レビュー

やっぱり推せる「Pixel 9a」 AI機能と最新Googleサービスはこのスマホ

Pixel 9a(Obsidian)。この他にIris、Peony、Porcelainを加えた全4色バリエーションで展開されます

長く安心して使えて、しかもおトクなAndroidスマートフォンが欲しい──。そんな方に大注目の1台が、今年もまたやってきました。Googleが4月16日に発売するPixel 9aです。

これまでのシリーズ機種と比較して価格は若干アップしましたが、最先端AI機能を積極的に取り込む路線はしっかり堅持されました。具体的にどんな部分がスゴくなったのか? 従来機種と比較しながら、チェックしてみました。

バッテリー容量はシリーズ通じて最大級

Pixel 9aは、Googleが展開するPixelスマートフォンシリーズの中では最も販売価格が安い、コストパフォーマンス重視モデルと言えます。価格帯的にはちょうど中間的なPixel 9(128GB)が128,900円(Google ストア販売価格)であるのに対し、Pixel 9a(128GB)は79,900円と、実に50,000円近い価格差があります。具体的にどこが違うのか? まずは比較用のスペック一覧をご覧ください。

モデルPixel 9Pixel 9 ProPixel 9aPixel 8aPixel 6a
発売時期24年8月24年9月25年4月24年5月22年7月
価格(製品発表時点)128900円
159900円
79900円
72600円53900円
画面サイズ6.36.36.36.16.1
画面画素数1080×
2424
1280×
2856
1080×
2424
1080×
2400
1080×
2400
画面リフレッシュレート(最大)120MHz120MHz120MHz120MHz60MHz
重量198g199g185.9g188g178g
バッテリー容量(mAh)47004700510044924410
ワイヤレス充電×
メモリー(GB)1216886
ストレージ(GB)128/256128/256/
512
128/256128128
プロセッサーTensor G4Tensor G4Tensor G4Tensor G3Tensor
メイン(背面)カメラ150メガピクセル Octa PD広角カメラ50メガピクセル Octa PD 広角カメラ48メガピクセル Quad PD デュアルピクセル広角カメラ64 メガピクセル Quad PD 広角カメラ"12.2 メガピクセル デュアル ピクセル広角カメラ"
メイン(背面)カメラ248メガピクセル Quad PD ウルトラワイド カメラ48メガピクセル Quad PD ウルトラワイド カメラ13メガピクセル ウルトラワイド カメラ13メガピクセル ウルトラワイド カメラ12メガピクセル ウルトラワイド カメラ
メイン(背面)カメラ3-光学ズーム5倍 48メガピクセル Quad PD 望遠カメラ---
前面カメラ10.5メガピクセル Dual PD42メガピクセル Dual PD13メガピクセル13メガピクセル8メガピクセル
Wi-FiWi-Fi 7Wi-Fi 7Wi-Fi 6EWi-Fi 6EWi-Fi 6
Bluetooth5.35.35.35.35.2
マイク数33222

スマートフォンの性能を左右するプロセッサーについては、Pixel 9/Pixel 9aいずれも、最新世代のTensor G4を搭載しています。廉価モデルでも、より良いプロセッサーパワーを享受できる。これがPixelで“a”が付くモデルとして最大のアピールポイントです。

スペックを見てみると、Pixel 9aのほうが高性能な部分すらあります。特に目を惹くのがバッテリー容量で、Pixel 9aが5,100mAhであるのに対し、Pixel 9は4,700mAhとなっています。ちなみに、Pixel 9aの直接的な前身モデルにあたるPixel 8aは4,492mAhです。もともとaシリーズはバッテリー容量が重視される傾向にはありましたが、それに拍車がかかっています。

画面サイズは6.3型。これはPixel 9と同じで、Pixel 8aの6.1型に比べてやや大型化しました。また重量は185.9gで、Pixel 9の198g、Pixel 8aの188gと比べれば、若干ながら軽量です。バッテリー容量、画面サイズ、そして本体重量の“バランス”なら、Pixel 9aは負けていません。

正面
背面
縦持ち時の右側面に、電源や音量関連のボタンが集約されています
左側面にボタン類はなし
上面
下面にはUSB Type-C端子、スピーカー穴、SIMカードトレイ

