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安全な自動運転に必要な「AI」と「走る経験」 ウェイモ東京上陸へ自信

自動運転ロボタクシーを展開する米Alphabet傘下の「Waymo(ウェイモ)」は19日、完全自動運転を実現するWaymoの技術紹介とともに日本展開について説明した。同社では、25年から日本交通とタクシーアプリの「GO」と協力し、東京で自動運転タクシーのテストを実施しているが、「検証が終わり、承認が得られ次第サービス開始したい」という。

Waymoは、完全自動運転システムを開発するとともに、自社のブランドでロボタクシー事業を展開。2,000万回を超える完全自動運転による乗車サービスを提供し、3.2億km(2億マイル)以上の実際の環境での乗車サービス提供実績を持つ。

米国のサンフランシスコ、ロサンゼルス、マイアミなど、人口密度の高い10都市以上で、週50万回以上の乗車サービスを提供。さらにロンドンや東京など世界20都市以上に拡大すべく準備を進めており、東京での実証実験もその一環となる。

複雑な世界を瞬時に判断するAIの重要性

WaymoのOnboard Software担当バイス・プレジデントであるシュリカンス・ティルマライ(Srikanth Thirumalai)氏は、3.2億kmという実績に裏打ちされた「安全性」について強調しながら、Waymoの根幹となるAIと自律運転テクノロジー「Waymo Driver」の重要性について説明した。

Waymoのシュリカンス・ティルマライ氏

自動運転車のAIの難しさについては、「複雑な物理環境」かつ「安全上重要な要件」で生死に直結すること、その上で「ミリ秒単位の判断」といった過酷な条件が求められる。状況も逐一変化し、前方のクルマから落下するバーベキューグリル、天気の急変、暗いトンネル、人混み、緊急車両などの例外的な処理を、「ミリ秒単位」で判断し、対応していく必要があるとする。

また、「E2E(エンド・ツー・エンド)型AI」による完全自動運転へのアプローチが注目を集めているが、Waymoではそれだけでは足りないという立場をとる。E2Eでは、車両のセンサーから得たデータをニューラルネットワークに直接入力すれば、コンピューターが最適な運転操作を出力することが期待される。

しかしティルマライ氏は、問題が発生した際に、AIが「なぜそのような判断をしたのか」の検証が難しい「ブラックボックス」になると指摘。また、本来活用できる重要なデータや地図などの構造化データなどの要素を活用したほうが、より安全性が高まるとの見解を示す。

センサー・マップなど包括的アプローチに強み

そのために、Waymo Driverにおいては、AIだけでないハードウェアを含む包括的なアプローチを採用。実際の走行に裏打ちされた経験を強みとする。

そのひとつは「センサー」。カメラだけで、自動運転の実現を目指すアプローチもあるが、WaymoではLiDAR(ライダー)、カメラ、レーダーを組み合わせている。

LiDARでは、周囲の3D構造を精緻に把握、カメラは信号や道路標識の意味、歩行者の方向などのセマンティクスの取得に活用。レーダーは雨、霧、夜間などの天候変化に対応。どれかひとつだけでなく、相互に補完するセンサーによる「マルチモーダル性能」が必要とする。

加えて重要なのが高精度なマップ。E2E型のアプローチでは周辺環境だけで自動運転は可能、とする考えもあるが、Waymoではマップを「もう1つのセンサー」と位置づけている。マップを「事前の記憶」として使うことで、視界が悪い状況や、複雑な交差点などでも、安全に運転判断を下し、処理速度の向上を図れるという。

ティルマライ氏は、「マップが無くても走れる」とし、実際に工事区間などで道路状況がマップと異なる場合は、車両はその場のセンサー認識を優先して走行している。しかし、地図情報を持つことで、リアルタイムの認識結果と比較検証するための「基準」ができ、より迅速な判断に繋げられるほか、新たな展開地域でもスピーディなサービス展開が行なえるとする。

AIモデルについては、「数を減らし、大きなモデルを使う」というアプローチを採用。最終的なパフォーマンスを上げやすく、基盤モデルの進歩を迅速に反映できるとする。クラウドの教師モデルに対し、車載処理のための小型モデル(Student)を訓練・最適化して搭載している。

安全のためのフィードバックループ

また、ティルマライ氏が強調するのはシミュレーションの重要性、公道テストでは、全てのシナリオをカバーできず、急ブレーキや急な車線変更などのエッジケース(稀な事例)などは試せない。Waymoでは、大規模な「クローズドループシミュレーション」を行ない、周囲の車両や歩行者エージェントなどの反応を含めて検証可能とし、実世界での動作に活かしている。こうした「フィードバックループ」を回していくことで、エッジケースを回避できるようにしていく。

またGoogle DeepMindのワールドモデル「Geine3」を活用し、実走車両がまだ遭遇したことのない状況や知識を含む、膨大な仮想シナリオを生成。Waymo Driverにあらかじめ学習されている。これにより、車両が新しい都市に展開される前から、想定されうる課題を先回りして対応できるという。

シミュレーションの評価のための「Critic」もWaymoのコアの技術となる。車両側には、メインのAIドライバーから独立した安全検証システムが稼働。AIドライバーによる走行を監視し、道路交通法や安全運転の習慣に照らし合わせて、不安全な挙動がないかを検証する。

さらにクラウドには、Waymoファウンデーションモデルの上にCriticが動作。シミュレーションや実世界走行を含め、「後部座席」から見守るように客観的に評価し、ルールへの準拠から乗り心地、乗客の快適さまで測定・採点している。これらにより、安全性を担保しながら、継続的な品質向上のためのフィードバックループを回している。

レベル4自動運転に必要なのは「走ること」

安全を重視した技術とその改善を促すフィードバックループ、そしてWaymoの大きな特徴として強調するのは、「走行距離」だ。

ティルマライ氏は、膨大なシミュレーションやテストドライバー同乗による運用を重ねても、Waymo Driverが単独で運行責任を担う場面では、これまでに遭遇していない状況に直面する可能性があると指摘。人間が監視するシステム(レベル2)をいくら段階的に進化させても、「レベル4の完全自動運転には辿りつかない」とし、レベル4自動運転の実現には、責任を自律システムが担う、専用設計のシステムと厳格なガバナンスフレームワークが不可欠で、「実際の完全自動運転走行の経験に代わるものはない」と強調。3.2億kmにおよぶ走行データの蓄積こそがWaymoの安全性の基盤であるとした。

Waymoが示すデータでは、人身事故への関与は94%少なく、「すでに人間に比べて15倍のパフォーマンス改善が見られている」と言及。この数字は今後も向上できるとの見方を示す。

ティルマライ氏は、「世界では年間140万人が交通事故で亡くなっており、その多くはヒューマンエラー」と語り、日本の道路においても年間30万人以上が負傷しているほか、深刻なドライバー不足や交通空白が全国的な社会課題になっていると言及。「世界で最も信頼されるドライバー」を目指すWaymoは、これら課題の解決に繋がると訴えた。

日本での対応については、日本交通、GOとの提携のもと、25年から東京都内で実証実験を開始。東京特有の狭い道路や歩行者の多さ、左側通行、日本の道路標識などの環境に対応するため、走行データを収集してファインチューニングを進めているという。

東京での検証が完了し、サービス開始に向けて国の承認などが得られ次第、商用サービスを開始したいとし、「願わくば近い将来であることを期待している」と言及。東京以外の日本の地域の計画はなく、東京に注力しているとした。

日本におけるWaymoの実証実験例