただき、皆さんそれぞれが必要性を考え、妥当だと思ったらそれはそれで作成すれば良いと思います。マイナンバーカードの作成自体は無料ですし、申請手続きはほぼWebからの入力だけ。カードに印刷する本人写真も、スマホで自撮りしてアップロードするだけです。

難点は、申請から発行まで約1カ月かかること、マイナンバーカード受取には市役所・町村役場へ足を運ばねばならないといったあたり。まず、申請しておいて、都合が良い時に役所へ行くというのも1つの考え方でしょう。

さて新聞報道などをななめ読みする限り、政府はまだマイナンバーカードの普及を諦めてはいないようです。2021年3月からはマイナンバーカードが保険証代わりになる制度がスタートするといいますし、2019年7月の現段階でも、一部自治体によるが独自ポイント制度などが運用されています。

疑問も色々あるのですが、マイナンバー制度が作られたからには、上手く使っていただきたい! 今後の動向にも注目してまいりましょう。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。