明確なスペックダウンが感じられる部分は、メモリ容量です。Pixel 9では12GBに対し、Pixel 9aは前身モデルと同じく8GBを踏襲しています。ただ実機を試用する限り、ウェブや撮影画像の閲覧、カメラ撮影などにマイナスの影響があるとは感じませんでした。少なくとも「使いやすい、フツーのスマホ」を求めている方なら気にならないでしょう。

また、Wi-Fiの対応規格もPixel 9がWi-Fi 7であるのに対し、Pixel 9aはWi-Fi 6Eに留まります。ここ数年でWi-Fi 7は普及の兆しをみせていますが、とはいえ街中の公衆Wi-Fiスポットなどの対応はまだまだ。未対応が(今のところは)弱みにはならないでしょう。

カメラ周りのデザインが大幅変更 ホールド感はよりPixel 9に近く

ここからは、実機の外観・デザインについて、筆者私物のPixel 9 Pro、Pixel 6aとの比較画像と共にみていきます。

まず一見して変わったのは、背面のカメラ部です。2021年発売のPixel 6世代以降、ほぼ一貫して「カメラバー」と呼ばれる横長の突起デザインが採用されてきました。そして純正のスマホケースを装着すると、突起部の凹凸が幾分か目立たなくなるのが特徴でした。

これがPixel 9aでは、広角・超広角の2つのレンズを、楕円状の小さなカバーが覆うというオーソドックスなデザインになりました。

背面部の比較。左からPixel 9 Pro、Pixel 9a、Pixel 6aです。カメラバーと一口に言ってもデザインは微妙に変えられてきましたが、9aの印象は全く異なります

加えて、突起の量(高さ)も実測で1mmあるかないかという極最小限のレベルになっています。ケースを付けずに机に置いて、画面タッチ操作してもほぼガタツキはありません。スマホを手持ちせず、机の上に置いて電卓的に操作する機会が多い筆者としては、このデザインは好感触でした(カメラ突起が左右どちらかにオフセットしているスマホだと、この操作がなんとも……)。

その裏返しと言うべきか、Pixelならではの個性は減じました。カメラバーはそこまで奇抜なデザインでもないため、継続しても良かったとは思いますが、なかなか判断が分かれるかもしれません。

Pixel 9aのカメラ部をクローズアップ。凹凸はほとんどありません
純正ケースを装着すると、カメラ部はむしろ凹んでいるようなデザインになります

Pixelシリーズを比較検討する上では、ベゼル(額縁)の太さには注意しましょう。基本的には無印・Pro系が細く、a系が太めになるのがこれまでの倣いで、Pixel 9aもその路線に準じます。

そしてPixel 6aと比べると、画面四角の丸まり具合が大きく変わります。直角的なPixel 6aに対し、Pixel 9aの丸みはかなり強く、柔らかな感じです。この傾向はPixel 8世代から強まってきていて、最初のうちは正直なところ「画面が狭くなったのでは?」と感じるほどでした。ただ、長くPixelを使っている身からすれば、単純に慣れの問題と言い切れます。

正面部の比較(左からPixel 9 Pro、Pixel 9a、Pixel 6a)。ベゼル(額縁)や四角の丸まりが、意外なほど違います
これはPixel 9 Pro(左)とPixel 9aの比較。ベゼルの細いPixel 9 Proのほうに、やはり高級感を感じます
Pixel 9a(左)とPixel 6aでは四角の丸まり具合がかなり違うものの、ベゼルの太さは共通性あり

地味ながら大きな変化としては、側面部の仕上げに注目です。PixelシリーズではPixel 8やPixel 8 Proの世代まで、やや丸みがかった、手に持った時のアタリがかなり柔らかめな仕上げでした。

これがPixel 9世代では、フラットかつ鋭角的なデザインへと大きく変わりました。文字で説明するのがなかなか難しいですが、実際手に取って見ると差は明らか。筆者も最初のうちは慣れませんでしたが、今ではPixel 9 Proや9aの仕上げのほうが圧倒的に好みです。グッと握りこんだ時、滑り落としにくい効果もあると思います。なお、推奨できる行為ではありませんが、側面をテーブル面につければ、支えなしに自立します。

Pixel 9a(下)とPixel 6aの側面部を比較。丸まり度の差は写真で見ると小さいですが、実際手にするとかなり違います
こんな具合で、一応は自立します

マクロ撮影に新対応 画面の明るさアップで屋外撮影しやすく

メインカメラ(背面カメラ)の違いはどうでしょうか。

画素数的には4,800万画素で、Pixel 9の5,000万画素とそれほど変わりませんが、実はセンサーの大きさが違います。Pixel 9aが1/3.1インチに対しPixel 9は1/2.55インチとやや大きめ。センサーサイズが大きい方が(基本的には)綺麗な写真が撮れるので、ここも価格差の一因だと言えます。

下記の画像は、曇天の芝桜を静止画撮影したものになります。1枚目のPixel 9aに対し、2枚目のPixel 9 Proのほうが若干、色味などが自然な印象でしょうか。ただPixel 9aは画面奥の薮の影も、きっちり表現できています。また3枚目のPixel 6a撮影分の比較では、Pixel 9aのほうがピンクの芝桜の色ムラ感を上手く表現できているように感じます。

Pixel 9aでの撮影
Pixel 9 Proでの撮影(3機種中ではカメラ的に最も高性能なモデル)
Pixel 6aでの撮影

Pixel 9aではマクロ(接写)撮影機能も追加されました。かつてPixel 7 Proで初搭載され、Pixel 8世代で無印版にも対応機種が拡大してきました。そしてついに、a系のモデルではPixel 9aにおいてはじめて、採用されました。

ただし使い勝手は他機種と異なり、基本的には被写体に接近すると自動で有効化されるだけ。手動で有効・無効を切り替えることは現状ではできないようです。画面インターフェイスも若干異なります(設定変更オプションがない)。

草花の接写などでマクロ撮影は役立ちます
Pixel 9aでマクロ撮影すると、画面端(本画像では左上)に状態を示すアイコンが表示
対してPixel 9 Proでは、画面中央にマクロ撮影アイコン(黄色)が表示されます

ところで、今回の試用にあたって写真を撮りまくったのですが、ふと気付いたことがありました。晴天の明るい屋外でも画面がとても見やすく、撮影がラクだったのです。

Pixel 9aのディスプレイ最大輝度は1,800ニト(ピーク輝度2,700ニト)で、これはPixel 9と同等。Pixel 8aの1,400ニト(ピーク輝度2,000ニト)と比べてもアップしています。この変更が、相当影響しているのでしょう。

直接の比較を行なったPixel 6aはスペックとしての輝度が明言されていません。が、視認する限りPixel 8aを下回るはず。画面の最大輝度は電気店の屋内などではなかなか実感しづらい要素ですが、今後は比較検討のポイントとして、重視したいと心に誓う次第です。

画面の輝度が従来機種と比較してアップしたことで、明るい屋外などでの画面視認性が向上しています

意外と区別が難しい? Pixel 9世代だけで使えるAI機能

AI機能は、Googleが全方位的に推進している分野です。その成果というべきか提供範囲は意外なほど広く、例えばCMなどでお馴染みの「かこって検索」などの機能は最新Pixelだけの限定機能ではありません。Pixel 6aのような古めの機種、Google製ではないスマートフォンでも利用できます。「消しゴムマジック」も、Google フォトから原則誰でも利用できます(回数制限はあり)。

「かこって検索」はPixelでなくとも利用可能
今ではPixel以外でも利用しやすくなった「消しゴムマジック」

現状ですと、Tensor G4搭載のPixel(つまり9や9a)でしか利用できない機能としては、「Pixel Studio」アプリがあります。これは画像生成に特化したアプリで、モチーフやトーンを言葉で指定していくと、簡単にイラストが書けます。電源ボタンを長押しで起動するGeminiアプリでもイラストは描けますが、Pixel Studioだとイラストを一旦保存しておき、また再度調整して使うといった操作が簡単です。

現状ではPixel 9や9aでのみ使える「Pixel Studio」。生成AIを使ったイラストツールです
プロンプトを試行錯誤しながら、イラストを調整していけます。子供は大喜びしそうな機能です

筆者が確認した範囲ですと、Pixel 8 ProやPixel 6aではPixel Studioがそもそもインストールできません。ただ過去には、一部機種でしか利用できなかった消しゴムマジックが、後にPixel以外のスマートフォンにも広く機能開放されたような例はあります。

こんな感じで、Pixel StudioはPixel 8 Proにすらインストールできません(少なくとも現状では)

この他、Pixel 9/9 Proリリースと同時に提供開始された「一緒に写る」も、Pixel 9aでは利用できます(ちなみにベストテイクは、Pixel 8/8 Proリリース時に発表された機能です)。

写真編集における「オートフレーム」も、現状ではPixel 9世代だけの機能となっています。

Gemini Liveのカメラ連携に驚愕

AIとリアルタイムで会話できる「Gemini Live」は、Pixel 9世代とそれ以外で若干の機能差があります。まず、会話だけなら古い機種でもOK。しかし、今まさにカメラで映している物体や、アップロードした画像に対して話をする機能は、Pixel 9世代限定となっています。

Pixel 8 Proで「Gemini Live」を起動したところ。多くのスマホで、この画面が表示されます
これに対してPixel 9aでは、カメラ撮影と画像アップロードを示すアイコンが追加されています

このカメラ連携機能が、個人的には驚愕レベルでした。何の気なしに、手近にあったマウスを映しながら「これについて教えて」と発声すると、Microsoft Bluetooth Mobile Mouse 3600と、具体的な品番まで回答したのです。もちろん、正解でした。

Gemini Liveからカメラを起動。「これについて教えて」と尋ねてみます
マウスの品番までしっかり当てました

そして今度はゲーム機のコントローラーで試すと、「Xbox のワイヤレスコントローラーですね」と回答。そこで「もう少し詳しい品番を教えて?」と尋ねると、Xbox Series X/Sのワイヤレスコントローラーと正しく答えるではないですか。見た目が紛らわしい別のコントローラーとの見分けが付いている、ということなのでしょう。これには心底震えました。

もちろん、これはGemini Liveだけの功績ではなく、画像検索の充実が先にあっての話だとは頭で分かっています。得意分野・苦手分野もあるでしょう。しかし生成AIとの自然な対話の中でこれを見せつけられると、もう言葉が出ません。友だち・知り合いの端末を借りてでも、是非一度お試しを。

ゲーム機のコントローラーもしっかり判別
この言い回し、見た目ソックリの別コントローラーと区別できているということか。恐ろしや……

OSアップデートほぼ最速の実績と信用 やっぱりPixelには一目置くべき

Pixel 9aは、2025年春の時点において、最も手にしやすいPixelスマートフォンです。立ち位置的には、より上位のPixel 9/9 Proに対する性能限定版ではありますが、仕様的に似通った部分は多く、特にチップセットは共通です。それでいて価格は約8万円も抑えられている。Pixelシリーズをこれから試したい方にとっては、最有力の選択肢です。

ただ、それでも価格は約8万円。市場を見回せば、もっと安いスマートフォンは幾らでもあります。

一方、2019年発売のPixel 4からシリーズ製品に触れている筆者としては、OS・ソフトウェアアップデートの迅速さもまた、強力に推したいポイントです。メインで使っているPixel 9 Proでは、月1回のペースでアップデートが実施されており、セキュリティ対応の意味でも安心感は強いです。

そして年に1度のOSメジャーアップデートは、発表から実際の配信までの期間が短く、Android市場全体を通じても事実上最速。新しい機能をいち早く試したい方にとって、捨てがたいアドバンテージです。この体制は、少なくともこれまでの6年間、途切れていません。この年月の積み重ねこそが、筆者のPixelに対する信用の源泉であり、推す理由です。

Pixel 9aでは、OSとセキュリティのアップデートを発売から7年間提供することが宣言されています。これを踏まえれば、価格と機能のバランスは高いと言えるでしょう。Pixelブランドに興味がなくても、1台のスマートフォンを大切に使いたい方なら、Pixel 9aには一目置くべきです。

そしてPixel 9aを手にしたら、AI機能を是非率先して使ってみてください。きっと、驚きの世界が広がっているはずですよ。

月に1回しっかりソフトウェアアップデートがかかり、年に1度のOSアップデートも迅速。AI機能はもちろんですが、こうしたソフトウェアサポートもPixel 9aをはじめとするシリーズ各機種の魅力です

カメラ作例

以下はPixel 9aでのカメラ作例です。一部で露出やズーム調整をしていますが、特段難しい設定はしていません。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。